【連載】師匠と僕 村木 弾 第4回

「兄たちのデビュー~新たな家族~」

巨匠、故・船村徹先生の最後の内弟子である僕が、師匠との思い出の日々を紐解く。第4回目は、お世話になった兄弟子たちのデビュー。

 

船村徹先生に内弟子入りして2年ほど経った頃、兄弟子・天草二郎先輩のデビューが決まった。歌手を目指して、自分で歌を吹き込んだテープと手紙を先生に送り、その後、内弟子になるまでの連絡役を務めてくれたのが天草先輩だった。そんなお世話になった兄貴のデビューは、自分のことのようにとてもうれしかった。僕にとっては短い期間だったが、楽想館で寝食をともにした兄弟の船出を、「6号室」で祝った。

それからさらに月日が流れ、弟子入り、4、5年頃から、僕も先生の付き人として、仕事場に同行させてもらえるようになり、運転手役も兄弟子たちと交代で任された。今までの自分の仕事だった家事全般に加え、付き人としての仕事も増えて毎日が忙しかったが、先生や兄弟子たちとの会話に共通点ができ、新たな発見もあって、充実した日々を送ることができた。

ところで、先生は内弟子たちをニックネームで呼ぶ。僕も弟子入り当初は、本名の“大門君”と呼ばれていたが、いつしか“うちわ君”になった。この名前の由来は、僕の顔の形が団扇(うちわ)にそっくりということから名づけられた。“ポロ子”(犬)や“ミャーちん”(猫)、そして楽想館に迷い込んだニワトリには“コッコちゃん”、庭の木を伐採していた時に見つけたコゲラの雛には“ケラ君”などなど、先生のネーミングセンスは最高だ。

内弟子生活6年目を迎えた年、走 裕介先輩がデビューした。走兄は、魚のさばき方や貝の剥き方、庭の手入れなど、たくさんのことを教えてくれた。その後、同じレコード会社・日本コロムビアに所属したこともあり、ずっと大変お世話になっている。

そしてちょうどその頃、また“ひとり”のニャーゴ(猫)が現れた。朝、いつものように庭に新聞を取りにいく途中、どこからともなく青い瞳をした全身真っ白なニャーゴ(♂)が歩み寄って来た。僕の足にまとわりついて離れなかったが、朝食の支度があるのでとりあえず頭をなぜて家の中に入った。そして夕食時、テラスで先生と飲んでいると、朝方のニャーゴがやって来た。

今朝の出来事を説明すると、「この子は楽想館が好きで来たんだヨ。明日、病院に連れて行って、家の中に入れてあげなさい」と先生。早速、いつもの宇都宮市内にある動物病院で診てもらい、楽想館に新たな家族が加わった。

先生は、野球好きで、大の巨人ファンである。その当時、ジャイアンツではラミネスという外国人選手が活躍していた。そのラミレス選手がお気に入りだった先生は、この白いニャーゴに“ラミ君”と名付けた。

その数年後、えひめ憲一兄もデビュー。2012年夏頃から、先生とワンニャン(犬と猫)、そして僕、この“7人”の生活がスタートしたのだった。

「楽想館」のテラスで兄弟子たちと。右から天草二郎先輩、走 裕介先輩、えひめ憲一先輩、僕

 

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船村 徹氏
昭和7年、栃木県船生村生まれ。昭和24年、東洋音楽学校(現東京音楽大学)ではピアノ科に学ぶ。昭和30年、春日八郎のデビュー作「別れの一本杉」で作曲家デビュー。その後、数々の名曲を世に送り出し、作品数は約5000曲以上とも言われる。歌謡曲の作曲家として初めて文化勲章を受章。2017年〈平成29年〉2月16日永眠。

 

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村木 弾「ほろろん演歌」

村木弾ほろろん演歌

「ほろろん演歌」
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c/w「男さすらい」
作詞/高田ひろお 作曲/徳久広司 編曲/杉村俊博
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私設「村木弾ファンクラブ」(弾む会)ご入会案内

◆設立日:2018年4月18日(水)
・入会金不要
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〒256-0812神奈川県小田原市国府津2-2-3
萩原保子




Profile
村木 弾(むらき・だん)
1980年秋田県生まれ。鳶職、現場監督の仕事に従事していたが、2003年、歌手を目指して故・船村徹氏の最後の内弟子となる。2016年に、作詞&プロデュース・舟木一夫、作曲・船村氏による「ござる〜GOZARU〜」でデビュー。

日本コロムビア 村木弾ページ
村木弾 公式Twitter