【観戦記追加】いきなり主役に抜擢! 岩佐美咲がダンスとコメディーと演歌が満載のミュージカルに初挑戦。
岩佐美咲が主演するミュージカル公演「演歌ミュージカル『明日に唄えば~清き一曲お願いします~』」が3月26日、東京・池袋の東京芸術劇場シアターウエストで開幕した。
女性アイドルグループ、AKB48でデビュー(2016年に卒業)した岩佐は、2012年2月に「無人駅」でソロデビューして今年で丸10年を迎えた。昨年10月には新曲「アキラ」をリリースし、ロングヒット中だが、今回、新しい挑戦としてミュージカルの主役を演じる。同ミュージカルは今月30日まで全7回公演を予定している。
「演歌ミュージカル『明日に唄えば~清き一曲お願いします~』」(脚本・吉井三奈子、演出・おおたけこういち)は、1979年に俳優・三宅裕司を中心に旗揚げされ、いまも演劇界の第一線で活躍中の「劇団スーパー・エキセントリック・シアター」の最新作。「演歌×選挙」がテーマの新作ミュージカルだ。
演歌は、自由民権運動の時代に自身の主張を歌に託した「演説歌」が誕生のきっかけになったと言われているが、同最新作では、選挙という題材を演歌の名曲に載せ、ダンスとコメディー、演歌満載の日本風ミュージカルに仕上げた。そのオープニング曲には、岩佐の第5弾シングル「ごめんね東京」が使われる。
岩佐は「元演歌歌手・梅川千春」の役を演じ、まったく売れずに歌手を引退し、故郷に戻ってくるところから物語は始まる。親の勧めで古参政治家・根来川の事務所にバイト勤務する中、選挙管理委員会の風太と出会い、彼を通して町が抱えている問題を知ることに。そして祭りの日、のど自慢大会が開かれ、根来川の命令で千春が歌うことになるのだが、自身の歌で盛り上がる観客の笑顔に感動した千春は、歌の素晴らしさを再認識する。だが、その祭も根来川が進める再開発の影響でなくなる可能性が高いことを知り、千春は選挙に出馬することを宣言する・・・。
相手役の選挙管理委員・風太役を百名ヒロキ、ライバルとなる古参政治家・根来川役をモト冬樹が演じ、その脇を丸山優子、立川ユカ子、白井美貴、渋谷渉大流ら劇団スーパー・エキセントリック・シアターのメンバーが固める。
ミュージカルは初めての出演で、しかもいきなり主演という大役にチャレンジすることになった岩佐だが、AKB48に加入する前からダンスレッスンに通い、演歌歌手でソロデビュー後は数々の舞台公演で芝居も演じてきたという経験の持ち主だけに、まさに“はまり役”といえた。
この日、舞台初日の本番前に取材会が行われ、岩佐は「今回のミュージカルの出演が決まったときは、お芝居の経験は、まわりの皆さんと比べると少ないので、自分に務まるのかという不安はあったのですが、共演の皆さんに助けていただきながら何とか今日を迎えることができました。昨日この劇場に入ってからは、頑張ることでいっぱい、いっぱいだったところから楽しみだなという実感に変わって、お客さまがいらっしゃる姿が想像できて、また新しい私を見ていただけるように一公演、一公演、大事に演じたいなと思っています」と意欲満々だった。
ミュージカルは初めてだが、「お芝居のときはお客さまの顔は意識することはできないのですが、歌のシーンでは、歌う曲が演歌ですし、自然と客席のほうに目がいくので、何か不思議な感覚がします。私が扮する千春はデビューして10年間、演歌歌手をやり、私もソロデビューして丸々10年やらせていますし、性格も似ていて、すごく自分と重なる部分があって、お芝居をしながら千春でもあり、私でもあるような感覚です。選挙がテーマになっていますが、改めて政治とか選挙を考えるいいきっかけになっていますし、ここで学んだことが今後に生かせるのでは」と話していた。
モト冬樹との共演も初めてで、「初めてお会いするときは緊張しましたが、すごく優しくて気さくな方で、お芝居に関してもいろいろとアドバイスしてくださいます」と笑顔を見せていた。
なお、岩佐は4月6日に、東京都・西新井文化ホールにて行われる「長良グループ 夜桜演歌まつり」に出演を予定している。
演歌ミュージカル「明日に唄えば~清き一曲お願いします~」観覧記
演歌と選挙をテーマに、歌と踊りで紡ぐ異色の”演歌ミュージカル”が誕生した。三宅裕司が主宰する劇団スーパー・エキセントリック・シアターの最新作だが、演歌歌手の夢破れて故郷に帰ってきたヒロイン・千春を岩佐美咲が体当たりで演じた。
