
師匠・吉幾三も飛び入り!! 吉永加世子がサマーライブで「伝承・吉幾三の女唄」を宣言し万感!
吉永加世子が8月19日、東京・港区のライブハウス「六本木バードランド」でライブを開催した。新曲のお披露目も兼ねた「吉永加世子サマーライブ2022~サヨナラTokyo~」は師匠・吉幾三が飛び入りで登場するなどして大いに盛り上がり、吉永は全17曲を披露。会場を熱気で包みながら笑顔を届けた。
この日は2年前に、11年ぶりとなるシングル「燃えつきて/明日にワインを」を発売した記念日でもあった。
あいさつ代わりに、研ナオコの「Tokyo見返り美人」でステージに飛び出してきた吉永は「燃えつきて」をフルコーラスで熱唱すると、「たくさんの方にお越しいただきましてありがとうございます」と話し始めた。
「2年前の今日、前作『燃えつきて』を出させていただきましたが、2年後にまたこうしてライブができることをうれしく思っています。久しぶりに皆様にお会いできるのも楽しみにしていました」
吉幾三が作詞・作曲した「燃えつきて」は、“燃えて…今夜も眠れない” “燃えて…乱れて眠れない”と、燃えつきることのない熱い愛を歌っている。吉永も「燃えつきて」に背中を押されるように、この日のライブでは2つのテーマを胸に熱い気持ちを歌った。
その2つのテーマとは? ひとつは“加世子の夏”と言わんばかりに、夏をテーマにした歌で盛り上がること。もうひとつは「伝承・吉幾三の女唄」をテーマに師匠の名曲を披露することだった。
吉永は6月に新曲「サヨナラTokyo」をリリースした。カップリング曲には吉が2015年に様々な愛の形を書き下ろしたオリジナルアルバム『愛・ありがとう』から「あなたが足りない」をカバーして収録している。この曲は今年、吉が発表した『50周年記念アルバムⅠ~ピアノと吉と~』で、吉自身も歌い直しているが、切ない女唄となっている。
吉永は新曲のカップリング曲として「あなたが足りない」を歌うことになったことをきっかけに、吉に直訴した。それは吉が生み出してきた女唄を伝承していくことだった。
「2番の歌詞に“夢の中 ボロボロ泪出て”とありますが、まさかですが、涙が出てしまいました。本当に素敵な曲です」
新曲「サヨナラTokyo」の披露に続いて、涙ぐみながら「あなたが足りない」をファンに届けた吉永は、「この曲をきっかけに、これからも先生の女唄を歌わせていただきたいとお話しさせていただきました」と、ファンに明かす。
「『ダメだ』と言われるかと思いました。でも、先生は『そっかあ。歌を歌い継いでくれたらうれしいな』。そんな言葉をくださいました」
吉の未発表曲や隠れた名曲の女唄を、これからも伝承して歌っていくと決めた吉永は、吉の作品から「紅~べに~」、「五月雨」を届ける。

レコーディングの合間を縫って、吉永加世子のライブに駆けつけた吉幾三。
するとここで吉が「みなさん、どうも」とステージに現れた。
「え!? 先生!! 今日はレコーディングじゃなかったんですか?」
驚く吉永を尻目に、吉は続ける。
「わたくし、いわゆる吉幾三でございます。加世子がこんなにお世話になっちゃってありがとうございます。今日、一曲歌おうかと(笑)。でも、歌ってね、すぐ帰んなきゃいけない。帰って洗濯しなきゃいけないんだよ。マイクはこれか? ちゃんと消毒したのか? エコーはかかるのか?」

吉幾三が「WON’T BE LONG」を歌って会場を盛り上げる。吉永加世子も師匠の飛び入りにうれしそうだった。
多忙の吉だったが、レコーディングを抜け出して駆けつけたようだった。吉がバブルガム・ブラザーズの「WON’T BE LONG」を十数年ぶりに歌うと話すと、吉永は「初めて聴かせていただくかも」と目を輝かせた。
“WON’T BE LONG”。直訳すれば、長くはないさ、もうすぐさ。
吉永は2008年に吉幾三プロデュースで現在の名前に改名し、「永遠に愛して」をリリースしたものの、長く新曲を出せない時期が続いた。そんな愛弟子の苦悩を見てきた吉ならではの選曲にも思えた。
歌手として大きく羽ばたくまで、あと少し。だから頑張れ。そんなメッセージも込められた吉の「WON’T BE LONG」。
「今日はぶっつけ本番で歌いましたが、私が『WON’T BE LONG』を歌ったということが加世子の中で残ればいい」
吉の優しさ溢れる言葉だったが、ノリのいい楽曲に観客はただただ歌を楽しんでいた。

