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前田三夫

オトカゼのライターが高校野球!? 歌にも通じる不器用な生き方が告白された『鬼軍曹の歩いた道』に共感

オトカゼでインタビュー記事を執筆いただいているライター/作家の藤井利香さんが構成・編集された単行本が発売されました。藤井さんのライターとしてのライフワークのひとつに、高校野球があります。甲子園を目指して青春をかけた経験を持つ新浜レオンさんのインタビューでは、高校野球の話題で盛り上がっていました。
そんな藤井さんが編集担当した単行本が帝京高校一筋に、高校野球に人生の50年を捧げられた前田三夫・帝京高校野球部名誉監督による『鬼軍曹の歩いた道』です。

不器用だが、こんな生き方もあった

単行本『鬼軍曹の歩いた道 帝京一筋。高校野球に捧げた50年』に携わって

藤井利香=文

あなたを突き動かすものは何ですか?

幼少の頃から歌と親しみ、早々に歌手デビューを果たした方もいれば、コンテストを受け続けるなど苦節の末にメジャーデビューを手に入れた方もたくさんいます。でも、どちらにせよ、険しいのはデビュー後の道。聴き手を魅了する華やかなステージの一方で、舞台裏では日の当たらない地味な時間を重ね、多くの歌い手さんが常に自分と対峙し葛藤を続けながら、自分の信じる道を歩いているというのが本当のところだと思います。

でも、そんな歌い手さんを突き動かしているのは、やはり「歌うことが好き」だということ。「好き」だからブレない。現代はたくさんの情報が瞬時に手に入る超情報化社会。むしろブレずに一つのことをやり通すという生き方が難しくなっているような気もしますが、あえて「一筋」に挑む姿からは、人としての力強さと魅力を感じないではいられません。

一般の方でもその道一筋にたくましく生きている方はたくさんいますが、このほど歌とは無縁ながらスポーツ界で独自の道を歩み、昨年、50年という歴史にピリオドを打った方の半生を綴った本の構成・編集に関わらせていただきました。

熱戦が繰り広げられている甲子園大会で

前田三夫さん。スポーツとはいっても、高校野球の指導者としてこの世界で名を馳せた方です。今、熱戦が繰り広げられている甲子園大会にも幾度となく出場し、東京の帝京高校を実力校に育て上げました。ここ10年は甲子園への出場が果たせず、全国の人の前にお目見えする機会はありませんでしたが、帝京ファンを多くつくり、話題多き指導者の一人でした。

前田三夫

話を聞いていてあらためて思ったのは、華やかな表舞台の何倍も、やはり苦悩を重ねた裏舞台があったということです。人が考える以上に越えねばならない高い壁がたくさんあり、毎年入れかわる生徒たちを前に「もがいていた」というのが実際のところ。今の時代では考えられないような挑戦や決断を迫られることが年がら年中起きていて、でもその度に「この場から逃げたくないんだ」と、心を奮い立たせていたそうです。

道はない。切り拓くしかなかった

22歳のとき、思わぬことから母校でもない帝京高校の監督になった前田さん。1949(昭和24)年生まれです。戦後の懐かしい日本の風景を背景に野球に打ち込み、指導者になってからはたった一人で道を切り拓き、一時も力を抜くことなく自分の考える指導者としてのあり方を追求してきました。

前田さんの姿から垣間見られたのは「強い執着心」と「情熱」。教育者ゆえに取り巻く環境の変化から目をそらすことはできず、悩みも尽きない日々でしたが、それでもひるまず、ブレることなく一つの道を貫き通してきました。

前田三夫

歌い手さんの内に秘めた「強さ」とはまた違う、闘う姿勢を前面に押し出した「強さ」。うまくいかなかったとき、「お酒を飲んで忘れる」という行為が一番嫌いで、「ダメだったこと、失敗だと思ったことを忘れてはいけないんだ」と、つらい時ほど目の前の現実に向き合ってきた姿はとくに印象的でした。

鬼軍曹の素顔。たまにはカラオケで

厳しい世界に身を置きながらも、本来はノリのいい楽しい人柄。マスコミの人からも大人気で、試合のあとはいつもたくさんの人の輪ができていました。お酒を飲むなら、愚痴をこぼすのではなく楽しく飲む。親しい人とは、たまにカラオケも楽しんでいたそうです。

そんな前田さんの勇退を残念に思ったファンも少なくありませんでしたが、スパッと区切りをつけ、半世紀という長い指導者人生にピリオドを打ちました。現在は「帝京野球部名誉監督」という肩書こそあれ、直接の指導は新たなスタッフに任せ、見守る姿勢を貫いています。

『鬼軍曹の歩いた道』(ごま書房新社刊)。機会がありましたら、「不器用だが、こんな生き方もあった」というメッセージをこの本から感じ取っていただけたらうれしく思います。

 

 

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2022年7月22日発売
帝京一筋。高校野球に捧げた50年
前田三夫=著『鬼軍曹の歩いた道』
前田三夫

四六判 本文356頁 口絵8頁(カラー) ごま書房新社

甲子園通算26回出場を果たした伝説の監督、初の自伝!
高校野球界で人気No.1(名誉)監督の書き下ろし。
執筆に3年をかけた360頁の超大作!

自らをここまで客観視できる人が、いったいどれくらい居るだろうか。「甲子園通算51勝、3回の全国制覇」という稀代の名監督。だが、その華々しい戦績の陰で、実はクビ寸前を2度も経験している。
孤独を深めるなかで必死にノックバットを振れば、「勝利至上主義」などといわれ苦悩した。
時にヒール役、しかし、決してブレずに挑み続ける姿は唯一無二で、魅了される高校野球ファンは多かった。
前田三夫は、本来は、ユニークで楽しい人柄なのだ。その笑顔を封印し、「鬼」に徹した日々を、生い立ちとともに振り返ってくれた。そこには、狂気にも似た愛と情熱が迸っている!
「こんな人生、そうはない」。
二度と出ないかも知れない「野球部監督のバイブル」。間違いなく一読に値します。

前田三夫

帝京高校に飾られた春・夏の高校野球 優勝旗

目次
まえがき
第一章 若き日の記憶 
第二章 帝京、全盛時代
第三章 熟考の時代。求め続けたベストな指導法
第四章 もがき続けたラスト10年
第五章 「帝京あるある」「帝京いろいろ」
あとがき

より詳しい内容は、ごま書房新社のホームページへ
▶ごま書房新社『鬼軍曹の歩いた道』

著者プロフィール
前田三夫(まえだ・みつお)
1949年6月6日、千葉県生まれ。木更津中央(現木更津総合)高―帝京大。卒業を前にした1972年1月、帝京高校野球部監督となる。78年第50回センバツで甲子園初出場を果たし、以降甲子園に春14、夏12回出場。帝京高校を全国レベルの強豪に育て、全盛時は「にくらしいほど強い」と評された。2021年夏を最後に勇退し、名誉監督となる。プロに送り出した教え子も多数で、現役では杉谷拳士(日本ハム)、原口文仁(阪神)、山﨑康晃(横浜DeNA)ら。