
【ロングインタビュー】藤井香愛、沈黙を破る“依存度200%”の重たい愛。「時計の針が、また動き出した」
「令和の歌謡歌姫(ディーヴァ)」として着実にステップアップを続けてきた藤井香愛。しかし、前作『純情レボリューション』から約1年7ヶ月、彼女のリリース時計は止まっていた。
事務所の退所や先の見えない不安。ファンにとっても、そして何より彼女自身にとっても、長く焦燥感に駆られる期間だったに違いない。
だが、藤井香愛は決して立ち止まってはいなかった。三山ひろしプロデュースの芝居公演『1PPO(いっぽ)』への出演という新たな挑戦、そしてボイストレーニングやパーソナルトレーニングでの徹底した心身の鍛錬。休むことなく自らを磨き上げ、待望の7thシングル『重たい愛でごめん』を世に放った。
表題曲で見せた息を呑むほど美しい赤いドレス姿と、聴く者を圧倒する“重たい愛”。そこには、ファンへの深い感謝と、新時代の歌謡ディーヴァとしての確かな覚悟が込められていた。

「休むことの大切さを知った」空白期間
――前作『純情レボリューション』から1年7ヶ月。ついに新曲『重たい愛でごめん』がリリースされましたね。
藤井:やっと、また新しい私の歌を届けられるんだなと、すごくうれしい気持ちでいっぱいです。
――前事務所を退所されてからの期間、ファンの方はもちろんですが、藤井さんご自身の心の中にも、様々な不安や葛藤があったのではないかと想像します。
藤井:そうですね……。前の事務所を辞めてから新しい体制(現在はコンチェルト・ワークスに所属)で本格的に動き出すまで、半年くらいは宙に浮いているような状態でした。三山ひろしさんにお声がけいただいて舞台『1PPO』に出演させていただいたり、ファンの方との交流イベントなどは少しずつやらせていただいたりしていましたが、ファンの皆さんが離れていってしまうのではないかという不安な気持ちもありました。でも、新曲リリースが決まった時には、皆さんがすごく喜んでくださったので本当にうれしかったですね。

――不安な時期、どうやってご自身のモチベーションを保っていたのですか?
藤井:「必ずステージに戻れる」と信じていました。実は、デビューしてからの7年間、本当にありがたいことに忙しくさせていただいていて、丸一日休みっていうのがほとんどなかったんです。だから、この期間を「神様がくれた、自分を見つめ直す時間」だと考えるようにしました。
今までは毎日毎日、次の日の仕事のことばかり考えていて、12時に寝て朝7時に起きる予定でも、夜中に何度も目が覚めちゃうようなピリピリした状態だったんです。それが、この期間は「嘘みたいに朝まで眠れる!」って感動して(笑)。休むことの楽しさや、心と体をリフレッシュさせることの大切さを初めて知りました。まとまった休みがとれることもなかったので、デビューして初めて旅行へ行きました。すごく近いんですが(苦笑)、伊豆や熱海に! 「今日は何も考えない日」「仕事から離れる日」というのを経験したのは、初めてかもしれません。
――心身ともにリセットできたんですね。
藤井:はい。それに、他の歌手の方々が忙しく活動されているのを見て、「じゃあ、今の私にしかできないことをやろう!」と。(プロデューサーであり作曲家の)幸耕平先生のボイトレの回数を増やしてもらったり、タップダンスのレッスンに通ったり。あと、パーソナルトレーニングを本格的に始めたんです。だから、表舞台にはあまり出ていなかったかもしれないけど、自分の中では「充電」というより「パワーアップのための準備期間」だったと感じています。
――新たな所属先が決まった時はどんな気持ちでしたか?
藤井:本当に生まれ変わったような気持ちでしたけど、これまで歌手として歌ってこられたのも、これから先も歌っていけるのは、前事務所の社長との出会いがなければできなかったことです。スタッフの皆さんを含め絶対に感謝を忘れちゃいけないと改めて思いました。