客席でライブを観ていたものまねタレントのケイスケをステージに上げた吉永加世子は2人で「いとしのエリー」を披露した。
吉が去ったステージでは、吉永が吉の代表曲「酔歌」を神野美伽がカバーした「酔歌~ソーラン節入り~」バージョンで歌い上げると、会場を加世子の夏色に染め上げていく。
「いとしのエリー」(サザンオールスターズ)を、桑田佳祐も認めるものまねタレントのケイスケとデュエットした吉永は夏の歌で会場を爆上げする! メドレーで届けられた”夏歌”は「ひと夏の経験」(山口百恵)、「真夏の出来事」(平山みき)、「真夏の夜の夢」(松任谷由実)、そして「ダイナミック琉球」(イクマあきら)の4曲だった。
「ダイナミック琉球」はシンガーソングライターのイクマあきらが2008年に発表した曲。未来を想うスケールの大きな作品だが、2017年に夏の甲子園大会に出場した仙台育英高校が応援歌として演奏したことなどで注目を浴び、多くのアーティストもカバーしている。
「沖縄には夏のイメージがあることや、コロナ禍でもあるので祈りを捧げたいと選びました」(吉永)
ライブは終盤へと向かった。吉永は現在、芸能生活50周年を迎えている吉幾三に帯同してコンサートに出演したり、吉の劇場公演では歌だけではなく、演技にも挑戦したりしている。
「悲しくて切なくてやりきれない想いを綴った曲です」。吉永がフィナーレに向けて選んだのは、中島みゆきの「化粧」だった。
“化粧なんて どうでもいいと思ってきたけれど・・・”。演じるように歌う吉永の「化粧」。同曲は1978年にリリースされた作品だが、これまでに多くの歌手がカバーしている名曲でもある。

中島みゆきの「化粧」を届ける吉永加世子。
「6月に新曲を出させていただいてから、まだ一度もライブができていなかったので、皆様に会いたいという思いが強かった。そんな今日のライブでは先生の作品もそうですが、初めて歌う曲も多く、すべての曲を精いっぱい歌いたい」
そう語っていた吉永は感情を込めた「化粧」を歌いきると、尊敬する髙橋真梨子の作品から「はがゆい唇」、そしてラストの曲としてファン一人ひとりに愛が届くようにと大橋純子の「愛は時を越えて」でステージを締めた。

アンコールでは、もう一度、新曲「サヨナラTokyo」を歌う吉永加世子。愛する人を想いながらも、東京を離れ遠い町へと向かう女性の心情が綴られた作品だ。
ここまで15曲を熱唱した吉永だった。しかし、新曲のお披露目ライブでもある。アンコールに応えて、吉永はもう一度、「サヨナラTokyo」を披露する。
同曲は今から34年前に、吉幾三が“アジアの歌姫” テレサ・テンのために書き下ろした作品だった。だが、この曲がテレサに届けられることはなく、やがてテレサは伝説となっていた。
「テレサ・テンさんのために作られた曲です。そんな曲を新曲として発表させていただきました。こんなに幸せなことはありません」
「サヨナラTokyo」を歌った吉永は万感の思いを胸に、最後は大黒摩季の「ら・ら・ら」をファンと一緒に楽しんだ。そして、「年内にもう一度、この場所で皆さんとお会いしたい」と呼びかけ、笑顔を見せた。
吉永加世子の「真夏の夜の夢」
5年ぶりに片思いの人とライブで再会・・・。私も年齢を重ねたので、いろんな恋愛をするじゃないですか。先生も恋愛はした方がいいとおっしゃいます。切ない思いや悲しい思いを経験した方がいいと。でも、そう言えば、最近トキメキってないなって思っていました。
じつは長年、片思いをしている人がいます。遠方の方なのでその思いは伝えていないのですが、1カ月ほど前に電話がかかってきました。「新曲『サヨナラTokyo』、いい曲だね。頑張っているね」と言ってくれて。着信の名前を見た瞬間からテンションが上がってしまって、これが忘れていたトキメキだと思うぐらいでした!
その方から「今度、イベントとかないの?」って聞かれたので、「8月19日にライブをやるよ」って伝えました。5年ぶりぐらいになります。今日この会場に来てくれていまして・・・。どこにいるんだろう?・・・って探している夢を見ました(笑)。