ニューハーフの歌姫 VIVIが「永遠のひかり」でデビュー!「歌うことが楽しくて」
7月7日に発売された「永遠のひかり」は、大切な恋人への永遠の愛を歌うバラード作品。ものまねを封印したVIVIのナチュラルな歌声が胸に響くデビュー曲にして勝負曲である。カップリングの「Blue Sky」は、リズムのノリが良いポップな作品で、“青空の下、未来へ向かって大きくジャンプしよう”というメッセージが込められている。シンガーとして新たなスタートを切ったVIVIが、これまでの経歴とこれからの夢やデビュー曲への想いを話してくれた。
「自分の声で、自分の歌を歌えるようになりたかった」。
「こんなにいい曲を作っていただいたので、みなさんに知っていただきたいんです。もうね、聴いてもらいたくて聴いてもらいたくてしかたがないの。私が自信を持っておすすめできることなんて、初めてなんですよ。ものまねをやっていた頃は、自信の“じ”の字もなかったから。この曲で、生まれて初めて自分に自信が持てました」
ものまねタレントからシンガーに転向したVIVIのデビューシングル「永遠のひかり」が、7月7日に発売された。「あなたに逢いたくて~Missing You~」「輝いた季節へ旅立とう」など、松田聖子のヒット曲を数多く手がけた小倉 良氏が作曲したラブバラードだ。大切な恋人への永遠の愛をテーマに、恋する女性の気持ちがVIVI自身の素直な声で歌われている。
曲を作るにあたって、小倉氏からどんなジャンルを歌いたいかを聞かれ、VIVIは「80年代の洋楽ポップスのような雰囲気で、みなさんが覚えやすい曲を作っていただきたいです」と答えた。「ボーイ・ジョージみたいなの?」と聞き返されて、「ちょっと聖子ちゃんよりで」と付け加えたという。作詞の深見菜々子氏は、若手のシンガーソングライター。VIVIからは「白のイメージで作ってください」とだけお願いをした。
「特にリクエストはしていないのに、聖子さんの詞をすごく勉強して作ってくださったそうです。私にとっては、すごくいい歌詞だなと思っています。詞も曲も聴いてくださる人に“どこかで聞いたフレーズだな”と思わせるようなかんじで、私はそこがよくって。スッと入って行きやすい曲だと思うんですよね」
歌への目覚め。心の中のロウソクに炎が灯る。ものまね芸人「トンガ」へ。
若い頃から松田聖子が大好きだったVIVI。ホテルマンのアルバイトをしていた時代、宴会場を貸し切って行われた従業員の宴会で、「ちょっと聖子ちゃんを歌ってよ」と言われたことが、ものまねタレントを目指すきっかけとなった。
「その頃の私はすでにカミングアウトもして、バリバリのオネエで働いていたの。最初はためらったんですけどね。先輩が清掃係のおばさんを肩車して歩いて笑いを取っていたので、私も何か芸をやらなきゃと思って。(松田聖子の)『大切なあなた』をオクターブ低い地声で歌って練り歩いたら、すごくウケちゃったんですよ。それがとっても気持ちよくて、心の中のロウソクにポッと炎が灯っちゃったんです」
歌うことの気持ちよさに目覚め、宴会のたびにミニ聖子ちゃんショーをやるようになると、歌うことを仕事にできないものかと考えるようになる。「そうだ! ものまねがあるじゃないの」と気づいたVIVIは、美空ひばりのものまね芸人・エンジェルひばりへ、履歴書にショーのビデオとビデオレターを添えて送った。
「ちょっと来てちょうだい」と返事があったのが2006年の夏。弟子入りは叶ったが「聖子ちゃんじゃデビューさせられない」と言われ、ネタと曲のレパートリーを増やすのに必死。翌年の4月1日“トンガ”という芸名で、ものまねタレントデビューを果たした。
「トンガ時代は、やりたくないことばかりやらされていると、ずっと思っていました。私はどうしても聖子ちゃんになりたいと思い続けて来たのに、他の歌手のものまねでいろいろ歌った最後に『夏の扉』を歌うだけだったり。私はとにかく変わりたかったし、師匠のひばりさんに認めてほしかったんです。それで原曲のキーで歌えるようになりましたし、お化粧も上手になりました。これでダメだったら、もう自分の体を変えるしかないと思って。だいぶ悩みましたけど、女になると決めました」
ニューハーフになったVIVIは、「これからは松田聖子一本でやりたいので、辞めさせていただきたいんです」と師匠に伝える。エンジェルひばりもVIVIがそのためにずっと努力していたことを知っていたので「好きなようにおやりなさい」と、円満に送り出してくれた。
ものまねタレントとしての悟り。そして、「絶対に歌手になってやる~」。
ところが・・・。自分の目指す立ち位置なのに、松田聖子のものまねが、一番自信がなかったというVIVI。伸び悩んでいた時期に現在の事務所に入って、コロッケのコンサートやディナーショーに出演させてもらえるようになる。照明に向ける顔の角度まで細かく計算し尽くされたコロッケの芸に触れたことは、大きな糧となったという。コロッケのようにテレビに出演できるようになって知名度を上げたいと思い、まずは意識改革からはじめた。
「私生活をすっかり変えて、仕事に対する取り組み方や、周りの人への接し方も全部ガラリと変えて。それからショーの内容を変えたら、仕事がたくさん入って“よし、きてるぞ”と手ごたえが充分に感じられるようになったんですね。でもそこからが肝心なのに、それ以上は何も変わらなかった。それで“あ、私はここまでなんだ”って悟っちゃったんですよ。ここが私のものまね師としての頂点なんだって」
NHKの『新・BS日本のうた』に、コロッケ率いるものまね軍団の一員として出演したことがある。演歌歌手とのものまね対抗戦のコーナーだったが、五木ひろし、天童よしみ、角川博などそうそうたるメンバーを見て、自分があまりにも場違いに思えた。舞い上がって何を歌っているかわからないほどで、感動のあまり泣きそうになったという。
「ひな壇で歌手のみなさんの歌を聴いて、歌手ってすごいなって思ったの。ものまねはいかに楽しませるかだから、ちょっと失敗したとしても対処できるんです。でも歌は“一曲入魂”、ごまかしが利かないじゃないですか。歌に対する歌手のみなさんの向き合い方は、本当に勉強になりました。私も歌手にならなきゃいけないって、その時に固く心に誓ったんです。絶対に歌手になって『新・BS日本のうた』に出てやる~って思いました(笑)」
歌うことが楽しくて楽しくて。目指せ! 日本武道館!!
