松阪ゆうき、クリスマスディナーショーで「一人ひとりの”あなた”に向けて感謝を」。自作曲をサプライズで熱唱
松阪ゆうきが12月16日、東京・錦糸町の東武ホテル レバント東京で毎年恒例となっている「クリスマスディナーショー2020」を開催した。コロナ禍が収束の気配を見せない中、それでも会場に駆けつけてくれたファンを前に、歌える喜びを全身全霊の歌声で表しながら、およそ2時間にわたるステージを笑顔で駆け抜けた。
徳永洋明氏の奏でるピアノ演奏に乗り、讃美歌「O Holy Night」を厳かに、キャロル・キングの名曲「You’re Got a Friend」をリズミカルに、2曲続けて英語詞で披露してショーはスタートした。
▲「皆様、こんばんは。今日はベートーベンの生誕250年という記念の誕生日だそうです。こちらのホテルでは、今回で5回目のディナーショーを開催させていただきます。お越しいただきまして誠にありがとうございます。しゃべり声は小さく、拍手は大きく(笑)。よろしくお願いいたします!」
松阪は幼い頃から祖父の影響で民謡に親しんで育った。その後、東京の音楽大学で声楽を学び、民謡をはじめミュージカルやオペラ、J-POP、そして演歌・歌謡曲と、そのジャンルを超越した歌唱力で活躍してきた。
2015年に「ふるさと帰り」でデビューした松阪にとって、今年は記念すべき5周年の節目。デビュー以来この場所で毎年行ってきたディナーショーにも、特別の思いがあった。
ソーシャルディスタンスを保つため通常の客席よりも半数に減らし、マスクやフェイスシールドを装着して感染防止対策を徹底しつつ、会場に駆けつけた150名のファンと心の交流を深めるさまざまな演出で楽しませた。
「今年の朝の連続テレビ小説『エール』、皆さんご覧になっていましたか?『エール』の主人公のモデルは古関裕而さんです。古関さんはたくさんの名曲、生涯5000曲を作曲されたと言われているんですけれども、その中から選りすぐりの!選・り・す・ぐ・り・の(笑)!! 古関さんの曲を歌わせていただこうと思います。まずはこの曲からです」
『エール』の最終回でも歌われた「高原列車は行く」を軽やかに歌い、昭和28(1953)年に松竹映画『君の名は・第二部』の主題歌として織井茂子が歌って大ヒットとなった「黒百合の歌」、戦争で被災した人々への鎮魂歌「長崎の鐘」、アイヌの伝統儀礼を題材にした今日でも多くの歌自慢を虜にする古関氏の代表的な一曲「イヨマンテの夜」を、情感たっぷりに歌い上げ、松阪ワールドを見せつけた。
しかし、これはまだ序の口にすぎなかった。
ここから、会場の中央に作られたステージへマスクをしながら客席を縫い移動すると、「皆さんお気づきかわかりませんが……まだ僕は自分のオリジナル曲を一曲も歌ってないので(笑)」と前置きし、セカンドシングル「南部恋うた」のカップリング曲「好きだよ」(2016年)、サードシングル「愛の欠片」(2017年)、そのカップリング曲「伊勢の女」をメドレーで、そして今年10月7日に発売したばかりの新曲「遥かな人よ 」を2020特別バージョンで披露した。
▲センターステージ横の客席には、松阪の才能にほれ込み松阪の楽曲の作曲を数多く手がける浜 圭介氏や、「遥かな人よ」などを作詞した友利歩未氏、アナウンサーの大沢悠里氏、西村知江子氏という名だたる出席者の姿があった。
応援に駆けつけてくれた恩人やファンに見守られる中、続いて松阪が紹介した楽曲は、まさかのサプライズだった。
