永井みゆきは少女から淑女へ。新曲「荒川峡から」で魅せるドラマチックな愛の終焉
1992年、16歳の時に“日本の少女がここにいます”のキャッチフレーズでデビューした永井みゆきが、今年歌手生活30周年を迎えた。可憐な少女から美しい大人の女性に。そして歌い手としても、円熟味を増してますます輝きを見せている。節目を記念した新曲「荒川峡から」では、傷つけ合う愛に疲れひとり深い峡谷を旅する女性の覚悟を、その豊かな表現力で歌い上げる。
新潟を舞台に切ない愛の終わりを描く意欲作
Q 永井さん、今年歌手生活30周年本当におめでとうございます!
永井 ありがとうございます! 振り返ってみれば本当に色々なことはあったんですけれど、30年て考えるとめちゃくちゃ早いなって感じがしています。
Q 今回の新曲「荒川峡から」はデビュー30周年記念曲ということですが、どのような作品ですか。
永井 愛する人との別れを決めた女性が、前に進むために二人で旅をした新潟県の荒川峡にひとり旅をするという歌です。
Q 詞を見ると、わりとケンカの多い二人で(笑)、泣く泣く別れるというよりは別れたくて心を決めるために旅に来たみたいな感じでしょうか。
永井 そうですね(笑)。今までこういう歌詞はあまりなかったんじゃないかな。傷つけあって、愛に疲れてしまい別れを決めて旅をするんです。でも、まだ完全に決心しきれていないというか、揺れているんですよね。この旅で心を固めて新たな一歩を踏み出そうとするんですけれど、歌っていてとても切ないです。
Q 昨年発売された前作「雨の越後路」に続き、新潟県が舞台ですね。
永井 はい。前作はたか先生の故郷の新潟を舞台に書いていただいたのですが、発売がちょうど緊急事態宣言の時でした。なかなかうかがえなかったのにもかかわらず新潟の皆さんにとても応援をしていただいたので、ぜひ30周年記念曲も同じ新潟を舞台にと先生にご相談したら、「よし、やってみよう」と。実は、連続で同じ場所が舞台の作品を歌わせていただくのは30年間で初めてなんです。
Q 荒川峡は、山形との県境から越後下関まで続く美しい渓谷で、紅葉の観光スポットとしても有名だそうですね。
永井 すごい景勝地で、紅葉とお花が綺麗なところです。たか先生は荒川峡に強い思い入れがあるようです。荒川に沿って米坂線という単線があるのですが、先生はその米坂線を題材にした作品をずっと書きたかったとおっしゃっていました。乗られた時の素敵な思い出がおありになるのか……。なので曲名も「米坂線」でくるのかなと思っていたら「荒川峡から」で(笑)。酒蔵もあって、私の大好きなお酒もとってもおいしいんだそうです!
Q この曲について、師匠であるたか先生から何かお言葉はありましたか?
永井 中学生の頃から先生にお世話になっているんですけれど、オケ録りの時の歌を聴かれた先生が「これじゃまだまだダメだから。今回は今までの永井みゆきの歌とは違ったものを見せてくれ。あぁ、いい女だなとそういう女性が浮かぶようにいい女の歌を聴かせてくれ!」というふうにおっしゃって(笑)。その思いにしっかり答えられるような歌を歌わなければいけないと思って、そこからボーカル入れまでの間にしっかり歌い込んで、私も気合を入れて一生懸命歌いました。とても緊張しましたね。
Q いい女ですか(笑)。歌い出しは「赤いコートの 女がひとり」。赤いコートを着ている女性というのは先生のこだわりがあるのでしょうか。
永井 はい。まず前作の「雨の越後路」も「紅いホタルの」と同じく「あかい」で始まるんですけれど、2曲でひっかけているのもあるんです。そして先生の中ではいい女というか、東京という都会に出てきて綺麗になった女性は、赤いコートを着ているというイメージなんだそうです。
Q 永井さん、赤いコートとてもお似合いになりそうです!
永井 ありがとうございます! 先生がレコーディングの時に赤いコートを買ってくださるとおっしゃっていたので、いい女になりますから、とびきりいいコートを買っていただきたいですね(笑)。
永井みゆきの新たな一歩をこの曲とともに
Q 心情的な部分で、歌う時に心がけられたことはありますか。
永井 「あなたもう探さないで」というフレーズが3回出てくるのですが、このフレーズをどう歌うかですね。先生から「自分の思う『探さないで』をしっかり見つけて歌っていきなさい」と言われました。 “本当に相手のことが嫌だからのもう探さないで”なのか、“やっぱり思いはあるけれども未練断ち切ってのもう探さないで”なのか……。私はこの旅で別れを決めるんだ、という思いで歌いました。
Q 結構強い女性ですよね(笑)。
永井 そうなんですよ。歌詞を見ていただくとわかるのですが、ちょっと相手と言い合っちゃうというか、言われっぱなしじゃないので……(笑)。だからそういう部分でも強い女性なのかなって思いますね。傷つけあった愛に疲れちゃった。
Q 永井さんご自身と重なるところはありますか?!
