
吉村明紘、“アッキー”から“ダンディ”へ、38年目の新境地。新曲『俺でいいなら』で新たな魅力開花
甘く優しい歌声でファンを魅了し続ける吉村明紘が、約3年ぶりとなる新曲『俺でいいなら』をリリースする。これまでの吉村のイメージを覆すような大人の渋みと包容力に満ちた意欲作だ。“アッキー吉村”から“ダンディ吉村”――新たな魅力が開花した。

カラオケ20曲熱唱から始まった“新体制”
1988年、徳間ジャパン第1回演歌新人コンテストで優勝し、同年「男なら女なら」でデビューした吉村明紘。デビュー38年目を迎え、2年後の40周年へ向けた新たなスタートラインに立っている。
思い起こせば、前作『KAWASAKI』(2023年10月)のリリースは、自身が拠点とする“第2の故郷”川崎の市制100周年イヤーと重なり、デビュー35周年記念曲として発表した。
「この間、本当にあっという間でしたね。川崎の皆さんに愛していただいて、いろいろなところで歌わせていただき忙しくさせてもらっていたので、今回のリリースが3年ぶりという感覚が全くないんですよ」
それだけ充実した日々を送ってきたこと、新曲制作に時間をかけたことがその理由だが、今作は制作体制が一新された。新たな担当ディレクターとの出会いが、吉村の新たな扉を開けることになる。
「去年の11月頃でしたか。新しく担当してくださるディレクターから、『まずは一度、吉村さんの生の声をしっかり聴かせてほしい』と言われたんです。それで一緒に品川のカラオケボックスに行きまして、20曲ほど自分の持ち歌をはじめ様々なタイプの楽曲を歌いました」
吉村の歌声のポテンシャルを目の当たりにしたディレクターは、一つの方向性を見出す。誰もが知る男性アーティストを例に、「そうしたファン層にも響く、渋めで哀愁のある路線でいってみませんか」。ここから、新曲のプロジェクトが具体的に動き出した。

恩師との模索、そして“トイレ逃亡事件”
作曲は、吉村の代表曲『門前仲町ブルース』や『北のたずねびと』などを生み出してきた徳久広司氏が担当することになった。徳久氏は、「これまでのように声を張る歌ではない作品」を吉村に歌わせようとしていた。だが、制作の初期段階では、思わぬハプニングもあった。
「最初に徳久先生のところへご挨拶に行った時、先生がギターを弾きながら『こんな感じはどう?』ってメロディーを聴かせてくださったんです。でもそれが、ちょっと僕の思っていたイメージと違う方向に感じてしまって…。どうしようと思って、とりあえず『すいません!』って一度トイレに逃げ込んだんですよ(笑)」
トイレの中から徳久氏とディレクターが喧々諤々するのを聞いていたという吉村だったが、後日、仕上がってきた作品は想像以上の出来栄えだった。
初めての「俺」、そして大人の色気と安心感
作詞は、女性の心の機微を描くことに定評がある麻こよみ氏。上がってきたタイトルを見て、吉村は驚きを隠せなかった。
「これまでの作品は『僕』とか『君』という言葉ばかりで、『俺』とか『お前』って歌詞の中で使ったことがなかったんです。後日、情報解禁日にいつも応援してくれているファンの方にタイトルは『俺でいいなら』だと伝えたら、『おお、いいじゃない!』と即答されて。それですごく自信になりました」
徳久氏からカセットテープに吹き込まれたデモ音源が届いたのは3月頭だった。
「先生はいまだに、ラジカセのスイッチを『ガチャン』って押して録音するんですが、自宅のカセットデッキでデモ音源を聴いた瞬間、『あ、これだ』と。普通、メロディーを覚えるために何度も聴くと飽きてくるんですが、この曲は1時間くらい、気がつけば25回ほど連続で聴いていました。何度も何度も聴きたくなる作品でした」
「俺でいいなら」は、過去の恋に傷つき、バーのカウンターで一人寂しげにグラスを傾ける女性を、そっと優しく包み込もうとする大人の男性の深い愛情と包容力を歌った楽曲。相手の過去をすべて受け入れ、強がって笑顔を見せようとする女性に対し、「つらい時には 泣くだけ泣いて」と寄り添い、「俺でいいなら そばにいてあげる」と語りかける。聴く者の心にじんわりと染み渡り、大人の色気と安心感を与えてくれる珠玉のムード歌謡に仕上がっていた。

