真木ことみが歌う、包み込むような女性の強さと覚悟~新曲「天の糸」~
真木ことみの新曲は、どうにも断ち切ることのできない一途で強い女の運命の愛を鮮烈な言葉で書き綴った「天の糸」。来年デビュー30周年という大きな節目を迎える真木の、新しい魅力を引き出す意欲作だ。「あゝ女心は あゝ怖いもの」。その深い世界観を、初めて真木の作品を手がけた弦哲也氏の強烈かつ爽やかなメロディーが彩る。
「いい楽器を持っているね」。弦先生の言葉に感無量
Q 今年の勝負曲「天の糸」は真木さんにとって40作品目となりますね。とても美しいタイトルですがどのような作品でしょうか。
真木 私、来年デビュー30周年なんです。なので、今年は“プレ30周年”でございます(笑)。そんな時にいただいたこの曲は、まずタイトル綺麗ですよね。「天の糸」とは、霧のように細かい雨の比喩。でも私には、空から降る雨そのままの意味というよりも、この主人公の“心の声”という意味の方が強く感じるんですね。
転の糸です こぬか雨
今夜はやけに まとわりついて
あんな男は 別れなさいな
言って聞かせてくれるけど
(「天の糸」歌詞より)
真木 どうしようもない人で別れたほうがいいと自分でもわかっているけれども別れられない、そういった心の揺れを「天の糸」である雨が諭してくれているというか。作詞してくださった朝比奈京仔先生とはこれまで何作かご縁があるんですけれども、読めば読むほど色々なことを考えさせてくれる、想像が膨らむ詞です。
Q 特に、歌詞の中で印象的なところはありますか。
真木 一番最後に、「鬼と仏を抱きしめて 堕ちる覚悟で 見上げた空の 雨を呑み込む」という詞があるんですけれど、“何があろうとこの人と一緒に”、という強い覚悟を感じられて、いいことも悪いことも全部承知の上でという女性の包み込むような強さがすごくかっこいいなと思いましたね。初めて聴いた時は、「鬼」や「仏」という言葉が私の中にまず飛び込んできてビックリしたのと同時に興味に変わって、「早く歌いたい!」と歌うのがすごく楽しみになりました。
Q この二人の関係は夫婦なのか、いわゆる“道ならぬ恋”なのか……。真木さん的には歌われるうえでどう解釈されていますか。
真木 う〜ん、夫婦なのか“道ならぬ恋”なのか、実はどういう恋なのかは私は限定していません。朝比奈先生にも二人はどのような関係なのか?とうかがったんですけれど、聴いた人それぞれの考え方があるからと。ただ先生のお話は奥が深くて、時代設定は「江戸時代の頃」とおっしゃっていましたね。江戸時代でいうならば、男性は賭けごとが好きなお酒飲みで、というとにかくどうしようもない人。別れたほうがいいと自分でもわかっているくせに、もうひとりの自分が仏の声で「それでも一緒にいたい」とささやく、みたいな。どんな関係であったとしても、女性は苦労することが目に見えているけどそれでも突き進むという強さを持った人ですね。
Q そして今回は、作曲が巨匠・弦哲也先生。情念のドロドロした曲なのかなと思っていたのですが、全然そうじゃなくてとても爽やかで普通の演歌ではないメロディーに感じました。
真木 今回、初めて弦先生に書いていただきました!これまで面識はありましたけれどご挨拶程度だったので、どんな先生なのかなととてもワクワクしました。私の中では、弦先生はもちろん代表作の「天城越え」など演歌もたくさん書かれていらっしゃるんだけれども、歌謡曲の先生というイメージだったんですね。だから歌謡曲タイプの曲になるのかなと思っていたんですけれど、この曲は歌謡曲ぽくもあるけれどもちょっと演歌な部分も感じるところがあって、絶妙に融合された楽曲だなと思います。
Q 弦先生から何かアドバイスなどはありましたか?
真木 最初にキー合わせで先生の事務所におうかがいした時に、「低音の部分を生かした感じでキー選びをしたほうがいいね」とすごく私の声を評価してくださって。「その声は子供の頃からなの?」「いい楽器を持っているね」って……!とってもとってもうれしかったです。レコーディングではひと言、「淡々と優しく歌ってくれればいいから」と、それだけであとは細かい部分については一切言われなかったんですね。逆にそれが不安になったんですけれど、言われないことが悪いことじゃないなと思って無事にレコーディングを終えました。とても自然な感じで歌える曲で、大満足のいく作品ができました。
Q 最後に、来年の30周年に向けての意気込みを聞かせてください。
真木 昨年から続くコロナ禍でなかなか思うような活動もできていませんし、SNSなどのネットも私はあまり得意ではないので、いざ動こうと思っても動けないでいるのが現状なのですが、今こうして新曲を出させていただけることがとてもありがたいですし、それだけでも救われているような感じがしています。来年は30周年という大きな節目の年で、やはり今まで通りコンサートもやりたいという思いはあります。たくさんのイベントが延期がまた延期になって、と先が全くどうなるか見えない状況ですけれど、規模は小さくなったとしても「皆様のおかげでここまで続けることができました」という感謝の気持ちや、30年歌ってきた私の今の姿も観ていただきたいと思っています。できる限り頑張って開催したいと思っているので、その時はぜひ足を運んでくださったらうれしいです。
2021年10月6日発売
真木ことみ「天の糸」
Profile
真木ことみ(まき・ことみ)
6月29日、神奈川県生まれ。歌好きの両親の影響で音楽への興味を持つ。初めて出場したカラオケ大会でスカウトされる。1993年「橋」で歌手デビューを果たす。力強い低音を生かした男唄を得意としているが、ポップスやフォーク、その他どんなジャンルも表情豊かに歌いこなす歌唱力で人気を集めている。デビュー当時より真木の応援団長は、元・巨人の中畑清氏が務めており、二人は1995年にデュエット曲「ときめいて乾杯」をリリースしている(アルバム「演歌三昧」に収録)。来年にはデビュー30周年を迎える。