
“アジアの歌姫”テレサ・テン没後30周年記念コンサート。郭静の呼びかけに中澤卓也、謝鳴、梅谷心愛らが出演。稀代の歌姫の歌声は色褪せることなく
“アジアの歌姫”テレサ・テンの没後30周年を記念するチャリティーコンサート「Go With The Flow ~時の流れに身をまかせ~」が11月23日、東京・港区のニッショーホールにて開催され、アジアにルーツを持つアーティストたちが一堂に会し、永遠の名曲の数々を現代に歌い継いだ。

台湾出身のテレサ・テン(鄧麗君/1995年5月8日没)は、1970年代から90年代にかけて東アジア全域で絶大な人気を誇った歌姫。その可憐な歌声と、国境を超えて愛を歌う姿勢は、没後30年となる2025年の現在も多くの人々の心に深く刻まれている。
本公演は、自身も歌手として活動し、テレサ・テン東京ファンクラブの会長でもある郭静(カク・シズカ)の尽力により実現した。同ファンクラブは、テレサ・テンを日本に導き“日本のお父さん”とも呼ばれた舟木稔氏との出会いを経て、3年前の2022年9月に設立され、以来、テレサ・テンに関するイベントやコンサートなどを開催している。


コンサートは女優・演出家など多彩な顔を持つ島之原樞(くるる)の司会により進行。二胡奏者・ビェンカによる「時の流れに身をまかせ」の独奏で幕を開けた。

哀愁を帯びた音色が響き渡ると、続いて中国・河南省出身の張瑩(チョウ・エイ)が「夜来香(イェライシャン)」などで華やかな雰囲気を演出。「夜来香」は、日本では李香蘭(山口淑子)が歌ってヒットしていたが、テレサもよく歌っており、1994年にリリースされた、彼女の日本での生前最後のシングル曲でもあった。

続いてステージに立った実力派シンガーソングライターの川島ケイジは、谷村新司が歌い、アジアで根強い人気曲となっている「昴」を圧倒的な声量で歌唱。大切な人や遠く離れた人を想う「輝いてMake a wish」なども届けた。同曲は北海道出身のフラワーアーティスト 隆陽子氏によりプロジェクトが始動。同じく北海道を拠点として活動するKiami(キャミ)が、2022年に初の作詞作曲作品としてリリースし、フィーチャリングとして川島がゲストボーカルとして歌った作品だ。ステージでの川島は、テレサ・テンのことを思い浮かべながら歌ったと明かした。



中盤には、若手世代の代表として”令和の昭和歌謡少女”こと梅谷心愛が艶やかな着物姿で登場した。この日、唯一、着物を着ていた梅谷は、テレサ・テンの代表曲のひとつ「つぐない」を披露した。同曲はテレサが日本再デビュー後の1984年に発表。約100万枚の大ヒット曲となった。

歌い終わった梅谷は、「皆さんこんばんは! 令和の昭和歌謡少女・梅谷心愛、18歳です!」と元気いっぱいに挨拶すると、「実は10月に18歳になったばかりなんです」とはにかんだ。
テレサ・テンとの思い出については、「私のおばあちゃんが、テレサさんが大好きで、小さい頃からずっと聴かせてくれたり、歌ってくれたりしました。9歳くらいの時に聴いた『つぐない』が、大人の曲だなあと、子ども心に一番残っています」と明かし、「今日は少し大人っぽく歌ってみたんですが、ちゃんと歌えていましたか?」と客席に呼びかけると、温かい拍手が送られた。



さらに、2023年のデビュー曲「磐越西線ひとり」を歌唱すると、「『こころー!』という掛け声をやってほしいです!」とリクエスト。セカンドシングル「秘密の花」のサビでは “こころコール”によって会場がひとつになった。短い出演時間だったが、「この顔、この着物、この歌声を覚えてください」とアピールし、初めて梅谷を知った観客の心もしっかりつかんでいた。

オペラ歌手としても活躍するケン・カタヤマが「シクラメンのかほり」(テレサ・テンが「ニィ我相伴左右」としてカバー)で大人の世界観を見せた後、コンサートは上海出身の歌手・謝鳴(シャメイ)のステージへ。

“生きているだけならば 儚すぎる 何故にわたしは 生まれてきたの”とテレサの香港への愛が歌われた「香港~Hong Kong~」をカバーして聴かせると、ビッグサプライズが用意されていた。

謝鳴の呼び込みで、女優・歌手の荒木由美子が「ウエディングドレスを着るのは結婚式以来です(苦笑)」と、深紅のドレスに身を包んでステージに登場したのだ。荒木は1979年のドラマ『燃えろアタック』でヒロイン・小鹿ジュンを演じ、同作は中国でも『排球女将』(役名:小鹿純子)のタイトルで放送され、最高視聴率80%以上とも言われる社会現象を巻き起こした。
謝鳴が「中国では知らない人はいないほどの大スターです」と紹介すると、荒木は「40年以上経っても、中国のファンの方が私のことを覚えていてくださり、本当に驚きと感謝でいっぱいです」と感慨深げに語った。謝鳴を通じての縁で、二人は上海でのコンサートでも共演している。

