秋岡秀治

秋岡秀治の原点回帰 〜新曲「なぁ女将」とともに〜

秋岡秀治が、11月10日に新曲「なぁ女将」を発売した。哀愁の中に力強さを感じさせる男の世界を歌い続けて30年。今作では奥ゆかしい水仙の花のような馴染みの店の女将に抱く男の淡い恋心を、優しく、そして男らしく語りかけるように歌う。「これからも流行りに流されず、着流し演歌の王道をまっすぐ進んでいく」という秋岡に新曲について、今の心境について聞いた。

 

歌の旅を続けて30年。気づいたら芽が出ていた師匠の教え

 

歌手生活30周年、おめでとうございます。

秋岡 ありがとうございます。正直、自分では忘れていました(笑)。今年の2月のある朝、クラウンの社長の名前宅急便が来ましてね、なんだろう?と思って開けたら、30周年と特別功労賞の盾が入っていました。それを見て、あぁ30周年か、みたいな感じで思い出したくらいです。

改めて振り返られてみていかがですか。

秋岡 月並みですけどもあっという間でした。私は作曲家の岡千秋先生が師匠で作詞家の吉岡治先生が恩師で、「秋岡秀治」という名をこのお二人の一字をいただいてつけていただき「男の酒」でデビューをしました。しばらくお二人の先生と一緒にやらせていただいていたんですけれど、その後は市川昭介先生の作品を6年くらい、そして水森英夫先生の作品を6年くらい歌わせていただいてきました。女唄を歌ってみたり色々な作品を歌わせていただく旅に出たみたいな時期があって、デビュー20周年の時に再び岡・吉岡先生両師匠の「男の旅路」という曲でまたご一緒させていただいた時に、岡先生の譜面を見て「ここはこうやって歌わせたいからこの譜割りになっているのか」「ここはこうだな」というのが手にとるようにわかったんです。デビュー当時に岡先生がおっしゃっていたことが、ここで使われているんだなと。

具体的にはどのようなところでしょうか。

秋岡 間の取り方ですね。あと言葉の語り方や表現の仕方。特に言葉の後ろにつく母音をちゃんと歌わないとダメだと頻繁に言われていたんですよ。旅に出ている間、岡先生に教えていただいたことをずっと考えていたわけではないんだけれども、旅に出て戻ってきたら先生に言われていたことが身について芽が出ていたんですね。

今回の新曲「なぁ女将」でも、その教えは生かされましたか。

秋岡 そうですね。レコーディングの時に、岡先生が「ここは重要だからこういうふうに歌うようにと秋岡に言っといてくれ」とディレクターにおっしゃっていたそうなんですが、僕がすでにわかってしまっていたようで、当日は本当にスムーズに終えることができました。だから今回はほとんど岡先生が思っている通りの歌になっていると思います。

水仙の花がこの曲のモチーフとして1番から3番まで登場しますね。

秋岡 コロナで世の中皆さん大変な中ですが、飲食店の皆さんも大変ですよね。そういう世情も踏まえて、今頑張っている人たちを応援する、勇気づけられるようなテーマで何か作品ができないですかね、とディレクターと話していたら、「球根ですね」って言うんですよ。

球根ですか?!

秋岡 そう(笑)。どういうことか聞いたら、「球根というのはずっと芽が出ないまま何十年や何百年経っても、きっかけがあるとまた芽が出て花が咲くんですよ」って。だから球根のある花、それをテーマにしましょうって。なるほどと思いながら「球根のある花って何ですかね」と聞いたら、水仙だと。そして水仙は春を呼ぶ花だとも言われているので、色々な意味を込めてこの花をモチーフに、水仙のような女性を描こうということになりました。

