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松尾雄史 8周年記念コンサート2021 in 練馬文化センター大ホール

感動で胸がいっぱい。松尾雄史が8周年記念コンサートで、実直に歌を届ける。節目の10周年に向け、「ひたむきに一歩ずつ」

松尾雄史 8周年記念コンサート2021 in 練馬文化センター大ホール

松尾雄史が6月4日、東京・練馬区の練馬文化センター 大ホールで「松尾雄史 8周年記念コンサート2021」を開催した。同コンサートは昨年6月10日に予定していたが、コロナ禍で延期に。1年ぶりに実施でき、松尾は感動で胸をいっぱいにしていた。

「コロナ禍で皆さんとお会いできない状態が続いていて、このコンサートを特に楽しみにしてくださった方が多いとお聞きしました。本当にうれしいです。来てくださった皆さんに『僕も元気にしていますよ』『歌っていますよ』というメッセージを笑顔で伝えたいですね」

そう語っていた松尾は、「くちなし慕情」と「すず虫」の2曲から記念コンサートをスタートさせた。

「くちなし慕情」は2012年6月6日に歌手としてデビューした曲であり、恩師・水森英夫が幼少期を過ごした“練馬、北町 三丁目”を舞台にした女唄。幼なじみの男性を待ちながら、今日も名もないお店に“麻のれん”を掛ける女性の気持ちを歌った曲だ。一方、「すず虫」は2018年12月にリリースされると話題となり、翌年7月に感謝盤が発売された松尾の代表曲。男ごころの哀愁を歌う松尾の歌声が心地よく耳に残る。

松尾雄史 8周年記念コンサート2021 in 練馬文化センター大ホール

「どうも~皆さん、こんにちは~。今日は松尾雄史 8周年コンサートへお越しくださりありがとうございます。昨年の6月10日に予定していました(8周年)コンサートも、コロナの影響で一年延びて、今日開催するこができました。本当に胸がいっぱいです。(客席を見渡しながら)お顔が見えるんですよ。いろんなところから来てくださっているのがわかって、『ああ、本当にお元気でよかったなあ』と思っております」

オープニングの2曲を歌い終えると、観客に話しかけた。2日後にはデビュー9年目に入る松尾。1年遅れながらなんとか開催できたコンサートだが、東京は新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため緊急事態宣言が発令されている最中。開催をうれしく思う反面、本当にファンが足を運んでくださるのか。心配だったと話す。もちろん会場は万全の感染防止対策がとられているが、それでも周りからの助言で、直前に来場を取りやめた人もいたという。

そんな中、大勢(ソーシャルディスタンスを保って約700人に人数制限)のファンが来場してくれた。松尾は「力入っていますよ、今日」と笑顔を見せた。

松尾雄史 8周年記念コンサート2021 in 練馬文化センター大ホール

コンサートは松尾雄史らしい内容だった。ライブなどでは新しく覚えた曲を初披露するなど、挑戦の場とすることもあるが、この日は松尾の歌声をたっぷりと、そしてじっくりと聴いてもらう構成となっていた。

「メルボルン特急」「トマム絶唱」などスケールの大きな曲や、「すず虫」のヒットを引き継いで歌った「俺の花」、本格演歌へ挑戦した「流れ舟」といったオリジナルシングルはもちろん、本来なら昨年実施していた8周年コンサートで歌ったであろう『セカンドアルバム~すず虫~』(2020年6月3日発売)から名曲をカバーした「北紀行」「若いふたり」「くちなしの花」「新宿の女」「酔歌」を、そして今年8月4日に発売を予定しているアルバム『松尾雄史コレクション「3枚目」』から御三家および新御三家の名曲を披露。余計な演出はなく、ただただ歌を届けていた。

松尾雄史 8周年記念コンサート2021 in 練馬文化センター大ホール松尾雄史 8周年記念コンサート2021 in 練馬文化センター大ホール

「(2008年)17歳の時に作曲家・恩師の水森英夫先生と初めてお会いして、18歳、高校を卒業して東京へ出てきました。それからまる11年が経って12年目に入りました。先生のもとでは、懐メロをレッスンしていただきました。ただ、懐メロといっても、僕にとっては新曲なんです(笑)」