低音への挑戦と、「間」の美学
3月下旬にオケ録りを終え、4月1日にいよいよ歌入れ本番。堂々とした佇まいからは想像もつかないが、実はかなりの「緊張しい」だという。
「レコーディングの前日は緊張して一睡もできないんです。いつも目をシバシバさせながら歌っています(笑)」
歌いこなすには大きな壁もあった。
「キーがかつてなく低いんです。楽曲は低い『G』の音から始まります。最初、デモはDマイナーだったんですが、ディレクターが『ちょっと低くてもいいからCマイナーで歌ってみて』と。無理して低い声を出したら、『よし、その声でいこう!』って(笑)。低音をしっかり響かせるのは難しかったですね」
さらに、徳久氏からのディレクションも飛んだ。
「先生は『もう十分歌えているから、あとは出だしの語頭と、語尾の処理、そして何より“間(ま)”を大事にしなさい』と。そこを強く意識して歌いました」
完成した音源を身内に聴かせたところ、特に母親からは「すごく覚えやすくて、耳に残る」と大好評だったという。

ホワイト吉村とブラック吉村
今作は、カップリング曲『こんな俺でも良かったら』とのコントラストも大きな聴きどころだ。
「表題曲が、傷ついた女性のすべて受け入れる優しい『ホワイト吉村』だとすれば、カップリング曲はちょっとズルい『ブラック吉村』ですね(笑)。最初は『女泣かせ』っていうタイトルだったくらいで、誰かの移り香を残したまま会いに行くようなダメな男なんです。でも最後に『こんな俺でも良かったら、ついて来い』って強引だけど、優しさも併せ持つ男性の歌です」
表題曲で見せる完璧な優しさと、カップリング曲で見せる不器用な強引さ。二つの対照的な「大人の男」の顔を演じ分ける吉村の表現力は、まさに38年のキャリアの賜物。“アッキー吉村”として愛されてきた親しみやすさはそのままに、今作では低音の渋みと包容力をまとった“大人の男”の表情ものぞかせる。まさに、“ダンディ吉村”誕生を予感させる一曲だ。

「良くできました」を目指して!
プロフィールには「福岡県出身のこてこての九州男児ばい」と紹介されており、ステージでは端正な顔立ちとダンディなスーツ姿で魅了する吉村だが、「ベビースターラーメンとミルクチョコレート」が好物というチャーミングなギャップも持ち合わせている。
「もうベビースターは卒業しようかな。ファンの方からいろんな種類のベビースターをもらって本当にたくさん食べました。最近の好物はフルーツやお肉、鰻ですね。でも、焼肉の上カルビは脂っこくて、ハラミがいいですね。お寿司なら大トロじゃなくて、上限は中トロ(苦笑)」
好きな言葉は「良くできました」だ。「『よくやったね』と言われるとすごくうれしくなる」という。

デビューから38年。2年後の大きな節目に向け、『俺でいいなら』は吉村にとっての大きな挑戦作となる。
「石原裕次郎さんが『北の旅人』を歌われたのは50代。ムード歌謡の旗手として”平成の裕次郎”と呼ばれた加門亮さんが『男の慕情』をヒットさせて、NHK紅白歌合戦に出場されたのは30代後半ですよね。現在63歳ですが、この年齢になってようやくムード歌謡の世界に入らせていただいたような感覚です」
さらに、「多くの方が手間暇かけて新曲をつくってくださる。そうそうあることではありません」と謙遜する吉村に、「新たな挑戦曲『俺でいいなら』をヒットさせて、徳久先生やファンの皆様から『よくやった、良くできました!』と褒められたら最高ですね」と水を向けると、目を細めて頷いた。
「いけると思いますよ」
短くも力強い言葉。柔和な笑顔の奥には、新たな世界観が必ずファンの心に響くはずだという自信が宿っていた。
2026年7月8日発売
吉村明紘「俺でいいなら」

「俺でいいなら」
作詞/麻こよみ 作曲/徳久広司 編曲/猪股義周
c/w「こんな俺でも良かったら」
作詞/麻こよみ 作曲/徳久広司 編曲/猪股義周
徳間ジャパンコミュニケーションズ TKCA-91710 ¥1,550(税込)
深海を思わせる濃紺のジャケット写真。楽曲ができた段階からイメージカラーは「紺でいこう」と決めていたという。濃紺の背景に同じ濃紺の生地で仕立てたスーツ、シャツ、ネクタイをまとって楽曲の持つ深みとダンディズムを象徴している。











