氷川きよしが恒例の「きよしこの夜」で1万人を動員。来年発売の新曲「群青の弦(いと)」をサプライズ披露!
21回目の幕開けは「ダイヤモンド富士」
氷川きよしが12月15日、東京・千代田区の東京国際フォーラムホールで毎年恒例の「氷川きよしスペシャルコンサート2021~きよしこの夜Vol.21~in 東京国際フォーラム ホールA」を開催した。デビュー2年目の2001年からスタートして今年で連続21回目を迎えたこのクリスマスライブは、前日14日とこの日の2日間(全4公演)開催され、全国からファンが来場し、約1万人を動員した。
第1回目の時、24歳だった氷川は、大ホールでのコンサートに高熱が出るほど緊張したが、「あっという間に21回目です。私も生身の人間ですので、年とともに年齢を感じるようになってきました(笑)。でも、氷川きよしが全力で精いっぱい頑張ることで、今日お越しのどなたか一人でもいいから、『明日から頑張って生きていこう』と励ますことができたらうれしく思います」と、ファン思いの氷川らしい言葉を投げかけた。
その年の集大成となるこのコンサートのオープニング曲がどの曲になるのか、毎年、ファンの間で大きな話題になるが、今回、氷川は初披露となる「ダイヤモンド富士」を選んだ。全47都道府県を舞台にしたオリジナル曲を50曲収録した自身初のBOX『旅うたスペシャルBOX』(12月22日発売)からのセレクトだ。
氷川は、銀糸の刺繍とスワロフスキーを散りばめた煌びやかな白ロングジャケットの洋装で登場すると、ダイヤモンドを冠した富士の映像をバックに、保岡直樹が作詞し、恩師・水森英夫が作曲した作品を、“はるか頂上 まさに今 光を放ち 陽が昇る”と歌い始めた。
そして、今年3月30日発売の前作シングル「南風」や、そのAタイプカップリング曲「たわむれのエチュード」、今年6月にリリースしたアルバム『南風吹けば』から「星空のメモリーズ」を歌うと、「きよしこの夜Vol.21」は華やかに幕開けした。
2022年発売の新曲は「群青の弦(いと)」
バンド演奏の間に、シックな黒の燕尾服に着替えた氷川は、やはり初披露となる「松山空港」「風の津和野」の2曲を歌唱。『旅うたスペシャルBOX』に収録した、愛媛と島根を舞台にした新曲だった。
氷川いわく”大人なムード”で定番の「母」「星空の秋子」をアコースティックアレンジでしっとりと歌い上げると、客席からため息がこぼれた。また、「きよしのズンドコ節」を久々にオリジナルアレンジで歌いこのコーナーを締めくくった。
紺の袴姿で三度登場すると、初期の作品から「白雲の城」をア・カペラで歌い出し、こぶしを響かせた艶やかな歌声で観客を酔わせると、「大井追っかけ音次郎」、2000年2月2日のデビュー曲「箱根八里の半次郎」などを歌唱。その和の衣装で来年発売予定の新曲「群青の弦(いと)」(発売日未定)をサプライズ初披露しした。
同曲は、「春の海」でお馴染みの箏曲家・作曲家の宮城道雄さんをモデルにした作品だという。1894年(明治27年)に兵庫県に生まれた宮城さんは、生後200日で目の病気にかかり、4歳の頃には生母とも生き別れ。8歳の時には完全に失明してしまうが、11歳の時に免許皆伝を受けた箏曲の世界で頭角を現し、35歳の時に自らが作曲した「春の海」では世界的な名声を得ることになる。しかし1956年(昭和31年)、演奏会のために大阪へ向かう列車から謝って転落するという衝撃の死を遂げてしまう。享年62。2024年には生誕130年を迎える。
「久しぶりの演歌です。『春の海』を作曲された宮城道雄さんを題材にした作品です。宮城さんは幼い頃に失明されましたが、目が見えないというハンディがあってもその苦悩から喜びの歌をお作りになられ、感銘いたしました。どんなハンディがあろうと、どんなふうに生まれようと、そこからまた頑張ろうという気持ちさえあれば、芸術というのは無限の可能性がある。そんな限界を突破していく思いをこの作品に感じています」
氷川は新曲への熱い思いを語ると、朗々と歌い上げた。語りから始まる王道演歌を見事に歌い上げる氷川の歌力を満喫できる作品だ。
“魂の叫び”からの軽快なステップへ
後半は、今年8月発売のポップスアルバム第2弾『You are you』から選曲してスタートした。紫のドレス姿で「紫のタンゴ」、そして「生まれてきたら愛すればいい」では歌詩をスクリーンに投影するリリックプロジェクションを用い、魂の叫びのように情熱的に歌唱した。
続いて氷川は、真っ赤なラインストーンの”kiina”のロゴが付きの帽子を被り、アーミー調の赤のショート丈のジャケットと黒の部分網タイツ風のボトムスの洋装で、前半はバイクにまたがり「Glamorous Butterfly」を妖艶に歌い、一転、「限界突破×サバイバー」ではシャウトする氷川にファンのボルテージも最高潮となり、色とりどりのペンライトと、今回、初めてオリジナルグッズとして発売された“光るうちわ”が激しく揺れた。
暗転したホールに氷川のオリジナル曲の「きよしこの夜」のバンド演奏が流れると、ステージのスクリーンに2001年から今年までの「きよしこの夜」のパンフレットの表紙が映し出され、この21年を懐かしく振り返った。
氷川はカジュアルなピンクの洋装で蛍光ピンクの自転車に乗ってステージ上段に姿を現すと、ペダルをこぎながら最新シングル「Happy!」を、12月7日に発表したばかりの最新クリスマスソング「It’s a merry Christmas!」(作詞・作曲/中西圭三)、「Very Merry Xmas」(作詞・作曲/河口京吾 「桜」の大ヒットで知られるシンガーソングライター・河口恭吾の作家名)をクリスマスムードいっぱいに歌った。「It’s a merry Christmas!」」ではその場でジャンピングするように軽快にステップを踏み、”♪ずっと”と、歌いながら客席を指した。
7変化、全29曲。最後は“まるごとの氷川きよし”
いよいよ迎えたフィナーレ。氷川は「森を抜けて」をステージ階段に腰かけ、語るように歌い出し、観客をロマンチックな世界にいざなった。同曲は氷川がカバーしたフレディ・マーキュリーの「ボヘミアン・ラプソディ」の訳詩を手がけたのが湯川れい子との縁で、直木賞作家の林真理子が作詞した楽曲だ。
アンコールに、氷川はエンディングでのピンクの衣裳のジャケットを脱いだだけのシンプルな出で立ちで臨んだ。
それはこれから歌う3曲で素の自分、飾らない“まるごとの氷川きよし”を伝えたいという熱い思いを感じさせるものだった。氷川こと“kii”が作詞した「WALK」を歌うと、ファンの健康を気づかった。
「いよいよ今年も終わろうとしていますが、どうか皆さん、体と心を大切に元気にお過ごしいただいて、2022年も健康でいていただきたいなと思います。皆さんの健康と幸せが自分の願いですし、だからこそ歌を歌っているわけです」
氷川自身の幼少期の苦悩から生まれたという自身の詩による「You are you」(2021年8月24日に発売したポップスアルバムの表題曲)を、ラストはGReeeeNが楽曲提供した「碧し」までを歌って締めくくった。
氷川が七変化、全29曲を熱唱し終えると、会場は万雷の拍手に包まれた。2022年、そして未来へとつながるコンサートだった。
(構成=親松尚子)