この日は、中島みゆきの「ひとり上手」をテレサがカバーし、中華圏で大ヒットした「漫歩人生路」をデュエットで披露。荒木が日本語で、謝鳴がテレサの歌った広東語で歌声を重ねるという、日中友好を象徴するパフォーマンスに、客席からは万雷の拍手が送られた。さらに謝鳴は、テレサのヒット曲を多数手がけた荒木とよひさ氏が作詞作曲した自身の最新曲「Tokyoに傷ついて」を歌唱した。

後半のスタートは主催者である郭静(カク・シズカ)のステージから。純白のドレスで現れた郭は、「月亮代表我的心(月は何でも知っている)」をしっとりと歌い上げた。

トークコーナーでは、テレサ・テンの音楽と遺志を次世代へつなごうとする舟木稔氏との絆や、3年前のファンクラブ設立の経緯が紹介され、郭静は主催者として、そしてテレサを深く敬愛する一人の歌手として、来場者への深い感謝を示した。その後、テレサが1985年の「NHK紅白歌合戦」に初出場を果たした「愛人」、「夜のフェリーボート」を熱唱し、会場を感動の渦に巻き込んだ。

終盤になると、幅広い楽曲にも挑戦しているシャンソン歌手のケイ潤子が、1974年、当時21歳だったテレサが日本デビュー2作目のシングルとして発表し、日本レコード大賞新人賞を受賞した「空港」などをドラマチックに歌唱した後、ステージに現れたのは中澤卓也だった。

照明を反射して輝くスパンコールのジャケットに身を包み、日本有線大賞有線音楽賞を受賞した「別れの予感」をカバー。同曲もまたテレサの人気曲のひとつ。中澤は甘く伸びやかな歌声で聴かせた。


中澤は今年5月に開催された「テレサ・テン あなたに逢いたい 没後30年 メモリアルコンサート」にも出演しており、テレサ・テンを偲ぶコンサートに出演するのは、今回が2度目。スパンコールのジャケットについては、主催者である郭から『キラキラした衣裳を着てほしい」とリクエストされて選んだそうだが、「久しぶりに着ました。眩しくないですか」と笑っていた。


中澤はその後、デビュー曲「青いダイヤモンド」と新曲「青い空の下」を歌唱。デビュー曲では、「僕一人が歌ってもこの曲は完成しません!」と、梅谷同様、“卓也コール”を呼びかけ盛り上げた。


中澤のステージが終わると、郭静が再びステージに現れた。クライマックスとして、郭静と中澤卓也による「そしてめぐり逢い」、郭静と川島ケイジによる「時の流れに身をまかせ」のデュエットが披露された。
「そして…めぐり逢い」は五木ひろしが1985年にリリースしたが、のちにテレサ・テンとのデュエットバージョンが発売された。「時の流れに身をまかせ」は「つぐない」「愛人」に続いて1986年にリリースされ、日本有線大賞・全日本有線放送大賞ともに史上初の3年連続グランプリを受賞。日本レコード大賞では金賞を受賞した。


こんなシーンも。最後に出演者全員がステージにそろうと、司会者から各アーティストに今日の感想が求められた。まずは最年少出演者・梅谷心愛が、「私のことを知らない方もいらっしゃったと思いますが、温かく見守っていただきありがとうございました」とコメントしたところで、時間の関係から他は割愛することに。出演者を代表してコメントしたことになった梅谷は、「重い、重い! 困ります」と中澤卓也に助けを求めていた。中澤が「今日はありがとうございました!」と一言助け船を出すと、会場は笑いにつつまれた。こんなハプニングも生のステージならではだった。
ラストは出演者全員がステージに勢ぞろい。ストリートミュージシャンの草分けと呼ばれるサックスプレーヤー三四郎が奏でる印象的なイントロが響きわたると、1986年にリリースされたポップなナンバー「スキャンダル」を郭静、謝鳴、張瑩を中心に合唱。「テレサ・テンの没後30周年を記念するチャリティーコンサート Go With The Flow ~時の流れに身をまかせ~」は温かい拍手の中で閉幕した。


この日は、改めてテレサ・テンという稀代の歌姫の存在の大きさを再確認する日となった。没後30年を経てなお、彼女の歌声は色褪せることなく、世代や国境を超えて輝き続けている。
なお、コンサート収益の一部は、郭静がシングルマザーや子どもたちの支援活動にも積極的に協力していることから、「埼玉子ども食堂」へ寄付される。











