大月みやこが国立劇場で初コンサート。日本伝統芸能の殿堂で、「歌ひとすじ~出逢いに感謝~」と全25曲を披露
大月みやこが9月14日、東京・千代田区の国立劇場 大劇場においてスペシャルコンサートを開催、ファン約800名が会場に詰め掛けた。同コンサートは昨年9月に開催する予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け急きょ延期となっていた。そのためソーシャルディスタンスを保ちながらではありが、大月にとって約一年ぶりの有観客コンサートとなった。
国立劇場は、歌舞伎・日本舞踊をはじめとする日本の伝統芸能振興の趣旨で1969年(昭和44年)に開館され、その長い歴史の中でも、歌謡曲・演歌のジャンルでの公演は稀である。大月本人も「日本文化の殿堂で、愛すべき日本の歌謡曲をお届け出来ることは、大変光栄なこと、今日までの歌の道、その集大成と感じています」と語った。
第一景のオープニングは、「女の舞」(平成元年/1989年)から。一途な女ごころを、薪能(たきぎのう)の炎に喩えた名曲で、琴・鼓・太鼓・篠笛・三味線をフィーチャーし、篝火(かがりび)が映し出されたスクリーンをバックに歌唱。曲の途中で、踊り手と共に大月自身も、幽玄な能の舞いを披露するなど国立劇場ならではの幻想的で壮大な幕開けとなった。
第二景は、幼少の頃、習い事で始めた童謡・唱歌のメドレーや、デビュー当時、前座歌手として全国を共にした春日八郎や三橋美智也の代表曲をメドレーで披露した。
「当時、大スターだったお二人のステージを舞台袖から見せていただいたあの経験が私にとって財産であり宝物です」
そう語る大月は、1964年のデビュー曲「母恋三味線」に続き、翌年発売の「ひなげし小唄」を、当時着用したという懐かしい着物姿で歌唱した(※一番上の写真)。
第三景は、大月のもう一つの魅力でもあるムードある歌謡曲の世界が展開された。「リサイタル」「愛にゆれて…」「愛いつまでも~Forever Love~」など大人の歌謡曲を、純白のドレスで瑞々しく披露。そして、また一つ新鮮な世界、語りかけるような、大好評の新曲「夢のつづきを」を歌唱し第三景を締めくくった。
第四景は平成元年から約20年間、迫真の演技で大好評を博した座長公演のお芝居の世界を再現だ。
大月は「主人公は、皆、いじらしく、ひたむきに生きる女性」と語り、川端康成原作「雪国」、泉 鏡花原作・婦系図「お蔦ものがたり」をひとり芝居で魅せた。シンプルな演出ながら、胸に迫る演技で観客を惹きつける。
そして最終、第五景は、大月の代表曲を一気に歌っていく。ご存じ「女の港」からスタートした。作詞・星野哲郎、作曲・船村徹による同曲は大月にとって20年目の作品。1986年には同曲でNHK紅白歌合戦に初出場した。
「一途で健気な女性を描いたこの曲で、大月の“おんなを歌う”歌世界を作っていただきましたね」
大月は、そこから代表曲を届けていく。「氷雪の岬」「乱れ花」「夢日記」「いのちの海峡」「女の駅」、そして第34回日本レコード大賞・大賞受賞曲「白い海峡」と続き、時代を飾った思い出深い代表曲を一気に披露する。
伸びやかで艶のある歌声で観客を魅了した大月は、「あなたと出逢えたから今日まで歌ってこられた」と感謝し、大月自身のテーマとも言えるバラード「未来(あした)への歌」でフィナーレを迎え、全25曲を歌唱した圧巻の集大成コンサートは幕を閉じた。
なお、この公演の模様は、来年の1月にDVDとして発売予定だ。コロナ感染の影響などで会場に足を運べなかったファンには待望の作品となる。今年デビュー58年目を迎え、大月のますます磨きがかかるその歌唱力と表現力、その圧倒的な存在感は、今後も目が離せない。
2021年4月21日発売
大月みやこ「夢のつづきを」
「夢のつづきを」は作曲家・徳久広司氏とのタッグによりムード溢れる歌謡曲”大人のラブストーリー”。語りかけるような淡々とした歌唱のなかに溢れ出る哀愁が感じられる。思わず口ずさんでしまう大月みやこの新しい魅力が満載の作品。