鳥羽一郎 ロングインタビュー~故郷、歌、師匠の教え~

人は出会いと別れを繰り返して生きていく。現実と向き合い、受け止めながら、少しずつでも前に向かい踏み出そう……。
演歌一筋、一心不乱に歌い続けてきた鳥羽一郎の新曲「戻れないんだよ」は、諸行無常の人生を歌う一曲だ。さまざまな人生経験を経て、今、鳥羽が思う、故郷、歌、師匠の教えを、新曲とともに振り返った。

 

これまで経験したことのない日々


――新曲「戻れないんだよ」は人の世の諸行無常がテーマです。永久不変のものはこの世にない。どんな人にも、どんな物にも永遠はないという意味です。そして、そのことを知ることで、今を大切にし、いざという時に苦しみから逃れられるという教えを説いています。現実問題として、今、誰もがコロナ禍で不安を抱えています。

鳥羽 こんなことになるなんて想像がつかなかったね。過去にも、人類はいろんなウイルスと戦ってきて、今回も新しいワクチンができるなど、いつかはコロナ禍も収束すると思うけど、じゃあ、いつ頃収束するかは専門家に聞いたって、まだわからないような状態でしょ? こういう時代は、60何年生きてきて経験したことないね。

――自粛期間中はどう過ごされていましたか?

鳥羽 どこにも出ませんでした。家にいていろんなことをしたり……、けっこう本は読みましたね。昔買った本が山ほどあって、ろくに読んでなかったんですよ。それを引っ張り出してきてね。新しく買って読んだ本もありますけど、おもしろい本に出合うと時間がすぐ経っちゃいますね。没頭してしまって、「あ、もう一日過ぎた」みたいなさ。

――主にどんな本を読まれましたか?

鳥羽 例えば松下幸之助さんの本とか、社会に影響を与えた人の本が好きでね。どんな生き方をしたのかを知るのが。昔、高倉健さんが書いた本があって、半分ぐらい読んだままになっていたのかな。『あなたに褒められたくて』(刊行/林泉舎※)いうエッセイ。あなたというのはおふくろさんのことだけど、この本も高倉健さんらしくて、おもしろかったね。

※集英社から文庫本も刊行されている。

――鳥羽さんも歌手として、多くの人に影響を与えていると思いますが、そんな鳥羽さんでも、人の生き方に影響されたり、自分と比較して考えたりすることもありますか?

鳥羽 時代背景があるから、一概に言えないけど、樹木希林さんが書かれた本が何冊かあって読んだ。これもためになったね。「なるほどな、こんな生き方をしてこういう風に女優になって、こうだったんだ」っていう。とくに、お亡くなりになってから出版された本(『樹木希林 120の遺言~死ぬときぐらい好きにさせてよ』(刊行/宝島社)はおもしろかったね。自分のありのままに生きてきた人だというのが、本を読んでわかったね。女優になったんだけど、別に“大女優になりたい”とかそういう思いはなく、たまたまそうなっただけというね。仕事に対しても、無理してまで仕事しなくていい、というような話が書いてあるんですよ。やっぱりこの人はすごいなって思ってね。欲がなかったんだろうな。仕事に対してもそうだけど。あんなふうに生きたいもんだね。

――人に尊敬されるという意味で、鳥羽さんとも相通じるものがあるのではないでしょうか。

鳥羽 いやいやいや……。とにかく感動したもんね。いい生き方したんだね。自分のことは自分がいちばんよく知っているという信念みたいなものが感じられた。亡くなる時ももうそろそろだよっていう、ある程度の覚悟を持って生きておられたんじゃないかな。

 


2020年8月26日発売
人の世の諸行無常を切々と語る!
鳥羽一郎「戻れないんだよ」

鳥羽一郎「戻れないんだよ」

「戻れないんだよ」
作詞/かず翼 作曲/徳久広司 編曲/南郷達也
c/w「北のれん」
作詞/本橋夏蘭 作曲/大谷明裕 編曲/竹内弘一
日本クラウン CRCN-8343 ¥1,227+税