「ふと思い返してみると、故郷を離れるのは相当な覚悟なんです。当時、10代というのは何も考えていません。縁もゆかりもない東京へ、先生を頼って行けるということで、ワクワクドキドキするんですよ。今も忘れません。4月3日が上京記念日なんです。4月2日まではワクワクしている。わかりやすく言うと、遠足の前の日の感じ。当日、空港に向かいます。僕は長崎の諫早という都会で育ちました。(観客の笑い) どうして笑うんですか? 行ったことあるんですか? 都会なんですよ。東京は大都会、諫早は都会(苦笑)」

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東京に出て行くその日の飛行場。いろんな人が見送ってくれました。最初はあまり感じなかったんですが、ゲートに入る時に、故郷への思い、家族への思い、仲間への思い、そして『これから頑張るぞ』といういろんな思いがこみ上げてきて、この僕がですね、ボロボロボロって泣いたんですよ。この泣かない僕が。よほどだったんですね。でも、『これから頑張るぞ』という気持ちは強かったんですね。そして2年後、20歳でデビューすることができました。来年が10周年となります。本当に早いなと思いますが、一歩ずつ歩んでいかなければならないと思います。ひたむきに一歩ずつ、本当は一段飛ばししたいですが、一段ずつ階段を上がっていけるよう努力していきます。どうか、皆さん、これからも応援よろしくお願いいたします」

松尾雄史 8周年記念コンサート2021 in 練馬文化センター大ホール

客席には恩師の水森の姿もあった。松尾は歌手としての夢を語る。

「誰しも目標や夢を持っています。僕も故郷を出たかぎりは故郷に錦を飾りたい」

故郷・長崎を舞台にした「肥前路の女(ひと)」、希望が砕けながらも、“男だろ”と、親父に鼓舞され、なおも夢に向かって突き進む男を歌った「叱り酒」などを披露すると、発売になったばかりの新曲「星空の酒」をファンに届ける。

「水森先生が、山形・米沢市に行った時、ホテルのバルコニーから空を見上げていたら流星が見えたそうです。その瞬間、パッとメロディーが浮かび、そのイメージを作詞家のたきのえいじ先生に伝えて出来上がったのが新曲です。お酒を飲みながら星空の向こうの故郷にいる女性に思いを馳せるという内容の歌です。ここ最近はずっとマイナーの曲が多かったのですが、今回は久しぶりにメジャーの曲です」

松尾雄史 8周年記念コンサート2021 in 練馬文化センター大ホール

「何か起こるんじゃないかと、自分では思っています。やっぱり歌手というのは、自分ひとりで歌っていてもしょうがない。皆さんがいてくださることに意味がある。世の中が大変な時に新曲を出すことができて、本当に幸せです。この曲で一生懸命頑張っていきます」

アンコールは、やはり“練馬”を舞台にしたデビュー曲「くちなし慕情」をもう一度、届ける。

「また近いうちに再会できる日はあると思います。それまでお体に気をつけていただいて、そして笑顔で、元気で再会できることを願っています」

アンコールを含めて全23曲。ただただ実直に歌を届けた松尾雄史の8周年コンサート。歌手にとって大きな節目となる10周年まで、あと1年となった。

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北島御大からの言葉

北島三郎からのエールに、涙が出るほど感動

松尾雄史の初めてのテレビ収録はテレビ東京系列の歌番組であり、北島三郎が送る『サブちゃんと歌仲間』だった。デビュー直前の収録で「口から心臓が飛び出るかと思うほど」緊張していたという。コンサートでは、番組での北島との思い出も披露していた。

「ずっとテレビで観ていました。今は言えませんが、当時は“サブちゃん”です。“サブちゃん” “サブちゃん”って言いながらテレビを観ていました(笑)。デビューが決まり、番組に出させていただいたんですが、もう緊張。口から心臓が飛び出るほど。当時、『180センチのさわやかENKAボーイ』というキャッチフレーズをつけていただいていました。今、身長は182センチになりました(笑)。レコード会社の人から、テレビに出る度にキャッチフレーズを言うように言われていました。『松尾君、自己紹介の時に絶対に言うんだよ』って。さあ、北島御大がいらっしゃいました。『デビューしました。身長180センチ、さわやかENKAボーイ、松尾雄史です。よろしくお願いします』。そう挨拶したら、御大がすかさず、『あのね、身長のことはあまり言うもんじゃないよ」って(笑)。冗談でおっしゃったんですが、うぶな僕は、ああ、言っちゃいけなかったんだ。でも、あの人が言えっていったから・・・』