その頃のVIVIは、すでに小倉氏のオリジナル曲をレコーディングすることが決まっていたので、“歌一本でやっていこう”と、ものまねはすっぱりと辞めることに決めた。
「小倉先生との出会いは、たまたま私の知人の知人が知り合いで、紹介していただいたんです。私が聖子さんの曲を聴いていて、“うわ~、この曲いいなあ、どなたが作った曲?”って思ってクレジットを見てみると小倉 良。これも小倉 良、これも小倉 良・・・私にとって小倉先生というのは、心地よいところにバッチリと手が届くような音楽を作る方なんです。私も聖子さんのように、小倉先生の曲を歌手としてしっかり表現できるようになりたいって思い始めていました。だから先生に『私も自分の声で、自分の歌を歌えるようになりたいです」ってお願いをしたんですよ。その頃の私は『素人のカラオケ上手にちょっと毛が生えた程度だね』言われていましたけどね(笑)」
先日、VIVIにテレビのバラエティ番組から出演オファーがあった。松田聖子のものまねでと言われて一旦は断ったが、デビュー曲を歌ってほしいということだったので出演することにした。制作担当者に言われるがままに、ノーメイクで自宅ロケ、衣装や昔の写真も全部見せたVIVI。もう何も恥ずかしがるような年齢じゃない、何でもありで全部さらけだそう、ものまねもやらなければ新曲は歌えないんだと思ってやったのに、新曲を歌い始めたところでVTRを切られてしまった。ショックはしばらく尾を引いたそうである。
「次はちゃんとテレビで歌える機会をいただけるよう、頑張ろうって思いました。なんて言ったらいいのかしら。私の武器のひとつとしてものまねがあってもいいけど、過去のイメージだけで見られないようにしなくちゃいけないですね。そこをどうするかが、まだ自分の中ではっきりできていないの。でも、とにかく歌っていることを多くの人に知っていただいて、目指せ! 日本武道館です。武道館でコンサートをすることが夢なの。しかも毎年(笑)。いままでは、歌っていない時でもものまねをしてなくちゃいけなかったのが、しなくてよくなって肩の力が抜けました。歌うことが楽しくて楽しくて。もちろん歌は、真剣に歌っています。むしろ真剣に歌えることが、本当にうれしいんです。」
(文=夏見幸恵)
▼テレビ東京の『この世は【ご報告】であふれてる!?』で取り上げられたVIVI。番組内では「新曲を歌い始めたところでVTRを切られてしまった」(VIVI)が、番組公式YouTubeチャンネルで未公開映像として公開された。松田聖子の数々の楽曲を手がけた小倉 良氏によるVIVIの「永遠のひかり」を聴くことができる。
2021年7月7日発売
デビューシングル
VIVI「永遠のひかり」
VIVIのデビュー曲「永遠のひかり」は、松田聖子の楽曲を数多く手がけている小倉 良氏が作・編曲を担当し、80年代のポップスを彷彿させる耳なじみの良い作品に仕上がっている。作詞は若手のシンガーソングライター・深見菜々子が手がけている。長年にわたってものまねタレント“カマダセイコ”として活動してきたVIVIの、シンガーとしての新しい魅力を余すところなく伝えるラブバラードだ。カップリングの「Blue Sky」も深見&小倉の両氏による作品。
profile
VIVI(ヴィヴィ)
1月2日、東京都生まれ(大田区出身)。俳優養成所を経て1993年初舞台を踏む。2006年、美空ひばりのものまね芸人エンジェルひばりに師事し、翌年“トンガ”としてものまね芸人デビューした。2008年にニューハーフになり、2011年“かまだ聖子”に改名(2017年“カマダセイコ”に再度改名)。松田聖子を中心とした50以上のレパートリーを持ち、コロッケプロデュースのものまねシアター「コロッケミミックトーキョー」をはじめ、各種イベントで活躍した。2020年5月“VIVI”に改名して歌手に転向。名古屋のライブハウスJB STUDIOにレギュラー出演中。趣味は歴史めぐり、ドライブ、舞台鑑賞。特技はものまね、バレーボール、水泳。
▶シンガー VIVI 公式YouTubeチャンネル
「最近、YouTubeをはじめました。『ビビねぇチャンネル』。いつか小倉先生とYouTubeでライブができるように、チャンネルを作って置いてって言われたの」