「今日のショーの中で一番緊張しているのですが……。実はですね、作詞作曲というのを初めてやりましてですね。今年はデビュー5周年の節目の年で記念コンサートも予定していたのですが中止になりました。今日のディナーショーもどうなるかと心配していたのですが、今日来ていただいている皆さんや今までお世話になった方々、皆さんに本当にありがとうという感謝の気持ちを込めて曲を作ってみました。今日初めて歌います。出来が良ければ次のシングルのカップリングに入れてもらえるかもしれないということで……。皆様の応援をいただけたら、僕もちょっとした印税生活が待っているかもしれない(笑)。いろんな方に対する思いを詞にして曲にさせていただきました。タイトルは『ありがとう…あなたに』です」
▲「一人ひとりの”あなた”に向けて歌わせていただきます」と松阪。徳永氏のピアノで自作曲を熱唱した。
15分の休憩、ゲストの日本総合伝統芸能集団・喜楽座による「千本桜」を挟み、第二部が始まった。
まずは、「遥かな人よ」のカップリング曲「ふるさと日本、しあわせ音頭!」。喜楽座のメンバーがこの日のために振付けを考えてきてくれたといい、「いいですねぇ、リハビリみたい(笑)」と松阪は常に会場の雰囲気を和ませる冗談で笑いを誘った。
▲「今年はなかなかお祭りがなかったので、少しでも音楽でお祭り気分を味わっていただきたい」と松阪。歌いながらも完璧に踊ってみせた。
歌い終えると、フェイスシールドをつけ、喜楽座の演奏をBGMに笑顔で客席をラウンド。握手もできず一瞬ひじでふれあうだけだったが、ファンと心を通わせた瞬間だった。
ショーも終盤にさしかかり、松阪が言った。
「デビューして5年というのはあっという間だったような長かったような。でも、デビューの時のことはよく覚えていまして、デビュー曲のオケ録りの時の音というのは今でも忘れられません。この日を迎えさせていただけて、今日はお越しいただけて本当に感謝を申し上げたい。ということで、デビュー曲『ふるさと帰り』を聴いていただきたいと思います」
▲ステージの中央に凛々しく立つその姿は貫録そのもの。5年という年月が、松阪の歌声、芸をひと回りもふた回りも成熟させたことを物語っていた。
第二部は”和”を中心に届けてきた松阪。和楽器の風流な音色に乗せて、美空ひばりの「りんご追分」、細川たかしの「望郷じょんから」という難曲を、民謡で鍛えた圧巻の歌声でドラマチックに聴かせ、大団円を迎えた。
ステージから去った松阪に向け、客席の手拍子がだんだん大きくなる。声が出せない「アンコール!」の代わりだ。すると、赤い法被をまとい、自ら「アンコール!アンコール!(笑)」と叫びながら再び松阪がステージに姿を現した。
「皆様、今日は足をお運びいただきまして本当にありがとうございました。なんとかこうして開催できてよかったです。あと一曲歌ったら終わりかと思うと寂しいですが、最後はにぎやかに!『令和夢追い太鼓』を歌わせていただきます!」
最後に渾身の力を注ぎ幸せそうな表情で歌い切ると、松阪は思いを最後方まで届けるように叫んだ。
「令和! 来年も元気にお会いしましょう!!」
2020年10月7日発売
松阪ゆうき「遥かな人よ」
「遥かな人よ」は岐阜県内の美しい街並みや景色、名所などが多く登場する叙情歌。松阪の奥行きのある歌声が豊かに響きわたり、耳に心地よい一曲だ。「最後の繰り返している歌詞の部分は音に高いのと低いのと差があるので、そこに差が出るといいですね。昔のことを思い出したりだとか、イメージできるような場所があればそこを思い出してもらって、思いきり伸びやかに歌っていただけたら気持ちいいかなと思います」(松阪)。
カップリング曲の「ふるさと日本、しあわせ音頭」は日本を元気に盛り上げるノリのいい音頭もの。「詞と曲がすごくマッチしていて、手拍子していただきながら歌って、世代を関係なく楽しんでもらえる曲かなと思います。今年はお祭りなどが軒並み中止になっていますので、気分だけでもこの曲を聴いていただいて元気になってもらえたらいいなと思いながら歌いました」(松阪)。もうひとつのカップリング曲「遥かな人よ〜情熱編〜」は、表題曲と同じメロディーに異なる歌詞を乗せているが、こちらにも岐阜の名所が多く登場する。