松前ひろ子劇場の開幕~新曲「居酒屋 夢あかり」はフルコーラスで!~
カラオケファンから熱狂的な支持を受けている松前ひろ子の新曲は「居酒屋 夢あかり」。物語性のある心地よい三連の作品だ。そしてカップリングは松前には珍しい男性目線で歌う夫婦演歌。「たまには男っぽい歌をカッコよく歌いたいたかった」と松前もお気に入りだ。
文=藤井利香
松前劇場の開幕
実力派・松前ひろ子の新曲タイトルは「居酒屋 夢あかり」。夫婦二人で営んできた店を夫亡き後も一人で切り盛りする、健気な女性が主人公だ。
松前自身、夫である作曲家・中村典正さんを亡くして早4年となる。暖簾を出し、変わらぬ笑顔で客人を迎える居酒屋のおかみの姿は、家族のために主婦業もいっさい手を抜かなかった松前の姿が自然とだぶる。今は3匹の猫と暮らす日々だが、中村が「あまり無理をしないで」と心配しそうなくらい、精力的な毎日を送っている。
「今回の曲は、店を開けてから暖簾をしまって終わるまでの、ストーリー性のある3連の楽曲です。言い換えれば、イントロで松前劇場の幕があき、お店の様子が語られ、最後はフェイドアウトによって劇場の幕が下りるという展開。ドラマのエンディングのような締めくくりのアレンジが特徴です。歌詞でぜひ聴いていただきたいのは2番の部分なんですが、テレビで歌うときなどは1、3番になってしまうでしょう。そこが残念なので、ぜひ通して聴いていただきたいですね」
MV撮影で亡き夫を思い出し・・・
当初、曲のタイトルは「夢あかり」の予定だった。「居酒屋」は入っておらず、逆に1~3番のそれぞれの歌詞のラストに“居酒屋 夢あかり”という言葉が入る流れになっていた。
「歌詞が”恋あかり 夢あかり”と変更されたのですが、作詞のかず翼先生のご希望でタイトルに『居酒屋』を入れることになりました。逆に歌詞の中には“居酒屋”の文言はいっさいないので、タイトルだけで歌の世界観を想像していただけるようになっています。
作品の世界は完全にお店の中でのお話なので、MV(ミュージックビデオ)ではスタジオに仮想のお店をつくり、撮影しました。お料理や器は私が自前で持ち込んだもの。鳥のから揚げとかいろいろ用意して、客人役の多くは出演料無料(!)の事務所スタッフ。撮影後に食べてもらって、家族的な楽しい撮影になりました(笑)。主人は煮物が好きで、北海道から送られてくるじゃがいもで肉じゃがなどをよくつくりましたが、そんなことも思い出しましたね」
「こんな男性はあまり好きじゃないわね(笑)」
カップリングは「待雪草」。冬に白い花をうつむき加減に咲かせる、ヒガンバナ科の小さな花だ。夫に寄り添い健気に支える女性を、待雪草にたとえた男目線の夫婦演歌となっている。
「私自身はこちらも好きです。松前ひろ子というと夫婦演歌が定番ですが、たまには男っぽい歌をカッコよく歌いたい。それもすごくいいと、ファンの方も言ってくださいます。実は三山(ひろし)も、たまにはいつもと違うマイナーな曲を歌ってほしい、僕は『待雪草』がいいですねと言ってくれたんです」
「最終的に先生方の意向でこちらをカップリングにすることが決まりましたが、カラオケでは『待雪草』も皆さんが歌ってくれるんじゃないかと期待しています。ただね、この作品に登場する主人公の男はあまり好きじゃないわね。だって、つつましやかな奥様がいながら、のんべえで家に帰ってこないなんて、そんなの許せないじゃないですか(笑)」
カラオケ・ワンポイントアドバイス
そんな今回の新曲、ぜひカラオケで多くの人に楽しんでもらいたい。歌うときのポイントを簡単に聞いた。
「『居酒屋 夢あかり』のほうは、ストーリーを思い描きながらイメージで歌ってください。一つアドバイスするとしたら、歌詞の中に『暖簾』という言葉がありますが、普通に話し言葉でいうと語尾が下がります。ところが、曲中ではのれん~と上がっていく節なので、言葉とメロディーにややずれがあります。主人がよく言っていたのは、言葉とメロディーは同じ。ごく自然に入ってくる言葉と同じ音階のほうが心に響くよ、と。関西弁になるとまた違うでしょうが、標準語として考えるとこの作品の世界観としてずれがあるので、音と言葉が同じように聴こえるように歌ってほしいと思います。私もこの部分を特に注意して歌っています」
「『待雪草』のほうでは、“惚れた惚れたよ”という歌詞が1番にあり、ここはただ言葉の繰り返しではなく、言葉として思いを表現してほしいです。最初の“惚れた”に続き、次の“惚れたよ”ではさらに気持ちを込めて。男性が力強くワンクッション入れながら歌うと、とてもかっいいですよね。決めどころをきちっと抑えると、相乗効果で全体の歌唱がグレードアップします。私はそこを意識して、最初に弦哲也先生のデモテープを何回も聴いたうえでかなりオーバーに歌ったんですが、そこまでやらなくていいと笑われてしまいました(笑)」
長年続けて来た松前主催の「カラオケ大会」(詳細はCDに封入)は、7月以降、コロナ前と同じ3回にわたり行われることになっている。「皆さんに会えるし、とても楽しみ」という松前。夫婦で挑戦する人もいるなど、アットホームな温かみのある大会だ。多くの人に、ぜひ挑戦してもらいたい。
2023年5月10日発売
松前ひろ子「居酒屋 夢あかり」
大人のための演歌を歌える実力派として、全国のカラオケファンから熱狂的な支持を受けている松前ひろ子。表題曲の「居酒屋 夢あかり」は夫婦で営んできたお店を、夫亡きあとも一人で切り盛りする女性が描かれた作品。三連のリズムが心地いい。カップリング曲「待雪草」は健気な女性を支える男性目線の夫婦演歌。こちらが表題曲となる可能性もあったほど、ファンにも人気だという。
profile
松前ひろ子(まつまえ・ひろこ)
1月28日、北海道生まれ。恵まれた家庭に育つが、歌手を夢見て上京。従兄の北島三郎のもとで修行し、1969年にデビュー(当時は松前弘子)。しかし2年後、交通事故に遭い歌手生命を断たれる。歌手活動休止中に、作曲家の中村典正氏と結婚、一男二女の母となる。松前は事故から8年後に再デビューし、夫が作曲を手がけた「祝いしぐれ」「初孫」などのヒット曲に恵まれる。2019年には歌手生活50周年を迎え、2月に50周年記念シングル第1弾「女一代 演歌船」を発売。6月には「歌手人生50周年記念コンサート」を浅草公会堂で開催する。8月16日に最愛の夫・中村を亡くすが、気丈に仕事をこなし、9月には北島三郎プロデュースによる50周年記念シングル第2弾「夫婦鶴」を発売。その後も「春隣り」(2021年)、両A面シングル「望郷酒語たり/留萌 人情 みなと町」(2022年)、「相合い傘」(2022年)とコンスタントに新曲をリリース。2019年8月より音楽番組『あさうたワイド」』BS日本テレ)で、弟子の三山ひろしとMCを務めている。座右の銘は継続は力なり。
松前ひろ子 公式ホームページ
徳間ジャパンコミュニケーションズ 松前ひろ子ページ