杉良太郎が脳性麻痺とたたかう“声なき詩人”堀江菜穂子さんの言葉を歌に。「世界の中で/ありがとうの詩(うた)」で希望と温かさを!
脳性麻痺とたたかう20代の“声なき詩人”堀江菜穂子さんの言葉が歌になった。杉良太郎が「今だからこそ届けたい!」と、菜穂子さんがわずかに動く指先で紡いだ言葉を“歌”として作品化。新曲「世界の中で/ありがとうの詩(うた)」として完成させた。
菜穂子さんは1994年10月、茨城県土浦市で生まれた。現在27歳だが、出産時のトラブルで低酸素状態となり、重度の脳性まひを患ってしまったことで、体はほとんど動かせず、言葉も話せない。しかし、幼少のころから母が読み聞かせてくれた詩を“心をかいほうするためのしゅだん”として、自らも詩を書くようになり、その数は2000編を超える。
2021年5月中旬だった。まったく面識のないある漫画家から杉に「自分が挿絵に携わった詩集をお送り致します」と、菜穂子さんの詩集が送られきた。その詩集を読んだ杉は感銘を受け、彼女の詩を歌にしたいと熱望。彼女の父親の許可を得て、作品づくりが動き出したという。
楽曲を制作するにあたり、堀江菜穂子さんの「せかいのなかで」と「ありがとうのし」の2編の詩が選ばれ、その詩を元に杉が歌詞となるように作詞し、ヒットメーカー、弦哲也が作曲。大河ドラマでお馴染みの渡辺俊幸によるアレンジで、希望や心の温かさを感じる2作品「世界の中で」「ありがとうの詩(うた)」ができあがった。
杉は初めて菜穂子さんと会った時、自分と似ていると感じたという。それは堀江さんも同じだった。
筆談やボランティアの通訳を介して、杉と菜穂子さんはいろいろな会話をした。その時、堀江さんは杉に、「今日、初めて話すこと」として「自分の中には悪い自分もいて、悪いことをしたいと思っていた」と告白する。両親や周囲の期待に応えようとして、求められる詩しか自分の中から出してこなかったという。
そんな彼女に杉は答える。
「良い自分も悪い自分も菜穂ちゃん自身。ありのままの菜穂ちゃんをすべて出すことで、より輝く詩も出てくるもの。これからは遠慮しないでいろんな自分を出せばいい」
また、菜穂子さんは両親にも話してこなかった本心を杉に打ち明ける。
「自分の思ったことをすぐに受け取ってもらえず、孤独を感じることが多々あった」
そんな彼女は「杉さんも自分と同じ、孤独な人だ」と思った。
「今度から自分が孤独と感じた時には『あぁ、杉さんがいる』と思うことができる。自分にとって、今日一日は新たなスタートになる。そして杉さんと話したことが自分にとって心強い支えとなる」
杉と菜穂子さんとの交流が続く中、昨年10月下旬、「世界の中で」と「ありがとうの詩(うた)」のレコーディングが行われた。
“この広い世界の中で 私と同じ人間は 一人もいない”という歌詞で始まる「世界の中で」は、勇気と自信をもって堂々と生きていこうと訴えている。また「ありがとうの詩(うた)」は、心温まる作品。重度脳性麻痺の菜穂子さんが、いつも手元に置いているノートに「ありがとう」の言葉が書けるようになった話がベースとなっている。この“ありがとう”があなたの幸せになれたらいい。そんな堀江さんの思いが作品となった。
“声なき詩人”堀江菜穂子さんとの出会いから生まれた「世界の中で/ありがとうの詩(うた)」は1月19日に、杉良太郎の両A面シングルとして発売される。
2022年1月19日発売
“声なき詩人”の思いが歌に
杉良太郎「世界の中で/ありがとうの詩(うた)」
堀江菜穂子=著
『いきていてこそ』
寝たきりの生活を送りながら、わずかに動くゆびさきを使って「筆談」で紡がれた堀江菜穂子さんの言葉が54編収められている。詩人の谷川俊太郎は、菜穂子さんの詩によせて次のように述べている。「『はたちのひに』まで読み進めて思いました。菜穂子さんが書いたものは、詩なのに詩を超えて、生と言葉の深い結びつきに迫っていると」。
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▶詳細はサンマーク出版『いきていてこそ』特設ページへ。作品の一部を読むことができる。
https://www.sunmark.co.jp/topics/ikiteitekoso/