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新曲「ロマンティストでいいじゃない」リリースイベントで、田原俊彦が魅せた“ザッツ・エンタテインメント”

猛暑の東京で、61歳の現役アイドルが、華麗に舞い踊った!

6月25日(日)、田原俊彦の通算78枚目のシングル「ロマンティストでいいじゃない」の発売を記念した「TOSHIHIKO TAHARA ニューシングル リリースパーティ 2022」が豊洲PIT(江東区)で華やかに開催された。

1980年6月に「哀愁でいと」で歌手デビュー以来、高い山も深い谷も経験している田原だが、近年は何度目かの絶頂期を迎えている。20代の頃と変わらない……いや、それよりも完成度がアップした手抜きなしのステージをコツコツと続けていったことで、「トシちゃんは今も凄い」「昔よりキレキレでヤバい」といった口コミがどんどん広がり、以前のファンが続々と戻って来たのだ。加えて、Webを通じて田原の存在を知った新規ファンや、かつては会場に来られなかった男性ファンもライブ会場に集まるようになった。

その勢いが、2021年秋の東京国際フォーラムでの「還暦記念ライブ」の開催、2022年の1月の豪華写真集『DOCUMENTARY』(講談社)の発売などにつながった。毎年6月にシングルを出す度に開催されるリリースパーティの会場も5年前より大きくなっている。

バリエーション豊かなセットリストと軽妙なトーク

ステージ上に、光沢のある素材の赤紫色のスーツをまとった主役が登場すると観客の視線はそこに集中する。キラキラした照明が誰より似合う61歳は、ダンサブルにリズムを刻みながら新旧のアルバム曲、シングル曲を織り交ぜて歌い踊っていく。田原のライブでは、42年間のタイムラインを行ったり来たりするセットリストが組まれる。100人のファンがいれば、100通りの思い入れがあり、年齢にもバラツキがある。できるだけ多くのニーズに応えるべく、選曲は田原自身が行う。特に今回のリリースパーティではメインディッシュである新曲とのメリハリをつけるため、また、ヒット曲を聴き慣れているコアなファンへのサービスも兼ね、あえてアルバム曲率を高くしたセレクトとなった。

途中のMCコーナーでは、「晴れ男の僕が今日もやっちゃった。みんな大変だったでしょ」と、気温35度を超えるなかで来場したファミリー(田原はファンをそう呼ぶ)を気遣う。また、最近歌番組で共演した後輩の女性演歌歌手たちと食事会を開いたこと、ライブ前には麻布十番でそばを食べたこと、最近はトイプードルを飼っていること、朝起きたら水をコップ2杯飲むことなど、小ネタをあれこれ披露。会場へのアクセス方法の話題に絡めて、「懐かしの勝どき橋」というフレーズも挟み込んだ。豊洲の近くにある勝どき橋は、大ヒットした主演ドラマ『教師びんびん物語』(フジテレビ系)のロケ地であることは、昔からのファンなら知っているトリビアだ。

ビッグバンドが演奏するゴージャズでエレガントな新曲

この日の6曲目、昨年のシングル「HA-HA-HAPPY」のパフォーマンスが終わると、ステージから田原が退場。代わりに大型のディスプレイが姿を現し、新曲「ロマンティストでいいじゃない」のMVが流れた。

ここで、「ロマンティストでいいじゃない」が生まれた背景について触れておきたい。まず、田原の頭のなかに、フレッド・アステア、ジーン・ケリー、フランク・シナトラらが活躍した古きよきアメリカのエンターテインメントを再現したいというイメージと、“ミディアムなブロードウェイ・ジャズ”というコンセプトがあった。

そして、イメージとコンセプトに沿った曲作りを、現役第一線のソングライター・青葉紘季と共同制作者の大山聖福に依頼。曲ができあがると、田原俊彦の世界を知り尽くした作詞家・松井五郎に詞をつけてもらった。最後に、日本屈指のアレンジャー・船山基紀にビッグバンドの演奏による仕上げを任せた。やがて完成した作品は、自身が考える田原俊彦像に見事にハマるものだった。

船山と田原は、42年前のセカンドシングル「ハッとして!Good」からの付き合い。同曲もまた、当時としては珍しいビッグバンドを用いたジャズ風の曲だ。ほかにも、船山のアレンジでないが、17作目のシングル「チャールストンにはまだ早い」(84年)、31作目のシングル「夢であいましょう」(87年)など過去の田原楽曲にはジャズのテイストを含んだものがいくつもある。「ロマンティストでいいじゃない」はその路線の延長線上にありながら、田原俊彦史上もっともゴージャズ、もっともエレガントな曲ではないだろうか。

「42年の月日を重ねて、今、表現できることがある」

還暦イヤーを経た田原にとって、意欲的なチャレンジとなった。田原は常に、「田原俊彦に求められていることはなにか?」と考えているのだ。

エンターテイナーに定年はない

肝心のMVは、ワイドパンツのスーツを着た田原がラグジュアリーなホテルのような空間を縦横無尽に移動しながら、ほぼカメラ目線で歌い踊る姿を1カット(つまり、カメラの切り替えナシ)で収めた見応えのあるもの。また、ハットをかぶり、ステッキを片手にフレッド・アステアさながらのタップダンスを踊る間奏が大きな見せ場になっている。

そんなMVを観て観客の気持ちが高まったところで、同じ衣装に着替えた田原が舞台に再登場し、改めて「ロマンティストでいいじゃない」を生で歌う。この曲のためにあらためてレッスンを受け直したというタップダンスのキレも上々だ。なお、映像と生歌で同じ曲を連続して聴かせるという大胆な構成も田原のアイディアによるものだ。

さて、田原は新曲を引っさげて、恒例の全国ライブツアーを行う。今回も7月から11月までの長丁場となる。こちらはヒット曲から、最新曲、マニアックな曲までが満載、生バンドの演奏による約2時間のフルステージが展開される。

(写真=西村彩子 文=ミゾロギ・ダイスケ)

■「TOSHIHIKO TAHARA ニューシングル リリースパーティ 2022」セットリスト
「愛たい・逢えない・切ない」 アルバム『Vintage 37』(98年)収録曲
「踊る王子-Dancing Prince-」 アルバム『男…痛い』(86年)収録曲
「シンデレラ」58作目のシングル(13年)
「セクシー・ヴァージン」 アルバム『夏一番』(82年)収録曲
「ヒマワリ」62作目のシングル(11年)
「HA-HA-HAPPY」72作目のシングル(21年)
MV「ロマンティストでいいじゃない」73作目のシングル(22年)
「ロマンティストでいいじゃない」73作目のシングル(22年)

 

INFORMATION

「TOSHIHIKO TAHARA DOUBLE ‘T’ TOUR 2022 Romanticist」
https://toshihikotahara.com/tour2022/

フランク・シナトラは、60代でニューヨークやラスベガスのみならず、世界各国で旺盛なステージ活動を行い、80歳近くまで世界のトップにいた。フレッド・アステアは、70代でアカデミー賞にノミネートされ、80代でマイケル・ジャクソンから教わったムーンウォークをマスターしたといわれる。「舞台で歌って踊ることこそが我が人生」。そう語る61歳の田原には、まだまだ時間がたっぷりあるのである。

 

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