山川豊

【注目曲】デビュー45周年の山川豊自身が作曲に挑んだ渾身作「駅」。演歌の新た地平線

1981年2月5日、「函館本線」での鮮烈なデビューから45年。演歌界の第一線を走り続けてきた山川豊が、大きな節目を前に自ら作曲を手掛けた渾身の一枚を世に放った。2月4日にリリースされた新曲「駅」は、単なる記念曲の枠を超え、アーティストとしての円熟と深化を象徴する重要なマイルストーンである。2年前の癌告知、そして壮絶な闘病を経て、あらためて「ステージが自分の居場所」だと確信した山川。ファンへの感謝を胸に自らのメロディで新たな物語を紡ぎ出した。

自らが作曲した「駅」。ディレクターと共に選んだ勝負の旋律

表題曲「駅」は、山川豊という歌手の音楽的バックグラウンドが存分に活かされた、令和の正統派演歌である。驚かされるのは、その構成力の高さだ。今作では山川自身が作曲を担当したが、最初からこの一曲に絞っていたわけではない。「ブルース調、ワルツ、メジャー演歌、そしてこのマイナー演歌と、実は4曲つくったんです」という。その中から、長年彼の声を聴き続けてきた信頼するディレクターが「これがいい、これでいこう」と即座に選んだのが、マイナー演歌の「駅」だった。

楽曲は、冬の駅を舞台にした「別れ」という演歌の王道テーマを描きながらも、メロディラインは非常に現代的で洗練されている。雪が雨へと変わり、終列車のベルが鳴り響く――。竹内弘一氏による編曲も相まって、聴き手の脳裏には一編の映画のような情景が鮮やかに浮かび上がる。

かず翼氏による歌詞へのアプローチにも注目だ。「なごり惜しんで閉まるドア つないだ指があとを引く」という一節は本作のハイライトだが、45年のキャリアを持つ山川は、ここを決して叫ばない。抑えた表現の中に声にならない男と女の哀愁を滲ませる。かつて「アメリカ橋」で見せた軽やかな歌謡曲タッチと、デビュー以来の重厚な演歌の響き。その双方が見事な黄金比でブレンドされた、山川豊の現在地を示す一曲といえる。

山川豊

カップリング「あんたのことが…」に見る、作曲家としての振り幅

表題曲の切なさとは対照的に、カップリング曲の「あんたのことが…」では、山川の作曲家としての多才さとボーカリストとしての艶(つや)が存分に発揮されている。好きな男に対する女性の熱い思いをストレートに歌った本作は、リズムに乗った歌謡曲調の仕上がりが印象的だ。

山川はボクシングやダンスで鍛え上げられたストイックな精神性と、ギターを嗜む音楽への探究心を併せ持つ。この二律背反する「切なさ」と「情熱」を自ら書き分けた事実に、彼の音楽的キャパシティの広さを感じる。

ライブでの盛り上がりが目に浮かぶようなキャッチーなメロディは、聴き手の心にスッと入り込み、知らず知らずのうちにリズムを刻ませる。派手な演出に頼らずとも、自らが紡いだ確かなメロディと声の説得力だけで、聴き手をその世界観へ引き込んでいく。これは長年第一線を走り続けてきたスターにしか到達できない、一つの矜持の形だろう。

表題曲で“男の哀愁”を、カップリングで“女の情愛”を自らの旋律で表現してみせた山川。このシングルは、アーティストとしての第二の産声ともいえる。

 


2026年2月4日発売
山川豊「駅」
山川豊

「駅」
作詩/かず翼 作曲/やまかわ豊 編曲/竹内弘一
c/w「あんたのことが…」
作詩/かず翼 作曲/やまかわ豊 編曲/竹内弘一
日本クラウン CRCN-8819 定価:¥1,500(税込)

【Amazon】山川豊「駅」

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