デビュー40周年の山川豊がバーチャル演歌。原点回帰の感動ステージ。亡くなった作詞家・里村龍一に捧ぐ大粒の涙も。
今年デビュー40周年、そして10月15日には63歳の誕生日を迎えた山川豊。昨年末に39年間所属した長良プロダクションから独立し、再出発のスタートを切ったが、新型コロナウイルス感染拡大にともない、演歌歌手の原点であるキャンペーンやコンサートがなかなか実施できない状態でいた。
そんな状況の中、40周年を原点回帰と位置づけた山川は10月16日、「山川豊デビュー40周年記念コンサート バーチャル演歌~原点回帰~」を行った。場所は都内にある業界初のライブ配信専用スタジ「BLACKBOX³」。4面大型LEDパネルと特殊照明、最新の音響機器などハイクオリティな業界初の配信専用設備を駆使して、YouTube「豊ちゃんねる」で無料生配信された。
コンサートは3部構成になっており、「40年の軌跡」と称して自らの歴史を彩った曲を歌い上げる第1部と、「家族・命・歌と歩む人生」と題して本人選曲のカバー曲を歌う第2部はYouTubeの「豊ちゃんねる」で無料配信された。そして、「40周年スペシャルバージョン」として代表曲を網羅した3部はコミュニティ型ファンクラブアプリ「Fanicon(ファニコン)」の中で山川が今回新しく立ち上げたファンクラブ「ゆたか友の会」の入会者のみに届けられた。
また、全国の老人福祉施設でも配信を展開。コロナ禍で娯楽が激減している中、少しでも笑顔と感謝の気持ちを届けたいという山川の熱い想いをつなげた。
白のジャケットで登場した山川は、まずは挨拶代わりに、デビュー曲にして大ヒット曲「函館本線」を歌った。リアルな雪景色と吹雪の中に山川が本当に佇んでいるような演出で、山川は情感たっぷりに披露した。
「たくさんの方に応援していただいて40年やって来ることができました。本当にありがとうございます。思い出を語れば尽きませんが、いい時代を過ごしてきたと思います。これからもまた一緒に新しい時代を突き進んでいければと思います」
デビュー当時の懐かしい写真を背景に初期の名曲を熱唱していく山川。40年間の懐かしいアルバムをめくるような演出だった。
中盤では、今月5日にアルコール性肝硬変のために72歳で死去した作詞家、里村龍一の作品「こころ花」「面影本線」を披露した。
「先生、ゆっくり休んでください。そして素晴らしい歌をありがとうございます」
山川は言葉を詰まらせながら故人に捧げた。バーチャルに映し出されたステージの背景に当時の思い出がフラッシュバックしたのか、山川の目には感極まった大粒の涙が光っていた。
1992年のヒット「夜桜」では、大きな桜の木がステージの背景に映し出され、風にそよぎ出したかと思うとステージ全面に桜の花びらが降り注ぐという美しさ極まる演出。最後は1990年のシングル曲「しぐれ川」で締めくくった。
YouTubeを観ている観客からも「スキな歌ばかり涙が出そう」「朝からウキウキ楽しみに待ってました」「ブラジルから応援しています!」「胸が痛くなります」などたくさんのメッセージが書き込まれていた。
第2部は1998年の大ヒット「アメリカ橋」でスタート。ステージが夕焼けの街の風景で真っ赤に染まった。
「この曲をくださった山口洋子先生も平尾昌晃先生も、すでに天国に旅立たれました。しかし歌は永遠に残ります。私の命の続く限りこの歌を大切に歌っていきます」
そう決意を語った山川は、歌手になる前からの憧れであり、今も心の師と仰ぐ五木ひろしの「あなたの灯」「倖せさがして」をギターの弾き語りで歌うと、喜納昌吉の「花」など自身が選曲したカバー曲を聴かせた。
「このコロナ禍で大変な想いをされてる方がたくさんいらっしゃると思います。今は泣いてもいつかは一緒に笑える日が必ず来るという想いを込めて歌います」と語って歌った「花」では、蕾からゆっくりと開いてゆく花の姿を床も含めたステージ全面に映し出し、幻想的な映像で観るものを魅了した。自分の大切な家族への想いを歌った吉幾三・作詞作曲による曲「我が娘へ」では、背景に愛する娘と息子との懐かしい写真が映し出された。そして最後は、美しい星空と花火を背景に、亡き母に捧げた「あの日の花火」で締めくくった。