球根と聞いた時「?」と思いましたがロマンチックですね(笑)。

秋岡 このコロナの中でもひたむきに頑張っていて、本当は強いんだけれども決してそれを主張しない。ちょっと俯き加減の、可憐な水仙のような目立たない存在の女将さん。その姿を見て「あぁいいな、素敵だな」と淡い思いを持っている主人公はもう白髪まじりのいい歳なんですが、そこがいいんですよね。毎日頑張っている女将の姿を見ながらちょっと一杯飲めれば幸せだなぁという本当の大人の恋っていうのかな。

秋岡さんはどなたかイメージされた女将さんはいらっしゃるんですか。

秋岡 それが、実はそういうお店があるんですよ、あるところに(笑)。僕はそこの女将の顔を思い出しながら歌っています。カウンターだけの雰囲気のあるお店なんですが、そこのママにこの詞を読んだ時ぴったりだなと思いました。

 

「大いなるマンネリでもいいからど真ん中を」原点に戻って自分の道を

 

歌い方のポイントや、カラオケで歌う際に気をつけた方がいいアドバイスがあれば教えてください。

洒落(しゃれ)た 肴(さかな)は なくていい
二合徳利で ぐいと呑(や)る
路地裏づたいに 水仙の花
めげずに今年も 咲いたとか
(「なぁ女将」歌詞より)

秋岡 頭の二行は思いきり語って、メロディーに乗せ過ぎて歌わないようにするというのがひとつのポイントです。一言一言置いていくみたいな感じできっちり歌っていって、その後にサビでガツンといった後はスッと抜いてまた優しく歌う。サビの「水仙の花」のところは、高くてこぶしを回さないといけないのでここはきっちりと回って上まで上がるように。そこは私も意識しましたね。サビがちょっと高いので、そこをきっちり音を上げて、コロコロっと回せればあとは難しくない作品だと思います。ぜひ挑戦してみてください。

ありがとうございます。最後に、今後の抱負や読者へのメッセージをお願いします。

秋岡 僕は30年前にデビューした時、会社のいち押しで華々しくデビューしたわけじゃないんですね。デビュー曲はなかなかカラオケにも入らなくて、その状況を変えるにはと、自分の足でこれでもかってくらいキャンペーンしたんですよ。生の歌を聴いていただいて「いいね」と応援してもらうしかなかった。そして若い頃は色んな作品に挑戦してみたいと思っていました。でも全国にうかがってファンの皆さんのお話を聞いてわかったのは、皆さんが求めているのは「秋岡秀治はこれ」という男の世界の歌なんだと。だから流行を求めてあっちに行ったりこっちに行ったりするのではなくて、大いなるマンネリでもいいからこれからも秋岡秀治はど真ん中をまっすぐ歌っていこうと思います。その二つが秋岡秀治の原点。30年の節目を迎えもう一度原点に戻って、全国呼んでいただけたらどこでも行ってキャンペーンをしてくまなく歌うつもりです。その意味でもキャンピングカーはぴったりだなと思って買ったんですよ。これからこの相棒とともに、どこでも参ります。駐車場だけ用意していただければ……(笑)。よろしくお願いします。

 


2021年11月10日発売
秋岡秀治「なぁ女将」

「なぁ女将」
作詞/石原信一 作曲/岡千秋 編曲/南郷達也
c/w「笹小舟」
作詞/石原信一 作曲/岡千秋 編曲/南郷達也
日本クラウン CRCN-8437 ¥1,350(税込)

Profile
秋岡秀治(あきおか・しゅうじ)
1966年5月27日、大阪府生まれ。1991年「男の酒」で歌手デビュー。作詞家の吉岡治氏、作曲家の岡千秋氏の両師匠から「秋」「岡」「治」の文字をいただき「秋岡秀治」と名付けられた。哀愁感の中に漂う力強く優しい秋岡独特の歌声や雰囲気、男らしい着流しスタイルで男女、世代を問わず厚い支持を受け今年歌手生活30周年を迎えた。運転が趣味ということも高じてキャンピングカーを購入。自らの運転で全国各地を回り歌を届けている。

秋岡秀治日本クラウンサイト