舞台は、岩佐が自身のオリジナル曲「ごめんね東京」を、トラックのライトを浴びて歌い幕開けするが、この時の岩佐の歌唱は、千春が東京で10年間、演歌歌手として誠実に歌い続けていたことや、完全には消えない歌への未練も想像させ、主役の面目躍如。以後、物語は、千春こと岩佐が歌うシーンで転換し進行していく印象だ。
この物語は、演歌が自由民権運動の時代に自身の主張を歌に託した「演説歌」が誕生のきっかけと言われていることに着想を得ているが、劇中の随所に演歌がながれ、過疎化と再開発に揺れる田舎町で懸命に生きる登場人物達がそれぞれの心情を乗せて歌う。
それこそがミュージカルといえばそうなのだが、”演歌”に特化すると、曲によって、茶の間と一気に地続きになったり、歌謡ショーのような趣とゴージャス感が生まれる等、思いのほか新鮮。水前寺清子の「いっぽんどっこの唄」や、新沼謙治の「嫁にこないか」、島倉千代子の「人生いろいろ」等々。耳なじみのある曲を脇を固める面々がどのシチュエーションで、どんなふうに歌って踊るか大いに楽しめた。
後半の物語の軸になるのは千春の選挙活動。”選挙”というと堅苦しい印象を抱くが、飛び入り参加した夏祭りで「人生一路」を歌い、皆が喜ぶ様子に歌の力を実感したとことから町会議員への出馬を決意。街に商業施設が誘致されたら商店街は経営が厳しくなり、そうなるとその商店街が主催する”夏祭り”はなくなってしまうかもしれない。当初はそんなシンプルな思いからの出馬だったが、トラメガを乗せて自転車で行脚し妨害や嫌がらせを受けながらも、次第に支援者を増やし、歌の力も実感していく様子を岩佐が等身大で演じ、歌い、千春への共感の思いが深まっていく。
どんな時も千春を温かく見守る両親はじめ、鉄面皮の秘書、シングルマザーの先輩、町長、商店街の面々と、千春を取り巻く街の人々は個性にあふれ、演じる役者陣も芸達者ぞろいだった。中でも、演歌歌手時代の千春のファンである風太を演じる百名ヒロキは、”痛い”ファンぶりで爆笑させつつ、劇中でヒーローショーでアクションを披露。選挙管理委員という立場もあり、次第に頼れる存在になっていくという、ふり幅の広い演技で物語を支えていた。
また、千春の前に立ちはだかる町会議員・根来川を演じるモト冬樹は、貫禄を漂わせ、時にコミカルなテイストもまじえて演じ、敵役ながらも憎めないキャラクターを表出させており、ラストではエレキギターの演奏も披露していた。
ノンストップの1幕ものだが、随所に伏線が張られ、見え隠れしていた謎や陰の答えが、終盤になってひも解かれるので、最後の最後まで飽きさせない。歌で心湧きたたせ、大いに笑って・・・。演歌の魅力、歌と笑いの力を実感する一大エンターテイメントだった。
(文=親松尚子)
INFORMATION
【コンサート情報】
「第二十一回・長良グループ 夜桜演歌まつり ~ 熱唱 春の祭典スペシャル ~都内23区・23年をかけて……」
【日時】2022年4月6日(水)
昼の部 開場 13:00/開演 13:30
夜の部 開場 17:00/開演 17:30
【会場】東京都/西新井文化ホール
(東京都足立区栗原1丁目3-1/東武スカイツリーライン「西新井駅」東口から徒歩3分)
【出演】田川寿美、水森かおり、氷川きよし、岩佐美咲、はやぶさ、辰巳ゆうと、藤野とし恵、椎名佐千子
【司会】西寄ひがし
【料金】
■会場観覧 全席指定席 ¥6,000-(税込)
■配信観覧 PIA LIVE STREAM ¥2,500-(税込)
(配信期間:2022年4月8日(金)10:00~2022年4月17日(日)23:59)
【チケット】
■会場観覧
一般発売日:2022年2月16日(水)~
・CNプレイガイド
0570-08-9999 (オペレーター対応)
・チケットぴあ (Pコード:211-500)
※インターネット・提携コンビニエンスストアのみ
https://t.pia.jp/
2021年10月6日発売
岩佐美咲「アキラ」
初回生産限定盤(CD+DVD)
通常盤
岩佐美咲の通算10枚目となる新曲は「アキラ」。前作「右手と左手のブルース」に続く、歌謡曲テイストのサウンドに乗せ、タイトルにもなっている“アキラ”という名の男性への未練を歌った、儚くも芯の強い大人の女性を描いた楽曲となる。2タイプ同時発売され、初回限定盤には「アキラ」のミュージックビデオとメイキングがDVDに収録され、CDにはカップリングに「ありがとう」(いきものがかり)のカバーが収録される。通常盤には表題曲のほか、「ETERNAL WIND~ほほえみは光る風の中~」(森口博子)のカバーが収録され、初回盤・通常盤それぞれ違ったジャケットデザインとなる。