第3部は、故郷・鳥羽の夕陽と美しい風景映像をバックに「今日という日に感謝して」からスタートし、2015年の「螢子」、2016年の「再愛」と続く。
1994年のシングル「途中下車」では美しい大平原の映像が映し出され、その中に佇み歌う山川の姿が歌詞の世界を一層深く感じさせてくれた。アップテンポの「泣かないで」では観客の「ユタカ!」の掛け声の代わりに、ビジョン全体に無数の「豊ッ!!」「ゆたか!!」「ユタカ!!」の文字が賑やかに踊っていた。
山川は「今の世の中に必要な曲だと思います。まだまだ歌い続けて行きます」と、昨年コロナ禍になってリリースしたシングル「拳」を歌った。背景にはボクシングのグローブ、サンドバッグの映像が映し出され、曲の持つ緊張感を高めていた。
コンサートの後半の定番曲「春から夏へと」に続き、「今度はコロナが終わってみんなでリアルに会いましょう」とネットの向こうのファンたちに語りかけた。
エンディングは見渡す限りの満天の星空を背景に坂本九の1963年の大ヒット曲「見上げてごらん夜の星を」で締めくくった。全42曲、3時間を超える、感動的なステージだった。
終演後、山川は心地いい疲れを感じていた。
「間違ったりもしましたが、気持ちのいい疲れです。歌う喜びを噛み締めました。これからも新しい冒険にチャレンジしていきます」
コロナ禍になり、演歌界でも配信ライブや配信イベントは、ファンとのコミュニケーションの常套手段になっているが、ここまで最新設備を駆使した配信コンサートは演歌界でも珍しい。昨年スマホデビューしたばかりの山川だが、新しいエンタテイメントの形を求めて果敢に取り組んでいく決意が見えた。41年目からの活躍にも大いに期待が持てるコンサートだった。
なお、コンサートのアーカイブ映像はFanicon内で観ることができる。
Fanicon(ファニコン)入会方法の案内
https://fanicon.net/fancommunities/3982
Fanicon(ファニコン)入会説明動画URL
https://youtu.be/hnmhxMK9M04
2021年5月12日発売
3枚組コンプリートアルバム
山川 豊『デビュー40周年記念コンプリートベスト』
デビュー40周年を記念してリリースされる豪華3枚組作品。山川豊の全シングルとレアトラック、話題曲を網羅した究極のベストアルバム。デビュー曲「函館本線」から最新曲「男の昭和挽歌」まで39曲を網羅し、「函館本線」のアンサーソング「函館本線それから」、山川豊作曲の「いのちうた」などの重要かつレアなトラックも収録。まさに山川の40年の旅路を辿る作品集となる。
収録曲 DISC 1
函館本線/放浪ごころ/酒ごころ/死なず花/はぐれ雲/流氷子守歌/ときめきワルツ/愛待草より/港酒場/こころ花/北斗星/しぐれ川/夜桜/きずな/途中下車/釧路の夜
収録曲 DISC 2
面影本線/酒は男の子守歌/酒場のろくでなし/アメリカ橋/男のららばい/雪舞橋/逢えてよかった/泣かないで/わかれ雪/港のブルース/哀愁の街に霧が降る/海峡本線/友情-とも-/惜別/あの日の花火/函館本線 それから
収録曲 DISC 3
ニューヨーク物語り/霧雨のシアトル/我が娘へ/ナイアガラ・フォールズ/優しい女に会いたい夜は/螢子/再愛/黄昏/今日という日に感謝して/拳/男の昭和挽歌/いのちうた/吹雪譜
profile
山川豊(やまかわ・ゆたか)
1958年10月15日、三重県鳥羽市生まれ。1981年2月5日「函館本線」で東芝EMI(現ユニバーサルミュージック)からデビュー。1986年「ときめきワルツ」でNHK紅白歌合戦初出場。以降紅白歌合戦へは11回の出場経験がある。1998年発売の「アメリカ橋」が大ヒットを記録、その後発売となった「ニューヨーク物語り」「霧雨のシアトル」のアメリカ3部作が話題となる。デビュー年の各新人賞のほか、古賀政男記念音楽大賞、日本歌謡大賞放送音楽賞、日本作詩大賞など、数多くの音楽賞を受賞。演歌歌手 鳥羽一郎の実の弟。
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山川豊YouTube「豊ちゃんねる」