以来、このキャッチフレーズは封印したと笑わせた松尾は、北島から勇気をもらったとも話す。

「ちょっと前ですが、『さぶチャンの歌仲間』にお邪魔した時に、北島御大が『すず虫』を歌いながら入ってこられたんです。ドキっとしました。収録が始まる前です。目が合ったら、御大がお話をしてくださったんですね。『おまえ、いい声している。いい歌も歌っている。ただ、いくらどうあがいてもダメな時はこの世界にはあるんだよ。どうやってもどうにもならない時がある。でも、必ず時代が来るから。俺、応援するから』とおっしゃってくださったんです。もう、感動しまして涙が出るほどだったんですが、汗だくだくでした。すごい先輩方がたくさんいらっしゃって見守っていてくださっている。嫌なことがあっても、見てくださっている先輩方のやさしい気持ちが支えになるんですね。本当に勇気をいただいて、今日まで歌ってくることができました」 

 

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2021年6月2日発売
11枚目のシングル
松尾雄史「星空の酒」
松尾雄史 星空の酒

松尾雄史「星空の酒」
「星空の酒」
作詞/たきのえいじ 作曲/水森英夫 編曲/竹内弘一
c/w「君の瞳」
作詞/たきのえいじ 作曲/水森英夫 編曲/竹内弘一
日本クラウン CRCN-8407 ¥1,350(税込)

昨年12月に「流れ舟」をリリースして半年。早くも新曲をリリースすることになった松尾雄史。逢いたくても逢えない女性への思いをメジャー調で歌っている。「明るい雰囲気ですが、せつない内容の詞です。最初聴いた時は、何と難しい歌だなと思いましたが、歌い終わった時に達成感、爽快感がある、何ともいえない気持ちよさがある歌です」。カップリング曲の「君の瞳」は、愛する人に「ついておいでよ」と語り掛ける作品。“君の瞳は 笑顔が似合う” “君の瞳に 約束するよ”など、瞳がキーワードになっている。そんな松尾に人の目をよく見るか聞いてみた。「人の目、見ませんね。ホント映るんでしょうかね。僕のお客さんが『こっち見て?』とか言うんですが、見ると目をそむけるんですよ。恥ずかしいんですよね、うん。僕も宝塚歌劇を見に行って、目が合うとやっぱり恥ずかしいですもん。指差された時は、寒気がしました(笑)」

2021年8月4日発売
松尾雄史 サードアルバム
『松尾雄史コレクション「3枚目」

日本クラウン CRCN-41366 ¥2,600(税込)
収録曲

「君だけを」(新録)
「高原のお嬢さん」(新録)
「江梨子」(新録)
「傷だらけのローラ」(新録)
「私鉄沿線」(新録)
「言えないよ」(新録)
「鈴虫」
「湯島慕情」
「流れ舟」
「純子の泪」
「俺の花」
「星空の酒」
全12曲(曲順未定)

「いままでは演歌色が強かったので、少し歌謡曲っぽい歌も歌ってみたいなという自分自身への挑戦」。松尾雄史のサードアルバムでは、御三家と新御三家のヒット曲をカバーしている。コンサートではアルバム収録曲の中から、西郷輝彦の「君だけを」、舟木一夫の「高原のお嬢さん」、橋幸夫の「江梨子」、野口五郎の「私鉄沿線」、郷ひろみの「言えないよ」、西城秀樹の「傷だらけのローラ」を歌った。
「舟木一夫さんの『高原のお嬢さん』は初めて聴いた曲ですが、あとは過去に何度か耳にした曲ばかりです。新御三家の歌は、コブシを回さずに歌うことに苦労しました。オリジナルのイメージを残しつつ自分のエッセンスを入れて歌わせていただきました」
新御三家の3曲を歌い終わった時には、観客に「コブシ回ってました? 回ってないはずです」と笑顔で語りかけていた。特に「傷だらけのローラ」は印象的だった。多くの若手歌手がカバーする名曲だが、どこか西城秀樹に似ている。西城秀樹が蘇ったかと思うほどに聴かせる若手もいて、それはそれで素晴らしい。しかし、松尾の歌う「傷だらけのローラ」は、西城秀樹の雰囲気を残しながらも、澄んだ声で、ピュアに叫ぶ“ローラ”が新鮮だった。令和の時代に蘇った新生「傷だらけのローラ」とも言えるような、松尾にしか歌えない名曲カバーだった。

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