福田こうへい 日本の母を唄う~福田流に心を込めて~

「一文字アルバムシリーズ」が好評の福田こうへいが、8作目となる新たなアルバムをリリースした。テーマは「母」。昭和の時代を彩った母にまつわるの名曲をカバーし、自身のオリジナル曲と合わせた全12曲の構成となっている。

福田こうへい「母~日本の母を唄う~」

カバー曲では、今回「帰ろかな」「海の匂いのお母さん」「岸壁の母」「おんなの一生~汗の花~」「かあさんへ」の5曲が新録楽曲。制作過程など、今回のアルバムについての思いを福田に聞いた。

――アルバムの内容や制作過程のことなど、作品について教えてください

福田 二葉百合子さんや三橋美智也さんなどが歌った名曲を、福田こうへいはどのように歌うのか。皆さん、期待感をもって見守ってくださっていると思います。歌うにあたって意識したのは、あくまで「俺らしく」歌うこと。「帰ろかな」は北島三郎さんの曲ですが、似せてしまうとモノマネになってしまうので決してそうはならないように。森進一さんの「おふくろさん」も、森さんの強い個性を福田流の歌い方に変えました。テンポがちょっと難しかったですが、あえて言うなら澄んだ感じの「おふくろさん」になったでしょうか。聴く方がどう受け止めてくださるか楽しみです。

――福田さんがカバーされた曲は、どれも福田流のオリジナル曲に聴こえます。歌うのが難しかったり、悩んだりした曲はありますか?

福田 カバー曲の中でもっとも難しかったのは、川中美幸さんの「おんなの一生~汗の花~」でした。ご本人にお会いしてCDをもらっていただいた時、「男性が歌うのは初めて」と驚かれました。女性唄なので言葉づかいなどが難しかったですが、かねてから歌いたいと思っていた曲です。冒頭、「負けちゃ駄目だと 手紙の中に 皺(しわく)くちゃお札が 入ってた」といった歌詞がありますが、親子関係も時代とともに変わり、若い人にとってはすでに想像しにくいシーンかもしれないですね。でも、一世代前の母の子に対する思いがよくわかる部分。女唄ですが、そこを福田流に心を込めて歌わせていただきました。

――ほかにも福田さんが兼ねてから歌いたかった曲はありますか?

福田 鳥羽一郎さんの「海の匂いのお母さん」も、歌いたいとリクエストした曲です。デビュー前に鳥羽さんが岩手でコンサートを開催された時に耳にした曲で、いいなとずっと思っていました。裏話ですが、このコンサートは観客として行ったわけではありません。前座で僕の友人がステージに出たんですが、そいつに花束を渡すやらせの係(!)を仰せつかりまして(笑)。つまり、手伝いで行った先でたまたま聴いたのがこの曲だったんです。

――たくさんの日本の「母」を歌われてみての感想はありますか?

福田 今回こうして名曲を歌いながら、一つひとつの単語、詞の深さを感じ、ひと言「母」といっても本当にいろいろな人生があるなと思いました。海の仕事をしているお母さん、また戦争に子どもを奪われてしまったお母さん、その姿はさまざまです。そんな皆さんの心に、福田こうへいの歌が届くといいなと思っています。

――岩手で暮らしておられる福田さんのお母さんについて、少し聞かせていただけますか?

福田 「母ちゃんの浜唄」に、「『小イワシはいらんかね 七日(なのか)経ったら 鯛になるよ』という一節があります。イワシが鯛に変わるわけはないんですが、似たような教えで僕を育ててくれましたね。だますというか、おだてるというか。そして、東北特有の強さのある人ですが、状況判断を的確にしながら常に謙虚な姿勢でいる姿が印象的です。たとえば、相手が悪い場合でも決して自分が優位に立たずに低姿勢でいる。どういう状況であれ、最後に人をよくして帰すんです。立場はどうあれ、いい思いにさせて帰す。田舎の“あるある”ですが、簡単にできることではないですよね。

――気遣いのあるお母さまですね。

福田 ましてや民謡歌手(福田岩月)の妻でもあったので、人への気遣いは人一倍だったと思います。父が亡くなって数年はつらかったようですが、さあ、今はどうしているんでしょうね。好きな踊りの稽古に行ったりして、のんびりやってるんじゃないでしょうか。連絡はお互いにほとんどしません。お袋には俺から「よほどのことがないかぎり電話すな」と言ってあるので、メールもないです。別に冷たいわけじゃなくて、(母の年齢のことを考えると)逆に電話があると何かあったのではとびっくりするから。便りないのは元気な知らせと思っています!

――ところで、コロナ禍ではありますが、中止や延期されていたコンサートも少しずつ行われるようなりましたね。生の歌を聴きたいと楽しみに待っていてくださった方も多かったんじゃないですか?

