
【インタビュー】”和”を遊び尽くす伍代夏子の心意気。「しゃんしゃん牡丹」は痛快なヒロイン像で魅せる恋物語
「立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花」――。
古くから日本の女性の美しさを讃えるこの言葉を、現代を生きる粋な女性の心意気として歌い上げた、伍代夏子の新曲「しゃんしゃん牡丹」。作詩に歌人の林あまり、作編曲に数々のヒット曲を手掛ける若草恵を迎え、これまでの伍代夏子のイメージを鮮やかに更新する「令和の和歌謡」が誕生した。
文=藤井利香
イメージは「女はぐれ雲」!? 芯は強く、見た目は“でろっと”
一度聴いたら忘れられない、強烈なフレーズで幕を開けるこの曲は、凛とした強さと艶やかさを兼ね備えた女性の心意気を歌い上げた、痛快な作品。
「立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花」という有名な言葉になぞらえ、周囲の男たちから美しい花のように見つめられる主人公。しかし彼女は、ただ愛でられるだけの存在ではないと、小気味よく言い放つ。
新曲「しゃんしゃん牡丹」は、伍代夏子が長年築き上げてきたイメージを鮮やかに裏切り、新たなファン層をも魅了するだろう。

――まず新曲「しゃんしゃん牡丹」についてですが、制作にあたってどのようなテーマで発注されたのでしょうか?
伍代 今回は和楽器を使って、和をテーマにお願いしたいと発注しました。ただ、がちがちの日本調というわけではなくて、あくまで「和風」な感じで、と。そうしたら作詩の林あまり先生から3篇ほど候補をいただき、この「しゃんしゃん牡丹」の詩の世界が一番面白いなと思ったんです。ちょっと強気な女性が主人公なんですけどね。
――具体的にどんなイメージなんでしょう。
伍代 パッと浮かんだのが、昔大好きだったジョージ秋山さんの漫画『浮浪雲』なんです。あのチャランポランな風情で、てれんこてれんこ歩いてるんだけど、世直ししたり、実は誰よりも物事の本質を見抜いていて、時々風刺の効いたひと言が言えたり。その主人公の女版みたいなイメージですね。
――花魁道中で見せるような隙のない女性ではないんですね。
伍代 そうなの。芯は通っているけど見た目はでろっと(笑)。高貴で、あんたたちには目もくれない、ではないんです。遊び仲間ではあって気になる男性もいろいろいるんだけど、強がって「あたいはなびかないよ」と、湯あがりで丸めた髪を触りながら歩いているような雰囲気ですね。

アンティーク風な着物を上品に着こなす伍代夏子。
浴衣に下駄でカランコロン。歌詩から広がる痛快な世界観
――だからジャケット写真は、印象的な、大胆な柄のお着物なんですね。
伍代 これまであまり着なかったようなちょっとアンティーク風な、クラシックな牡丹が描かれた生地を探してもらいました。髪型も歌の主人公のイメージで、かっちりさせない感じでお願いしました。
――江戸の粋な女性の姿が目に浮かびます。
伍代 その女性がてれんこと歩いてくるんだけど、私の中では最初に西部劇の決闘シーンが浮かんだんですよ。パタンパタンと開く酒場のドアからカウボーイが出てきて、砂ぼこりが舞う道で対峙するでしょう? それを周りの人たちが鈴なりになって固唾をのんで見守っている。その真ん中を主人公が下駄をカランコロンと鳴らしながら、ふん、てな感じで歩いていく。西部劇というのはあくまでわかりやすさで言っているだけで、本来は時代劇の太秦(東映京都撮影所)で見る風景ですよね。長屋があって、柳があって、果たし合いの2人が双方からゆっくりと歩いてくる。“決闘シーン”というのは、遠巻きにみんなが見守っているという詩から私が勝手に連想したことなんですが。

――林先生のこだわりが詩にたくさん散りばめられていますね。サビの“シャンだ、シャンだね しゃんしゃんと 牡丹惚れたか 牡丹惚れたか 鈴が鳴る”というリズミカルなフレーズも印象的です。
伍代 “シャンだ、シャンだね”という歌詩は、「シャン シャン」歩くということと、「きれいだね きれいだね」という意味も兼ねているんです。ここと、サビの“花じゃないんだ、花じゃないんだ、サテナ あたしは女”がまたポイントで、遊び心がある詩がすごくいいですね。
――歌い方にも、その遊び心は意識されましたか?
伍代 “サテナ”という決め台詞はいくつか歌い方を試して、少し古風に、歌舞伎のような芝居がかった言い回しを選びました。この曲は真面目に歌うというよりは、主人公になりきって遊ぶ感覚が大事。だからカラオケで歌ってくださる方も、ぜひ照れずに思いっきり役に入って“サテナ”!って言っていただきたいですね。適当さがすごく合うのよ(笑)。
「はじめ人間ギャートルズ」の世界? 時空を超えた愛の歌
表題曲とは打って変わって、カップリングの「千年万葉の恋歌」は、壮大なスケールで描かれる。黄金色の稲穂が揺れる故郷の風景から始まり、歌は時空を超えた魂の結びつきへと広がっていく。まるで歴史絵巻だ。
――カップリングの「千年万葉の恋歌」はほんのりかわいらしさが漂い、日本の美しい自然、命のつながり、そして運命の赤い糸への感謝が、壮麗なメロディーに乗せて歌い上げられています。
伍代 これは難しかったですね。演歌にはない音階が使われていて、最初はメロディーを覚えるのに必死で。この曲の世界観は、日本という国というより、もっと大きな、地球や命の営みといったスケールを感じました。まるで『はじめ人間ギャートルズ』(テレビアニメ/原作:園山俊二)の世界のように(笑)、太陽と共に目覚め、父と母、そして私へと受け継がれていく魂の物語・・・。だからレコーディングでは、言葉の意味を深く考えすぎず、音に乗って流れるように歌うことを心がけました。カラオケの場合も、言葉それぞれに気持ちを込めようとせず、曲を楽しむというノリがいいのではないかと思います。

