50周年記念 五木ひろしがオーケストラと“日本のこころ”を紡ぎ出す

「音楽を通して勇気と希望と励ましと、さらには癒しを」

 
五木と新日本フィルハーモニー交響楽団との出合いは40年前にさかのぼる。昭和55年(1980年)、五木は「永遠に 心にのこる歌のふるさと①」というアルバムを出した。2月6日~7日の2日間、無観客の立川市市民会館(当時)。オーケストラの演奏で日本の唄を歌ってレコーディングした。気持ちよかった。それ以降、五木は多くのオーケストラとジョイントしてきた。

新日本フィルハーモニー交響楽団は昭和47年(1972年)、指揮者・小澤征爾のもと楽員による自主運営のオーケストラとして創立し、1997年からは東京・墨田区に移転。同年にオープンしたすみだトリフォニーホールを活動の本拠地としている。

「新日本フィルハーモニーと一緒にやらないか、というお話をいただき、それが実現し、素晴らしい演奏をみなさんに聴いていただいています。ですが、私自身も素晴らしい演奏で歌うのは気持ちがいいものです」

五木ひろしが50周年記念シンフォニックコンサートで歌う

©堀田力丸

©堀田力丸

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第2部は五木が平成の時代に出合った作品で構成された。まずは平成17年(2005年)の「ふりむけば日本海」。芸名をもらった作家の五木寛之が作詞、五木が作曲した思い出の曲だ。

五木にとって平成は、プライベートでの大きな出来事があった時代でもある。40歳になり、結婚をし、3人の子どもに恵まれた。長男が結婚し、3年前には孫も生まれた。「月日の流れるのは早い」と五木。

音楽の世界では、記録メディアがレコードからCDの時代へ入っていった。CDを知らないファンには「クリスチャン・ディオールの略じゃないですよ」と、当時説明をしたと笑わせた。

技術の進歩は目覚ましく、今では音楽配信サービスが大きく育っている。五木のこのコンサートも新しい試みとして、ライブ配信されていた。

それでも、と五木は言う。

「変わらないのは、生で歌を、音楽を聴いていただくことです。歌い続けられるかぎり、歌をお届けしていきます。令和に入って、まさかこんなこと(コロナ禍)になるとは思いませんでしたが、力を合わせて乗り切って、素晴らしいことが起きるように、音楽を通して勇気と希望と励ましと、さらには癒しをお届けしたいと思って歩いていきます」

シンガーソングライター、永井龍雲が作詞・作曲を手がけ、平成元年(1989年)にリリースした「暖簾」。

ささやかな人生 謳うものがある
明日を信じて 生きたい
(「暖簾」の歌詞)

ギターの弾き語りでもよく歌っているこの曲をオーケストラの演奏で、五木はしっとりと歌うと、レーモンド松屋が作詞・作曲した「夜明けのブルース」につないだ。YouTubeの公式プロモーションビデオでは1000万回以上再生されている、五木の代表曲だ。アップテンポの曲調で、オーケストラ演奏ではありえない、ミラーボールが眩い光を放った。

五木ひろしが50周年記念シンフォニックコンサートで歌う

五木の右奥は指揮を務めたのは藤野浩一氏。プロデューサーとしても関わった五木を演奏面で支えた。©堀田力丸

「オーケストラがこういう曲を演奏することはないと思います。藤野さんとの関係が支えてくれました」

この日の指揮を務めたのは藤野浩一氏だった。『NHK 紅白歌合戦』など多くの音楽番組で作編曲活動を行い、ビッグネームのコンサートでは音楽監督も担当する。五木との付き合いは長く、信頼のおける指揮だった。

五木のふるさとは福井県美浜町。自然が豊富で、少年時代の遊び相手は山や海や川だった。ふるさとへの恩返しをしたいと、地元の大きなイベント「美浜・五木ひろし ふるさとマラソン」(第32回の今年は中止)を長年サポートしている。

歌手に憧れ、早く都会に出て歌手になって母親を助けたい。そう思ったのも、美浜での少年時代。母親には心配もかけたが、「五木ひろしになって、いい時代もたくさん見せられたので、少しは親孝行ができたかと思う」と話す。

そして、福井県を流れる大河、九頭竜川を舞台にした「九頭竜川」を歌った。自らが作曲し、平成18年(2006年)にリリースした。九頭竜湖にかかる箱ケ瀬橋(通称、夢のかけはし)の近くには歌碑が建立されている。

「大好きな歌と出合い、とても幸せです。どこまでやれるか? まだまだやれると思います。応援してくださる人がいるかぎり。80代までは歌っていたい」

©堀田力丸

©堀田力丸

コンサートの締めくくりには、小椋佳が作詞、堀内孝雄が作曲した「山河」を選んだ。2000年、20世紀最後の五木の曲であり、この年の『NHK 紅白歌合戦』で大トリを務めた曲だ。

「昭和、平成の2部構成でお送りしましたが、お楽しみいただけましたか?」

鳴りやまない拍手に、歌い手には、五木ひろしにはステージが似合うと感じる。

コロナ禍により活動自粛を余儀なくされたが、この間に五木はシングル「遠き昭和の…」を7月8日に発売し、後輩歌手の曲に挑戦したカバーアルバム「演歌っていいね!」(8月26日発売)の準備を進めていた。

アンコールでは、令和に入ってより一層、昭和の時代が懐かしくなったと、新曲「遠き昭和の…」を、そしてコロナ禍で傷ついた人を励ましたいと、カップリング曲「365本のひまわり」をオーケストラの演奏で歌った。

「大好きなオーケストラと歌を届けられたのは、歌手冥利につきます。コロナ禍が収束したら、(観客数の制限がない)コンサートをまたやりたい。そう強く強く思っています」

終幕しても拍手はやまず、五木はカーテンコールに応えて観客に感謝した。

 

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INFORMATION
【見逃し配信】
(8月31日まで)
新日本フィルハーモニー交響楽団特別演奏会
五木ひろし 50周年記念シンフォニックコンサート

すみだトリフォニーホールで行われた「五木ひろし 50周年記念シンフォニックコンサート」の模様はインターネットを通じて視聴できる。

■見逃し配信(アーカイブ配信)

「五木ひろし 50周年記念 シンフォニックコンサート」の見逃し配信(アーカイブ配信)は、ticket board(チケットボード)によるライブ配信システムで8月31日まで視聴可能だ。視聴チケットを購入することで、閲覧することができる

詳細は新日本フィルハーモニー交響楽団公式ホームページまで

五木ひろしが50周年記念シンフォニックコンサートで歌う

©堀田力丸

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