福田 久々にコンサートが再開となった時は感無量でした。今年ほど1回のコンサートがありがたいと思った年はないですね。9月の名古屋公演でしたが、目の前にいるお客さんが泣いていて、思わずもらい泣きしそうになりました。どうにかこうにか、最後まで耐えましたけどね。残念ながら声援が禁止だから、ストレスを持ったまま帰らせてしまうようで、それがちょっとかわいそう。その分爆笑トークで頑張っているんですが(笑)、公開ラジオのような一方通行なのが残念です。

コロナ禍により60もの会場で行われるはずだった約100公演が中止や延期を余儀なくされたが、今年9月24日、211日ぶりとなる名古屋でのステージに立った福田こうへい。

――愛知県・名古屋市の日本特殊陶業市民会館フォレストホールで、7カ月ぶりに行われた「福田こうへい ソーシャルディスタンスコンサート2020」のことですね?

福田 今までは当たり前に客席に降り、1F後方まで、また2Fまで行かれれば躊躇なくラウンドしていました。それも今はできませんので、どうしたら喜んで帰っていただけるのかをいつも考えています。父がよく言っていたのは、「歌い手は聴いてもらって、そして選んでもらうんだからな」ということです。歌を聴かせているんだなんて思ったら終わりです。選んでいただくために、今後もできることはすべてやりたい。そして、元気をお届けできたらなと思います。

(文=藤井利香)

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2020年11月11日発売
母への想い、さまざまな人生
福田こうへい「母~日本の母を唄う~」

キングレコード KICX-1120 ¥2,818 + 税

■収録曲
1.アイヤ子守唄(福田こうへい)
作詞/原譲二 作曲/原 譲二 編曲/伊戸のりお

2.海の匂いのお母さん(鳥羽一郎)
作詞/田村和男 作曲/船村徹 編曲/伊戸のりお

3.帰ろかな(北島三郎)
作詞/永六輔 作曲/中村八大 編曲/近藤俊一

4.おふくろさん(森進一)
作詞/川内康範 作曲/猪俣公章 編曲/斉藤 恒夫

5.母ちゃんの浜唄(福田こうへい)
作詞/さわだすずこ 作曲/弦哲也 編曲/南郷達也

6.母恋吹雪(三橋美智也)
作詞/矢野亮 作曲/林伊佐緒 編曲/川上英一

7.瞼の母(中村美津子)
作詞/坂口ふみ緒 作曲/沢しげと 編曲/山田年秋

8.一本刀土俵入り(三橋美智也)
作詞/高橋掬太郎 作曲/細川潤一 編曲/白石十四男

9.岸壁の母(二葉百合子)
作詞/藤田まさと 作曲/平川浪竜 編曲/白石十四男

10.おんなの一生~汗の花~(川中美幸)
作詞/吉岡治 作曲/弦哲也 編曲/伊戸のりお

11.かあさんへ(吉幾三)
作詞/吉幾三 作曲/吉幾三 編曲/伊戸のりお

12.母恋酒(福田こうへい)
作詞/吉幾三 作曲/吉幾三 編曲/野村豊

( )内はオリジナル歌手 ※は新録楽曲

 


INFORMATION
2021年1月1日発売
福田こうへい「かんべんナ」

「かんべんナ」 
作詞/万城たかし 作曲/岡千秋 編曲/伊戸のりお
c/w「越後平野」
作詞/万城たかし 作曲/岡千秋 編曲/伊戸のりお
キングレコード KICM-30997 ¥1,273+税

2012年10月24日に「南部蝉しぐれ」で演歌歌手としてデビューした福田こうへい。2021年は節目の10周年を迎える。そんな福田のアニバーサリーイヤー第1弾となるシングル「かんべんナ」は遠く離れた故郷への想いを歌った曲。カップリングの「越後平野」は同地で生きる男を通じてスケール感あふれる風景が浮かぶ作品となっている。

 


profile
福田こうへい
(ふくだ・こうへい)
1976年9月21日、岩手県生まれ。民謡歌手として活躍していたが、2012年10月、キングレコードから「南部蝉しぐれ」で演歌歌手としてデビューする。同曲は元々、今は亡き福田の父、福田岩月のために作られた曲だった。都会の谷間で心が折れそうになる若者が、遠い故郷を思い出しながら頑張ろうとする姿を描いた作品。息子である福田が2010年にレコーディングしCD発売していたが、メジャーデビューをきっかけにロングヒット。2013年には「輝く! 日本レコード大賞」新人賞を受賞し、年末の『NHK紅白歌合戦』に初出場した。また2014年には第35回松尾芸能賞 新人賞を受賞。北島三郎に「あの歌声は歌謡界の宝だ」と言わしめる歌唱と、気さくな語りが人気。2020年には「筑波の寛太郎/あれが沓掛時次郎」をリリース。2021年はデビュー10年目を迎え、1月1日には市川由紀乃との共作アルバム「演歌 夢の競演」と、12作目となるシングル「かんべんナ」を同時リリースする。

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