歌と遊びで「和」を堪能。伍代夏子が届ける「和心祭」とは?
――新曲のリリースは7月25日の「伍代夏子の日」(※)に合わせて、ということですが、この日に開催される「和心祭」についてもお聞かせください。
伍代 「和心祭」は、ディナーショーとはまったく違って、一言で言うと「和文化に触れるお祭り」。私が歌うのを座って聴いていただくだけでなく、お客さま自身が主役になって会場を自由に歩き回り、さまざまな「和」に触れていただく、そういう空間を目指しています。昨年はけん玉ブースをつくったり、芸者さんを呼んでお座敷遊びを体験していただいたり、いろいろ企画しました。日本の伝統文化って、本当に奥が深くて素晴らしいものばかりなんです。でも今の時代、なかなか触れる機会が少ないですよね。職人さんの技と心が込められた素晴らしい品がたくさんあって、その魅力をただ見るだけでなく、実際に触れて感じてほしい。ですので、皆さんも浴衣や甚平、お着物でお越しいただきたいと思っています。この日くらいはみんなで和装を楽しもうよ、っていう。着物で来てくださった方にはプレゼントも用意したりして(笑)。
――歌のみならず、こういった企画すること自体をいつも楽しまれている印象で、ステキです。
伍代 ついつい凝ってしまいますし、準備に時間もかかることなのですが、皆さんが喜んでくだされば本当にうれしく思います。

写真家・伍代夏子として-撮りたいのは北島三郎御大の“真剣な表情”
――最後にプライベートな話題ですが、いつも素敵な写真をInstagramにアップされてます。今年1月には保護犬を被写体にした写真展を開催されましたね。
伍代 相変わらず、出かける時にはカメラを必ず手にして、写真を撮り続けています。保護犬たちや、以前からの花鳥風月などですね。
――以前、北島三郎さんをカメラに収めたいとおっしゃっていましたが・・・。
伍代 それがね、なかなか。北島さんにお願いできる機会がなくて・・・。単なるポートレートではなくて、劇場の楽屋とかお芝居の稽古中とか、北島さんの真剣な表情を撮らせていただきたいんですけど、なかなか難しいかもしれないですね。もともと人物写真は撮ってこなかったんですが、でも北島さんだけは特別。あきらめないでいつか・・・と、淡い期待を抱いています(笑)。
※2023年、一般社団法人 日本記念日協会より7月25日(725=なつこ)が「伍代夏子の日」として認定・登録された。「より多くの方に、着物や演歌といった日本が誇る美しい和文化を身近に親しんでもらいたい」との願いを込め、伍代夏子は和文化伝承の場として「和心祭~和気愛愛~」を企画・開催している。
【Side Story】作家が引き出す「伍代夏子の新たな魅力」
今作で伍代夏子の新たな一面を引き出したのが、和言葉の美しさに定評のある歌人林あまり氏と作編曲家の若草恵氏だ。制作陣は、伍代夏子が持つ「粋」と「品」、そして「芯の強さ」に着目。ただ美しいだけの女性ではなく、遊び心と強さを併せ持つ、現代的な女性像を描き出すことを目指したという。
また、カップリング「千年万葉の恋歌」を手掛けた手使海(てしかい)ユトロ氏は、かつて人気番組『世界ウルルン滞在記』の音楽を担当していたことでも知られる。壮大な世界観を描き出す彼の音楽と、伍代夏子の深く温かい歌声が融合し、時空を超えた普遍的な愛の物語が生まれた。
伍代は、今回の制作陣について「私の知らない私を引き出してくださった」と全幅の信頼を寄せる。ベテランでありながら、常に新しい表現に挑戦し続ける彼女の姿勢こそ、長年トップランナーであり続ける理由なのだろう。
2025年7月23日発売
伍代夏子「しゃんしゃん牡丹」

「しゃんしゃん牡丹」
作詩/林あまり 作曲/若草 恵 編曲/若草 恵
c/w「千年万葉の恋歌」
作詩/朝倉 翔 作曲/手使海ユトロ 編曲/手使海ユトロ
ソニー・ミュージックレーベルズ MHCL-3139 ¥1,600(税込)
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