多岐川舞子の新曲「恋いちもんめ」は杉本眞人との初タッグで挑む意欲作
9月22日発売の多岐川舞子の新曲「恋いちもんめ」は、プライベートでも親交の深い杉本眞人が初めて多岐川のために書き下ろした楽曲だ。女性なら誰もが経験のあるかわいらしい恋心を、多岐川らしくさわやかに歌い上げ、これぞ杉本眞人節! といえるギターが印象的な曲に仕上がっている。ボーナストラックに収録されている「幸せめぐり」は、コロナ禍だからこそ力を入れているというYouTubeチャンネルから生まれた、多岐川本人による作詞・作曲作品。新曲への思いやエピソードを聞いた。
語りかけるような「恋いちもんめ」はわらべうたがモチーフ
「恋いちもんめ」は、わらべうたがモチーフのかわいらしい曲ですが、“恋に恋する年頃はとっくの昔に過ぎました”とは、どのくらい大人世代の女性が主人公なんでしょうか。
多岐川 目がハートになってしまうような恋が、学生の頃にはあったじゃないですか。彼の顔を見るだけで、「恥ずかしくてしゃべれな~い」という感じの恋愛が。そういうのは、とっくの昔に過ぎましたよね(笑)。この曲は、その後の女性だったら、私の年代でも30代でも誰でも当てはまると思います。満開の桜だけじゃなくて、散りゆく景色を見ながら“ああ、はかなくて綺麗だな”とか“なんか淋しいな”って感じるようになるの。誰でもそんなふうに年を重ねて来ているはずで、女性ならきっと経験があると思うんですよね。
子どもの頃、無邪気に歌っていた“どなたが欲しい?”。大人の恋の話となると、まったくイメージが変わって、切なく胸に迫ってきますね。
多岐川 そうですね。それとね、この歌の“勝ってうれしい”“負けてくやしい”は、もちろん恋のことなんですけど。私は、コロナ禍で何もできない今の気持ちも重なるの。別に、何かに負けているわけではないんですけどね。今の状況が収まったらうれしい気持ちで皆さんに会いたい、今は思うように動けなくて悔しいという裏腹な気持ちが、胸にこみ上げてきます。杉本先生から初めてこの曲を聴かせていただいた時、色々な思いが入り混じって、涙腺がじゅわーって緩んだんですよね。
レコーディングは、いかがでしたか。
多岐川 すごく楽しかったです! こんなに楽しいレコーディングってあるのかなっていうくらい。杉本先生に曲をいただくのは初めてでしたが、普段から親しくさせていただいているんです。石原詢子ちゃんと大石まどかちゃんと先生で、たまに集まってカラオケに行ったり、ご飯を食べに行ったりする仲で。いつもフランクにお友だちみたいにお話させていただいてるから、レコーディングもその延長でした。でも先生の才能、ひらめきや感性が出る瞬間があるので、それはすかさずキャッチして(笑)。私は、カラオケでもいつも“歌いすぎる”って言われるんです。この曲は、「しゃべるような調子で歌うんだよ。最初の4行は特に歌いすぎないでね」と言われました。
カップリングに「柳川しぐれ」をまた選ばれたのは、どうしてでしょうか。
多岐川 この曲は「雨のたずね人」(2011年発売)のカップリングで、隠れファンがすごく多いんですよ。私もこの曲、大好きです。作曲の徳久先生に、ワルツをメイン曲にしたことが一度もないから、この曲をリメイクしてもう一回出したいって言っていたくらい。今回は思いがけずフォーク調の曲をいただいたので、カップリングは演歌がいいなと思って、この曲になりました。演歌ファン、カラオケ好きの方なら、こちらのほうが好きという方もいらっしゃると思いますよ。柳川のゆったりした流れを歌った本当に良い歌なので、カップリングではもったいなかったなと、ずっと思っていました。なのに、今回もまたカップリングなんですけど(笑)。改めていい歌だと認識していただけたらいいな。
皆さんと、いつかまた会える日を信じて
ボーナストラックの「幸せめぐり」は、ご自身で作詞作曲された曲なんですね!
