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浅田あつこ

【インタビュー】浅田あつこが紡ぐ、時を超えた母への手紙。心動かされる新曲『伝えたくて』のメッセージ

昨年、デビュー30周年という大きな節目を迎えた浅田あつこ。記念曲「道行き」を携え、上海での日中友好コンサートを成功させるなど、精力的な活動で充実の一年を走り抜けた。そんな彼女が31年目の新たな一歩として届ける新曲が『伝えたくて』だ。彼女が杉本眞人作品を歌うのは今回が初。これまでのイメージを鮮やかに更新するフォークタッチの優しい歌謡曲は、すべての人の心の琴線に触れる珠玉の一曲となる。

浅田あつこ

30周年を終え、次なる一歩へ

――昨年はデビュー30周年、おめでとうございます。どんな一年でしたか?

浅田 ありがとうございます! デビュー30周年の記念曲「道行き」がご縁で、上海で開催された日中友好のコンサート(大阪市-上海市「友好都市」50周年コンサート)に参加させていただいたり、大阪では落語家の桂春蝶さんとのコラボイベントがあったり。本当に内容の濃い、いろんなことが詰まった一年でした。振り返ってみれば「ああ、もう30周年か」と思いますけど、「まだまだこれからや!」っていう気持ちも大きいですね。なにより、30年間ずっと応援し続けてくれたファンの皆さん、そしてレコード会社の皆さんへの感謝を改めて感じた、本当に良い30周年でした。

――ライブではアクシデントもあったとか?

浅田 そうなんです! 6月の新曲発表ライブですね。着替えようとしたら衣裳のチャックが壊れて脱げなくなっちゃって(笑)。コールがかかってるのに「開かへん!」って。結局そのままステージに出て、「(黒のドレスをみせて)ごめーん! 本当はこれに着替えたかってんけど、無理やったー!」ってみんなに謝りました(笑)。私、チャックの事件、めっちゃ多いんですよ。昔、日本作詩大賞の時もドレスのチャックが潰れて、開かないようにマネージャーに後ろから縫ってもらったこともあります。でも、そういうのも全部含めて思い出ですね。もうネタにして取り戻してます(笑)。

浅田あつこ

まさに相思相愛から生まれた新曲『伝えたくて』

アコースティックギターの優しい音色で幕を開ける、フォークタッチの歌謡曲。亡き母への変わらぬ愛情を、自らも母となった主人公が優しく語りかける。杉本眞人氏による温かく親しみやすいメロディーと、浅田あつこの力みを抜いた繊細な歌声が見事に融合。彼女の新たな一面を垣間見せる一曲。派手な装飾を排し、言葉と歌の力をストレートに伝えるサウンドが胸に沁みる。

作詞は『風の盆恋歌』などで知られる朝比奈京仔氏が担当。歌詞は一見するとシンプルな「亡き母への手紙」のようだが、その行間には、時間が育んだ深い愛情と、命のつながりが繊細に、そして豊かに描かれている。過去から現在、そして未来へと続く、母娘の物語となっている。

――そして31年目の新曲は、待望の杉本眞人先生による作品ですね。

浅田 そうなんです。以前から杉本先生とはお仕事でご一緒するたびに「あっちゃんの歌、書きたいな、俺」って言ってくださってたんです。私もずっと先生とご一緒できたらなと思っていたので、今回、「せーの、ほい!」って感じで気持ちが合致したのがすごくうれしくて。ディレクターさんに「次の曲は杉本先生にお願いしたいです」とお伝えしたら、先生も「待ってたで!」と言ってくださったみたいで。まさに「あっちゃんのために書いた」と言っていただける、最高の作品になりました。

浅田あつこ

――楽曲を受け取った時の第一印象はいかがでしたか?

浅田 もう、先生の世界やなあって。ただ、本当に初めてのタッチの作品だったので、「これをどういう風に歌ったらええんやろか」って、すごく考えましたね。先生からも「泣けるぜー!」って言われたんですけど、本当にその通りでした。

――歌の世界は普遍的なテーマですが、人々の心の奥底にある、温かくも切ない感情の機微をすくい上げてくれますね。

浅田 私の母も12、3年前に亡くなっているので、歌詞の世界観にはすごく共感します。特にサビの「あゝ 逢えないあなたに逢いたくて」っていうところは、もう「逢いたいねんもん!」って気持ちが溢れてきて。練習中も何回か自分で歌いながら泣いてしまいましたね。

――レコーディングはどのように進められたのですか?

