花咲ゆき美の”リンゴボイス”が際立つドラマティック歌謡

11月4日に発売される花咲ゆき美の新曲「雪窓」は、”華やかに、甘酸っぱい、青森生まれのリンゴボイス”こと、花咲のキュートで甘い歌声が際立つ作品。楽曲についてのさまざまな思いをじっくり語ってもらった。

鋭い歌詞に思いをのせて

深々と降り積もる雪は、静かに、しかし容赦なく眼前の景色を変えていく。その光景を、家の窓辺から見つめるひとりの女性。雪は失った恋の痛手と重なり、心の吹雪となって哀しみを募らせる――。

2007年に「哀愁本線」でデビューした花咲ゆき美の16枚目のシングルは「雪窓」。恋に破れた哀しい女性の心情を、高音を響かせた透明感のある歌声で歌い上げる。作家陣は前作の「恋樹氷」と同じ、作詞・石原信一、作曲・国安修二、編曲・萩田光雄だ。

「東北生まれで寒い時期のリリースが多いせいか、今回もまた冬の歌をお届けします(笑)。前作の『恋樹氷』よりもポピュラーな歌詞で、聴く方にとってより身近に感じる内容かと思います。でも、途中の『愛は死ぬのですか』という歌詞はドキッとするほど鋭くて、それほどの強い思いがこの歌には込められています。私自身、とても気に入っているフレーズです」

心途切れたなら 愛は死ぬのですか
指が髪が胸が 今もさがしてるの
(「雪窓」歌詞より)

当初はメロディーを意識しながら歌唱していたが、言葉をできるだけきちんと発音して歌ったほうが、より身に染みる歌になると気づいたという。

そして、サビの部分である「指が 髪が」(一番)、「部屋の 鍵も」(二番)、「いつか 奇蹟」(三番)は、花咲ならではの歌声に酔える聴かせどころだが、歌詞を尊重しながら歌う時は高音をマックスでなく抑え気味に。そのうえで、ラストの『雪窓~』へと思いをつなげながら最高潮へと運んでいる。

「カラオケで歌うときは、ぜひここを意識してください(笑)。作曲の国安先生はいつも『好きなように歌っていいよ』とニコニコしておっしゃってくださり、レコーディングもリラックスして行うことができました。この曲は音域が広く、サビの前の『心途切れたなら』の『な』がもっとも低いんです。先生でさえ出ない時もあると笑うくらいで、そこを『な』直前で一度ため息をつくようにすると、次の声が出やすくなります。今回の曲は、私にとってもとても勉強になりました」

ワンランクさらにアップした花咲ゆき美に出会えるニューシングル「雪窓」。ちなみにこのタイトルは、曲名として過去にないものだという。タイトルとともに臨場感を味わいながら楽しみたい。

 

カップリングは令和風「涙そうそう」

カップリングに用意されたのは、やはり同じ作家陣による「あなたがいるから」。キュートで親しみやすい人柄の花咲に、そんな言葉を投げかけられたらどんなにうれしいか……と思ってしまうが、演歌・歌謡曲といった趣ではなく、J-POP系の明るくやさしい曲調が印象的だ。

「健気に生きるかわらしい女性像が浮かび、感情移入しやすい曲。“もうそばにはいないけれど、初めて自分に笑顔をくれた特別なあなた”というテーマでつくられ、愛した人との思い出だけでなく、私の場合は亡くなった父や愛犬のことを思い浮かべたりします。ですからどのような対象でもいい。皆さんそれぞれに心の中の記憶をよみがえらせ、懐かしみながら、聴いたり歌ったりしていただけたらうれしいです」

イントロが始まる直前には、小刻みに音を繰り返すリズムループの手法が採り入れられている。意識しないと聞き逃すほどだが、寂しい心情を前向きにさせるような、スパイスを効かせた効果音となって曲を盛り上げていく。