依存度200%。恋愛に自信がない女性への応援歌
7枚目となる藤井香愛の新曲『重たい愛でごめん』は、依存度200%の情念を”疾走感”でスタイリッシュに昇華したキラーチューン。「命も惜しくない」「死ぬまで一緒にいる約束だけが欲しい」という濃密な愛情表現を、疾走感あるサウンドで現代的に昇華した一曲だ。ドラマチックなサウンドに乗せて、藤井の深く響く低音と切なさを帯びた高音が交錯することによって、ヒロインの本気の愛、一途な純粋さがより美しく際立っている。
――新章の始まりとして、完成した曲は『重たい愛でごめん』。いただいた時の気持ちは?
藤井:再始動できることが現実になったという喜びがすごく大きかったですし、幸先生から「これまでの楽曲とは違ったジャンルの作品に挑戦する」と伝えられ、ワクワクしました。『純情レボリューション』もポップス寄りの作品でしたが、『重たい愛でごめん』は歌謡曲からさらに一歩飛び出したような作品でありながら、どこか懐かしい歌謡曲の雰囲気も持っています。
でも、作品が出来上がる過程で、「ここはコーラスをこう入れて」とか、幸先生がアレンジの坂本(昌之)先生ともいろいろ相談してくださり、作品がどんどんゴージャスになってきて、「どう歌ったらいいんだろう」ってちょっとプレッシャーでした(苦笑)。
――タイトルのインパクトも抜群です。
藤井:及川眠子先生の詞は本当にいつも刺激的なんですが、今回は特にすごい。歌詞の中に挑発的に「ごめん」って入れられるのは眠子先生だけじゃないかなあ。レコーディングの時も、『この“ごめん”は、本当にごめんなんて思ってないから、もっと投げ捨てるように歌ってもいいんだよ』ってアドバイスもいただきました。

――この曲の歌詞は、藤井さんご自身の恋愛観と重なる部分はありますか?
藤井:共感できるところはすごくありました。若い頃は本当に重たい愛で「行かないで」というタイプでしたが、年齢を重ねるごとに、この主人公のように「一途に愛しているけれど、はっきりしないならさようなら」という考え方になった気がします。前作の『純情レボリューション』もそうでしたが、「はっきりしなさい」って(笑)。
――久しぶりのレコーディングはいかがでしたか?
藤井:感極まっている精神状態ではなく、前日の夜遅くまでレッスンしていただいたので、「しっかり歌わなきゃ」という緊張感がありました。「ここのメロディを増やそう」とか、本当にブラッシュアップがレコーディングの日まで続きましたが、新しく生まれ変わったイメージを持っていただけるかなと思っています。
――ファンの皆さんからの感想は届いていますか?
藤井:初めてキャンペーンで披露した時は皆さんが前のめりになって聴いてくださっていたのが印象的でしたが、最初はとても驚いていました。タイトルは事前に発表していたので、演歌っぽい、もっと暗い歌をイメージしていた方もいらっしゃったようですが、実際はとてもおしゃれな曲なので、「びっくりした」という声が多かったです。
――今作では、どのようなメッセージを伝えたいですか?
藤井:ラブソングではありますが、恋愛に自信がない人に対しても背中を押してあげられるような、女性への応援歌として受け取っていただけたらうれしいです。今どきの女性は強いので、「こうやってはっきりさせて生きていってもいいんじゃないの」という応援歌だと思っています。

『重たい愛でごめん』はカップリングの異なる2形態で展開される。表題曲が「相手にぶつける愛」だとしたら、【TYPE-A】収録の『泣かない夜をください』は「自分の中に押し込める愛」がテーマ。出口のない片想いの苦しみが描かれている。一方、【TYPE-B】収録の『ぜんぶ嘘ぜんぶ夢』は、R&Bテイストや都会的なシティ・ポップスの要素が感じられる歌謡曲となっている。
――カップリングの2曲についても伺います。『泣かない夜をください』は、表題曲とは対照的な静かな哀愁の歌ですね。
藤井:こちらは2年くらい前にA面候補として作っていただいていた曲です。今回シングルを出すことになり、改めて聴き比べた結果、カップリングとして収録することになりました。レコーディング当日に、歌詞の最後のフレーズが「愛だから」から「恋だから」に変わり、タイトルも「泣かない夜をください」に変更されて、より切ないバラードになりました。

――『ぜんぶ嘘ぜんぶ夢』は、幸先生ではなく久保田衛先生の作曲ですね。
藤井:最初にデモ音源を聴かせていただいた時から、すごくかっこいいメロディだと感じました。私の好きな竹内まりやさんの作品ぽさもあって、まりやさんのようにカッコ良さを出しながら歌えたらいいなと思いました。
――詞の世界はいかがでしたか?
藤井:愛し合っている関係ではなく、一夜限りという大人の世界が描かれていますが、歌詞を見た時に衝撃を受けました。「あなたの背骨あたり 指でなぞりながら」といった表現は、想像はできるけど、普通、言わない言葉じゃないですか。2番には「爪先まで赤く染まる感じが好きよ」というフレーズもあり、こんな言葉を言える主人公ってすごいですよね。眠子先生にお会いした時に、「この歌詞、すごいですね」ってお伝えしたら、「整体師じゃあるまいしね」って笑っておられました(笑)。
美しすぎる背中と、AIを駆使したMVの裏側
――「重たい愛でごめん」のビジュアル面も非常に刺激的です。サイドがレースで透けている赤いドレスも話題です。
藤井:前作の『純情レボリューション』の時の衣装もサイドに深いスリットが入っていて「パンツ履いてるの?」なんて言われたんですけど(笑)、今回はサイド部分が全部レースになっています。「どうなってるの?」と聞かれたら、「ご覧の通りです」って答えるようにしています(笑)。実は、トレーニングのおかげで、体幹がしっかりして姿勢がすごく良くなったんです。そしたら周りのスタッフさんから「香愛ちゃん、なんか首が伸びた?」って言われるようになって(笑)。背中のラインも自分なりに綺麗に出せるようになったので、今回はこういう攻めた衣装に挑戦してみました。

