川野夏美

【注目曲】川野夏美、阿木燿子が描く情念の世界へ。新曲「秋萌え」で魅せる新たな顔。

川野夏美が、また一つ大きな扉を開いた。新曲「秋萌え」は作詩に阿木燿子、作曲に弦哲也という歌謡界のレジェンドを迎えた意欲作だ。これまでの港町演歌などで見せてきた凛とした姿とは一線を画し、本作で彼女が歌うのは、禁断の恋に身を焦がす女性の烈しい情念である。

この衝撃的な作品に川野夏美はどのように向き合ったのか。楽曲への想いからレコーディング秘話まで語ってもらったが、その言葉の端々からは、歌の世界とは対照的な彼女自身のチャーミングな人柄があふれ出ていた。

川野夏美

パワフルでドラマチック。そして新境地

川野夏美の通算37作目となるシングル「秋萌え」を語る時、特筆すべきは阿木燿子ならではの言葉の力だ。通常は春に使われる「萌え」という言葉をあえて「秋」と結びつけた造語のタイトル。そして、歌詩の中で象徴的に登場する「夾竹桃(きょうちくとう)」。美しい姿の裏に猛毒を持つこの花は、「見た目より危うい」「毒を秘めた」と歌われ、主人公の内に秘めた決意と危うさのメタファーとして、物語に深い奥行きを与えている。

――新曲の発売、おめでとうございます。

川野 ありがとうございます。「秋萌え」は、初めて阿木(燿子)先生に作詩をしていただいたんですが、とってもパワフルでドラマチックな作品です。今作から私を担当してくださったディレクターさんが、今の私を引き出してくださる作家の先生方をいろいろ考えてくださり、少し前から阿木先生にお話をしてくださっていたそうです。私にとって新境地の歌になりそうです。

――阿木燿子さんから作品が届いた時の気持ちはいかがでしたか?

川野 もう、「まさか!」っていう。「書いてくださるんですか!?」という、びっくりと喜びでした。と同時に、歌の内容が年齢というより精神が成熟した女性の心情が描かれていて、今の私にそういうイメージを重ねてくださったのかと思うとうれしくて。(45歳まで)年を重ねてきてよかったなと思いました。

川野夏美

「私はバツどころか丸もついていない」

「秋萌え」の物語は「バツが付いてそれから 始まる人生」という衝撃的なフレーズで幕を開ける。一度人生に区切りをつけた女性が、再び芽生えた恋心に突き動かされ、世間の常識や平穏を打ち破ってでも自らの想いを貫こうとする、スキャンダラスでドラマチックな世界観が描かれる。

――阿木燿子さんが紡がれた歌詞が印象的です。

川野 歌い出しに衝撃を受けました。「バツが付いてそれから 始まる人生」という一行目でパッと情景が想像できてしまうのがすごいと思って、ゾクッとしました。

――好きな人ができたと打ち明けて、頬を強く叩かれるシーンにつながります。

川野 そうなんです(笑)。歌詞を読み進めるほど劇的なドラマが続くので、ぼんやりとした空想の世界ではなく、ありありと絵が浮かびます。

――主人公と重なる部分はありますか?

川野 いえいえ、私はバツどころか丸もついていないので(笑)、知ったかぶりでは歌えないんですけど、演じるという意味では逆にサラッと歌えているのかな、なんてポジティブに捉えております!

川野夏美

ボサノバ風アレンジが掻き立てる

サウンド面では、弦哲也による哀愁漂う歌謡曲メロディに、矢野立美が施したボサノバ風のお洒落なアレンジが融合。どこか退廃的でモダンな雰囲気が、この危険な恋のムードを一層掻き立てる。

――メロディやアレンジの印象はいかがでしたか?

川野 弦(哲也)先生にはこれまでにもたくさん作品を書いていただいているんですが、先生から届いたデモテープが本当に素敵で、毎回うっとりしてしまうんです。もうこのまま売ればいいんじゃないかって思うくらい(笑)。でも、その時点ではアレンジがまだできていない状態だったので、「これからこの歌が私の声になって、どんな肉付けになっていくんだろう」という想像がすごく膨らみました。結果的に、ちょっとボサノバっぽいアレンジにしていただきました。全然想像もしていなかったので、すごく意外な感じがしましたが、お洒落なアレンジにしていただきました。

レコーディングではときめきすぎた?

――レコーディングはいかがでしたか?

川野 レコーディングには阿木先生も来てくださったんですが、すごくチャーミングな先生でした。最後のサビに、口紅を濃いめのピンクに変えて歩き出すという描写があるんですが、過去の関係に対する背徳感もありながらも、やっぱりときめいてる感じが大きいのかなって、少し「ルン♪」っていう感じで歌ってみたんです。そしたら、「ちょっとときめきすぎだ」って言われました(苦笑)。

――浮かれすぎた?

川野 ときめき具合と罪悪感の狭間がすごく面白くもあり、むずかしいなと感じました。私の中では、『銀座の三越かなんかで口紅買って、あの賑やかな交差点を渡ってるのかな』なんて想像してたんです。そんなお話をさせていただいたら笑ってらっしゃいましたね。でも、レコーディング後には『私、この歌カラオケで歌うわよ』って励ましてくださいまして、女性としても素敵な方でした。

川野夏美

――ファンの皆さんにも、川野さんの新境地の作品を楽しんでいただきたいですね。

川野 「秋萌え」はこれまでにない雰囲気の作品になっています。ファンの皆さんには、「あ、夏美また変わったのね」って新鮮に面白がっていただけたらうれしいです。聴いて、そして歌ってみると、すごくお洒落な雰囲気に浸れるんじゃないかなとも思いますので、頑張って歌っていきたいと思います。

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2025年8月20日発売
「秋萌え」
川野夏美

「秋萌え」
作詩/阿木燿子 作曲/弦哲也 編曲/矢野立美
c/w「面影橋」
作詩/結木瞳 作曲/弦哲也 編曲/矢野立美
日本クラウン CRCN-8773 ¥1,500(税込)

カップリング曲の「面影橋」は過ぎ去った恋を静かに振り返る、切なくも温かい追憶の歌だ。作詩に結木瞳を迎え、春の神田川を舞台にした叙情的な一編に仕上げられている。また、“桜化粧” “面影橋”といった具体的な風景が、聴き手の心に淡いノスタルジーを呼び起こす。歌唱にも注目だ。「帰りたい ふたりの季節 もう一度」と願いながらも、「帰れない もうすぐ今年も春が来るのに」と現実を受け入れる。この相反する感情の狭間で揺れる心情を、川野は優しく、そして儚げな声色で紡いでいく。「秋萌え」での発声とは打って変わり、息遣いの中に感情を滲ませる歌唱が印象的だ。

【Amazon】川野夏美「秋萌え/面影橋」

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