永井 う〜ん。でも本当にこの女性は強いですもんね。もちろん言い合いとか口ゲンカくらいはすると思いますけど、ここまで強くはないですかね(笑)。
Q イントロに入っている吹き荒ぶ風の音がとてもインパクトがありますね。峡谷の深さを感じさせるというか、心はもうこの谷の深さと同じように愛する人と離れてしまっているというような印象も感じました。
永井 そうですね。弦先生がとてもこだわって、風の音を今回入れたいとおっしゃって南郷先生とアレンジをしてくださいました。自然にメロディーが気持ちを乗せていってくれるというか、すぐ世界に入れます。カラオケで歌われる時は最初は語りのような感じで歌い出していただいて、メロディーの通りに歌えば自然に歌の流れはできると思います。アレンジもとてもドラマチックな感じなので気持ちよく歌っていただけるのではないでしょうか。
Q 30年を迎えて、また新たな一歩を踏み出す作品になりましたね。
永井 そうですね。弦先生もデビュー曲からお世話になっているんですが、この「荒川峡から」のボーカルが録り終わった時に、「(デビュー曲の)『大阪すずめ』から30年なんだなぁ。あの歌声から30年経ってこの歌声を聴いて、眩しいよ」と言ってくださって、本当にうれしかったですね。たか先生も弦先生も今までの永井みゆきとは違う世界を作りたいという思いで書いてくださったので、とても緊張していたんですけれど、そんなお言葉もいただいて、一生懸命歌ってよかったなって。これからこの曲を大事に歌っていきたいなと思っています。
Q 30年前、「日本の少女がここにいます」のキャッチフレーズでデビューされましたが、今は少女からとても素敵な女性になられました。
永井 そうですか?? いい女にならなきゃいけないですね(笑)。プライベートの方も頑張らないと……。たか先生も心配してくださっているので頑張ります(笑)!
Q 最後に、オトカゼの読者へメッセージをお願いします!
永井 まだ厳しい状況が続いておりますけども、一回でも多く新潟の地元の皆さんの前で前作の「雨の越後路」と新曲「荒川峡から」を歌えたらいいなと思っています。今できることをしっかりやっていって、どちらも私にとって代表作になるように頑張りたいと思います。応援していただけたらうれしいです。
最初の試練と言いますか、とても記憶に残っているのはデビューして10周年を迎え、レコード会社を移籍させていただいた時のことです。デビューした年に素晴らしい新人賞もいただき、とてもラッキーなデビューをさせていただきました。
それから毎年シングルも出させていただいていたんですけれど、10年目を迎えた時、次のレコード会社が決まらないと新しいシングルが出せない、このまま続けていくことができないかもしれないという状況に直面しました。
その時に、こうやってシングルを発売できること、スタッフの皆さんに支えていただいてこうやって歌わせていただけているんだなということを改めて感じました。
ずっと幸せな歌手人生を送らせていただいて、当時16歳という本当に子どもでデビューしたので、あまりよくわかっていなかったんですね。より歌えることの幸せを感じるようになり、そこから歌に対する思いも変わりました。それから20年。あの頃はこの先どうなるかわからないと思っていたのに、こうして今30周年を迎えることができて本当に感謝です。皆様、ありがとうございます。
そしてこれからも、新たな一歩を踏み出した永井みゆきをどうぞよろしくお願いいたします。
2021年6月16日発売
永井みゆき「荒川峡から」
カップリング曲「しあわせ岬」は、1977(昭和52)年に作詞は師匠であるたかたかし氏、作曲を青い三角定規の岩久茂氏が手がけ都はるみに提供し話題となった名曲。
先生は都さんの楽曲をたくさん書かれていますし、私が内弟子でいた時もおうちにも遊びに来られたりと、先生にも先生の奥様にも特別な存在の方。その都さんの曲を歌わせていただくということでとても緊張で、しっかり歌わなければいけないとドキドキしながら歌わせていただきました。
この曲は、リズムが8分の6というちょっと独特なメロディーで、自分では歌えているつもりでもしっかりリズムが体の中に入ってくるまではすごく時間がかかりました。普段演歌を歌っている感じとは全然違いすごく難しかったんですけれど、この曲を歌うことで勉強になることがたくさんありました。
また、今まで歌ったことのないような世界だったので、気持ちの持っていき方とかも難しかったですね。
レコーディングはスムーズでした。もちろん100点ではなかったとは思いますけれど、今の私の精いっぱいの歌を先生方に聴いていただけたのではないかなと思います。
たか先生は「30年、歌ってきたんだな」と、『しあわせ岬』を聴かれてふっとおっしゃって……。奥様も涙ぐんで聴いてくださっていたと、あとでお電話もいただいたりして、すごくうれしかったですね。本当に子どもの頃からずっとお世話になっているので、本当に先生と奥様は私の東京のお父さんとお母さんのような存在です。
永井みゆき(ながい・みゆき)
永井みゆきテイチクエンタテインメントサイト
永井みゆきInstagram