浅田 あんまりガッツリ練習するというよりは、この歌の主人公の気持ちを自分の中に入れてレコーディングに臨みました。ただ歌うだけじゃなくて、語るというか、ボソボソっとした感じも良いんじゃないかなって。先生からも「泣きすぎてもあかんし、でも抑える部分は抑えて」とアドバイスをいただいて。歌詞に「嫁いで五年 やっとです」とありますけど、この「5年」の月日にも、この主人公はいろいろ悩んだんやろなとか、そういう行間も感じながら、何度も試しながら歌わせていただきました。

浅田あつこ

粋でいなせなカップリング『柳橋ボレロ』

表題曲から一転、小気味よいリズムと粋な歌詞が光るリズム演歌。ボレロのリズムを基調に、役者と芸者の恋模様を艶やかに、そしてコミカルに描く。浅田あつこのパワフルで張りのある歌声が炸裂し、聴いているだけで体が動き出すような楽しさと、啖呵を切るような痛快なサビが魅力的な一曲となっている。

――一転してカップリングの『柳橋ボレロ』は、かつて花町として栄えた柳橋(東京・台東区)にあるを舞台にした、粋で小気味よいリズム演歌。浅田あつこさんの真骨頂を感じました。

浅田 これはもう「いなせな感じで!」って杉本先生もおっしゃって(笑)。聴いてるだけで体が弾むような、歌っててすごく楽しい曲です。多分、ファンの方もこういうノリの良い曲は飛びついてくれるんちゃうかなって思います。サビの「あゝ 女だ男だうるさいねぇ」っていうところは、キリっとした女性をイメージして、1番と3番はちゃんと歌って、2番だけちょっとセリフっぽく、パキッと歌い方を変えてみたり。そういう遊び心も入れさせていただきました。

歌手・浅田あつこの在り方

――今回の2曲もそうですが、30年間、非常に幅広い楽曲を歌ってこられました。ご自身の希望でもあるのですか?

浅田 私はどっちかというと、いろんなものにチャレンジしたいタイプなんです。「浅田あつこはこういう路線」って決めるより、いろんなジャンルに対応できる自分でいたい。いただく楽曲も本当にいろんなものが来るので、毎回「面白いな」って。同じような歌ばっかりやと、お客さんも自分も飽きてしまうやろうしね。いろんな歌を歌わせていただけることが、私の財産やと思っています。

――プライベートでもチャレンジ旺盛なんですか。

浅田 そうなんです。何にでも興味があって、その時々で「これやりたい!」ってビビッと来たものに挑戦しています。ギターとか、ミシンでポーチ作ったりとか(笑)。やってみて「あかんわ、これ!」ってなったらすぐやめるんですけど、とりあえずやってみる。昔、母に「やるんやったら最後までやりなさい」と言われてたので、空手もちゃんと黒帯を取るまでやりましたし、書道も師範のお免状をいただくまで続けました。やると決めたら、ある程度までは諦めずにやるタイプですね。

――料理もお好きで、SNS(Instagram)にアップされる“浅田食堂”が人気ですね。

浅田 料理は小学生の時にほうれん草の炒め物を作ったら、母に「美味しい!」って褒められたのがきっかけなんです。私、褒められて伸びるタイプなんで(笑)。今では食器集めも趣味で、家には“浅田食堂”が開けるくらい食器がありますよ。後輩の歌手の子たちも「食堂、開けてください!」って遊びに来てくれます。品数多く作るのが好きで、冷蔵庫と冷凍庫にストックがいっぱいです。いつリクエストされても「OK!」って言えるように(笑)。

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人生を楽しむ力と、未来への想い

――お話を伺っていると、本当に人生を楽しんでいらっしゃるのが伝わってきます。

浅田 楽しいのが一番やと思ってるので。もちろん、悲しいことや辛いこともありますけど、楽しいことがあるからそういうのも吹き飛ぶし。何か危機的な状況になっても「なんとかなる!」って思うタイプなんです。この間も靴の底がパカーンって開いちゃったんですけど、目の前にコンビニがあって、アロンアルフアでくっつけてことなきを得たりとか(笑)。なんとかなる精神で生きてるのかもしれないですね。

――31年目を本格的に走り出すことになりますが、40周年、50周年に向けて、どんな歌手でありたいですか?

浅田 うーん、大きな目標とかはあんまりないんですけど、その時々で「楽しい」と思えることを大切にしていきたいですね。やっぱり健康第一で、ステージに立てることが一番の幸せ。ステージに立つと「ああ、ここが自分の居場所やな」って思うんです。緊張もするけど、その緊張感が気持ちいい。これからも、いろんなことに興味を持って、人生を楽しみながら歌い続けていけたら最高ですね。

――最後にメッセージをお願いします。

浅田 今回の新曲は、皆さんが聴いて「意外やな!」って驚いてくれるんじゃないかなと思います。だからこそ、ファンの皆さんの驚く顔を想像するのも楽しみなんです。ぜひ、優しさと力強さ、まったく違うタイプの2曲を楽しんでください。

 


2025年9月3日発売
浅田あつこ「伝えたくて」
浅田あつこ

「伝えたくて」
作詞/朝比奈京仔 作曲/杉本眞人 編曲/猪股義周
c/w「柳橋ボレロ」
作詞/朝比奈京仔 作曲/杉本眞人 編曲/猪股義周
徳間ジャパンコミュニケーションズ  TKCA-91644 ¥1,500(税込)

【Amazon】浅田あつこ「伝えたくて」


浅田あつこ

Profile
浅田あつこ
大阪府羽曳野市出身。1994年10月「想い花」でデビュー。1995年「第2回演歌ルネッサンス新人歌謡大賞」でグランプリを受賞し、一躍注目を浴びる。故郷・大阪をテーマにした「河内もの」で人気を博す一方、近年はフォークタッチの楽曲に挑戦するなど、円熟味とともに新たな境地を拓き続けている。趣味は料理、家庭菜園など多岐にわたる。