――セクシーさと上品さが両立していますが、撮影時のエピソードはありますか?
藤井:上品さは絶対に残したかったので、そこはデザイナーさんともたくさん相談しました。ただ、背中を大きく開けると、どうしても服のバランスが取りづらくて、ドレスが浮いちゃう問題が発生したんです。それで背中にクロスする紐をつけてドレスが浮かないように安定させたのですが、結果的に、その紐が余計にセクシーさを引き立ててくれました。ただ、今回の衣装は露出部分が増えたので、気温が低い日は寒いです(苦笑)。
――MVも公開されました。
藤井:「セーラームーン」の変身シーンみたいな(笑)、360度・全方位を撮られるという、壮大な環境で撮影しました。今までは実際のロケ地に行って撮影するしかなかったんですけど、アイルランドを代表する絶景「モハーの断崖」で撮影したかのようなスケールの大きな映像になっています。AIによる動画生成なんですが、私自身も「えっ、私こんなところにいるの!?」って出来上がりを見てビックリするほど。「アイルランドで撮影してきました」って言い張ろうかと思っています(笑)。MV自体はストーリー性があって、楽曲ともすごくマッチしています。

再び動き出す時計の針。ファンと一緒に新たなステージへ
――今後の目標を聞かせてください。
藤井:もちろん、まずはこの『重たい愛でごめん』を一人でも多くの方に届けて、ヒットさせることが一番の目標です。そして、やっぱりもう一度、ホールでのワンマンコンサートをやりたいです。地元・中野の野方区民ホール、なかのZERO小ホール、そして5周年には港区にある草月ホールでコンサートを開催させていただきました。「中野サンプラザでやりたい!」という大きな夢もありますが、建て替え計画がずっと先に延びてしまったので、その前に、なかのZERO大ホールでのコンサート開催を目標にしています。
――ここからまた藤井香愛さんの「時計の針」が力強く動き出しました。
藤井:デビューが遅かったこともあり、これまでは同期や同世代の歌手よりも駆け足で頑張らないといけないと思っていました。今回ブランクを経て再スタートするにあたり、当初はまた駆け足でと考えていましたが、最近は考え方が変わってきて、長く歌い続けられることを考えたいと思うようになりました。焦りすぎずに自分の歌、自分の世界観をしっかり作っていき、今回の『重たい愛でごめん』のように、女性の背中を押せるような歌手を目指したいです。皆さんの温かい応援のおかげで、こうしてまた素晴らしい楽曲とともに新しいスタートラインに立つことができました。目先のことだけでなく、歌手として長く活動していきたいですね。
○
インタビュー中、時折交じる明るい笑い声からは、彼女が持ち前のポジティブさで困難を乗り越え、確かな手応えを掴んでいることが伝わってきた。
「休むことの大切さを知った」と語る彼女の表情は、以前よりも柔らかく、そして凛とした美しさに満ちていた。それは、単にパーソナルトレーニングで姿勢が良くなったからといった外見だけではなく、自分自身と深く向き合い、表現者としての土台を再構築したからこそ滲み出る余裕だろう。
『重たい愛でごめん』で聴かせる、依存度200%のラブソングとスタイリッシュな疾走感。それは、決して折れることなく、ファンへの愛と歌への情熱を燃やし続けた藤井香愛の、力強い再始動のファンファーレである。
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2026年5月13日発売
藤井香愛「重たい愛でごめん」
【Aタイプ】

「重たい愛でごめん」
作詞/及川眠子 作曲/幸耕平 編曲/坂本昌之
c/w「泣かない夜をください」
作詞/及川眠子 作曲/幸耕平 編曲/坂本昌之
徳間ジャパンコミュニケーションズ TKCA-91696 ¥1,550(税込)
【Amazon】重たい愛でごめん (TYPE-A) – 藤井香愛
【Amazon.co.jp限定】重たい愛でごめん (TYPE-A) – 藤井香愛 (特典:メガジャケ付)
【Bタイプ】

「重たい愛でごめん」
作詞/及川眠子 作曲/幸耕平 編曲/坂本昌之
c/w「ぜんぶ嘘ぜんぶ夢」
作詞/及川眠子 作曲/久保田衛 編曲/坂本昌之
徳間ジャパンコミュニケーションズ TKCA-91697 ¥1,550(税込)
【Amazon】重たい愛でごめん (TYPE-B) – 藤井香愛