「ひと言で言うとこの曲は、令和風『涙そうそう』。悲しいけれど、決してそのようには歌わない。かつて師匠の作曲家・新井利昌先生に『メジャーな曲ほど悲しみを伝えられる』と教わりました。今回の曲はまさにそれです。当初は感情を表現しようとしすぎた私ですが、むしろ自然に歌ったほうが涙をそそることに気づきました。悲しい歌ほど感情を出しすぎず、でも聴く人にはその悲しみがしっかりと伝わるように。それができるかどうかで歌手の真価がわかると、そう言った師匠の言葉も思い出しながら歌っています」

そんな花咲、9月に39歳の誕生日を迎えた。失恋の歌でもあるのでイメージを変えたい、そして30代最後なので冒険もしてみたいと、長かった髪をバッサリ切った。思い切ったイメチェンだったがファンの反応は上々。本人も気に入っているのだが……。

「歌手仲間が意外と気づいてくれなかったんです。髪をアップにすることが多かったせいか、どうもシルエットが大きく変わらなかったようで。私の横を三度通り過ぎてやっと気づいた人もいたくらい。そんな~って感じです(笑)」

(文=藤井利香)


花咲さんに、もうちょっと聞きたい!
「今、絵本とお手玉に挑戦中です!」

定期的に行っているアコースティックライブで、少し前から始めた朗読のコーナー。その後、YouTubeの「ゆき美チャンネル」でも公開していて、これまでに「母犬(小川未明)」と「ピエロとワンタ(はるのあおぞら)」という素敵な絵本を朗読しました。コロナ禍ということもあり、子どもにも大人にも受け入れられるよりよい内容の本を探しています。朗読はひとり芝居。声を変えながら気持ちを込めて読む、とても楽しい時間です。もっともっとうまくなりたいですね。

▼花咲ゆき美ちゃんねる【読み聞かせ】心がほっこりする作品『母犬』を読んでみた。【朗読】


 ▼【朗読】ピエロとワンタ【読み聞かせ】

 
そうそう、最近はファンの方からプレゼントでいただいて、「お手玉」にも再挑戦中。小学生のころなどいつも3つほどを手に持って、上手だったんですよ。でも、残念ながら腕がガタ落ち(笑)。復活の様子を早くファンの方にお見せしたいとがんばっています!

▼昔ながらの懐かしいおもちゃ【お手玉】で【脳トレ】健康法

 


2020年11月4日発売
花咲ゆき美「雪窓」

「雪窓」は去っていった男性を忘れられない思いを歌い上げる、涙が凍りつくほど哀しい物語。ドラマティックなメロディーに包まれた、花咲の魅力的な甘くキュートな歌声が際立つ三連歌謡だ。c/w「あなたがいるから」は、“もうそばにはいないけれど、初めて自分に笑顔をくれた特別なあなた”というテーマでつくられたという。淡々と歌う中に哀愁をたたえた花咲の表現力で、切ないながらもやさしい気持ちになれる一曲。


Profile
花咲ゆき美(はなさき・ゆきみ)
1981年9月8日、青森県生まれ。小学校6年生の時に母親が経営するカラオケ喫茶で歌を歌っていたところを偶然居合わせた音楽関係者の耳に留り、「君の声は演歌に向いている」と言われたことがきっかけで演歌歌手を志すようになる。さまざまなコンテストに出場し好成績を残し、2002年から作曲家の新井利昌(としあき)氏に師事。2005年、日本クラウン制作部のオーディションで合格しレッスン期間を経て、2007年「哀愁本線」でデビューを果たした。11月8日には、東京・目黒のカラオケラウンジKahoo(カフー)にて、こちらも花咲が力を入れて開催している「花咲ゆき美アコースティックライブvol.8 with 清水ゆかり」を人数を制限し、新型コロナ感染予防策を徹底した中で行う予定。
さらに、当日『ツイキャスプレミア』(有料配信)にてライブを生配信する。
詳細は、花咲ゆき美ホームページで。
http://t-force1.com/

関連記事一覧