多岐川 「幸せめぐり」は、私にとってもボーナストラックで、入れていただけるなんて思っていなかったんですよ。YouTubeで「開運!舞子の御朱印巡り」をやっていて、“テーマ曲を作っていいですか?”なんて、ピアノでポロポロ弾いた曲を、神社の鳥居をくぐるシーンのバックに流していたんですね。次に“詞を付けちゃっていいですか?”って、旅先で書いた詞をつけたものを生配信で発表したら、皆さんとても喜んでくださって。“もしよかったら、編曲してこれもCDに入れてもらえないかな~。”って言ったら、それが通っちゃったんですよ!
ちゃっかりお願いしてみたことが次々に叶って、CDに収録されたなんて素晴らしいです。「幸せめぐり」って、御朱印巡りのことだったんですね。
多岐川 そうなんです。YouTubeをやっていなかったら、御朱印巡りをしていなかったらできていなかった曲です。こんな時代で皆さんとあまり会えないけれど、一緒に手を合わせて、あなたと幸せめぐりをしましょうという気持ちで書きました。じっとしているのが苦手なので、自分も楽しみながらYouTubeは続けたいです。この間実家に帰った時に「舞子のおいでやす京都」を撮ったんですけれど、膨大な量なので編集をどうしようかな。京都の良いところ、皆さんの知らない穴場を紹介したいと思っています。本当は早くコロナ禍が収まって、YouTubeに手が回らないくらい忙しくなって欲しいんですけどね。
せっかく新曲をリリースしても、キャンペーンなどは難しい状況ですね。
多岐川 しかたないことですけれど、なかなか会えないファンの皆さんが、お元気かなといつも気になっています。「ブログを見て、元気をもらってるよ」と言ってくれる方がいるので、ブログは私からのお便りのつもりで続けています。YouTubeも同じで、きっとまた会える、会いたいなと思う気持ちをお互いに育てたくて。私もたまに淋しい気持ちになることもあるんですけれど、必ず会える日が来ると信じているんですよね。楽しいことを考えて生きたいです。“ああ、どうしよう”ってなると負の思考の連鎖になりますからね。楽しいことを考えて笑っていると、それを見た誰かが喜んで笑ってくれます。
「恋いちもんめ」、「柳川しぐれ」をカラオケで歌うコツを教えてください。
多岐川 「恋いちもんめ」は、とつとつと語りかけるように、歌いすぎないように。“どなたが欲しい?あなたが欲しい”のところは、充分に気持ちを乗せてくださいね。まずは難しく考えないで、さりげなく口ずさんでみてください。「柳川しぐれ」は3拍子なので、身体を揺らして拍子を取って、ほんのり笑顔を浮かべながら。“柳川しぐれ”のレガートを柔らかく流れるように歌うのがポイントです。どちらもかわいい女性の歌ですから、皆さんもかわいらしく歌ってくださいね。
最後に、ファンの皆さんやオトカゼの読者へメッセージをお願いします。
多岐川 「幸せめぐり」の歌詞にあるように、“いつか会えるその日まで”。私も今やれることを一生懸命にやって進んでいきます。必ずまた楽しい日々を皆さんと共有できるよう、頑張っていきたいと思います。皆さんも、身体には気をつけて。私の歌が癒やしや楽しみになって、皆さんの力になってくれたらいいな。これからもよろしくお願いします。
(取材・文=夏見幸恵)
2021年9月22日発売
多岐川舞子「恋いちもんめ」
多岐川舞子の新曲「恋いちもんめ」は、揺れる恋心をわらべうたの「花いちもんめ」になぞらえたノスタルジックな曲。杉本眞人の真骨頂であるギターの音色と、フォークタッチの曲調が心に沁みる。カップリングには多岐川の隠れた人気曲「柳川しぐれ」を収録した。さらにボーナストラックとして、YouTubeチャンネル内で多岐川自身が作詞・作曲した楽曲「幸せめぐり」も収録されている。
Profile
多岐川舞子(たきがわ・まいこ)
1969年11月24日、京都府南丹市生まれ。16歳でNHK「勝ち抜き歌謡天国」奈良大会で優勝、市川昭介の目に留まる。高校卒業と同時に上京、1989年「男灘」でデビューを果たす。1996年「夢織り酒場」1997年「津軽望郷譜」「幻海峡」が3作連続でオリコン誌演歌チャート1位、2003年「信濃川」では4週連続1位になるなど、ヒット曲多数。明るく人情味あふれる性格で感激屋。趣味は食べ歩き(焼肉・寿司・もつ鍋・四川料理・インド料理からスイーツまで)、最近はB級グルメにもハマっている。