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早瀬ひとみ

【ライブレポート】早瀬ひとみ、46年目のリスタート。老舗ライブハウス「銀座TACT」でファンと誓った未来宣言と昭和歌謡へのリスペクト

昨年、デビュー45周年を迎えた早瀬ひとみが、東京・中央区の老舗ライブハウス「銀座TACT」にてライブを開催した。全国から駆けつけたファンが見守る中、自身の音楽的ルーツである昭和歌謡への深いリスペクトを歌声に込め、46年目の歌手人生の新たな一歩を踏み出した。それは熱気と温もり、そして未来への決意に満ちた一夜だった。

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昭和のスターを生んだ「銀座TACT」で迎えた特別な夜

銀座TACT。昭和33年(1958年)に音楽喫茶「タクト」として産声を上げ、数々の大スターを輩出してきた歌謡界の登竜門的存在だ。早瀬ひとみはこの歴史あるステージで定期的にライブを行ってきたが、今回は久しぶりの開催となった。

客席には地元・岩手県からの熱心なファンに加え、遠方から駆けつけた人々の姿もあった。驚異的な視聴率を誇った昭和の国民的番組「8時だョ!全員集合」に出演していた早瀬の姿を見て、当時6歳でファンになったという長年の支持者もいる。

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ステージと客席との距離が近いライブハウスならではの掛け合いの中、そのファンから「私もいい年になりました」という声が飛ぶと、会場は温かな笑いに包まれた。共に年齢を重ね、共に歩んできた時間がある。そこには、単なるアーティストと観客という枠を超えた、家族のような和やかな空気が漂っていた。

1980年に「北の岬」でデビューした早瀬は、昨年12月に故郷である岩手県大船渡市で45周年記念コンサートを成功させたばかりだ。4月28日に開催された今回のライブは、45周年の集大成と、46年目を迎えた“早瀬ひとみの今”をオーバーラップさせる特別なセットリストが組まれていた。

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黒のドレスで魅せる「和シャン」の世界と、デビューの原点

第1部、早瀬はシルエットが強調された黒のレザーのタイトなロングワンピースという、シックで華麗な装いで登場した。

オープニングを飾ったのは、新曲「愚連歌(ぐれんか)」のカップリング曲「踊りあかそう」。軽快で華やかなリズムが、今宵のステージへのあふれんばかりの喜びと高揚感をストレートに客席へと届ける。

歌い終えた早瀬は、持ち前の明るいキャラクターでダジャレを交えつつ、久しぶりのタクトでのライブであること、そして昨年45周年を迎えた感謝をファンに伝えた。

早瀬ひとみ

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早瀬は演歌・歌謡曲にとどまらず、シャンソン、カンツォーネ、ラテン、タンゴと幅広いジャンルを歌いこなす。中でも、歌謡曲とシャンソンを融合させた「和シャン」と呼ぶべき独自の世界観は、彼女の真骨頂だ。続いて披露されたのは、岸洋子の大ヒット曲である悲哀のシャンソン「恋心」、そして越路吹雪の代表曲「ろくでなし」。情念と洗練が交差する大人の世界に、観客は深く引き込まれていく。

MCでは、自身の原点であるデビュー前のエピソードが語られた。

子供の頃から歌手を夢見てオーディションを受け続けるも、キッカケを掴めずにいた日々。そんな時、友人からの「いつも演歌を歌って落ちているから、歌謡曲を歌ったらどうか」というアドバイスを受け、文化放送の“ラジオ版スター誕生!”とも言われた番組『決定!全日本歌謡選抜』の「スターは君だ!」に挑戦した。そこで岩崎宏美の「二重唱(デュエット)」を歌い、見事グランドチャンピオンに輝いたことが、デビューへの扉を開いたのだ。

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早瀬は、その運命の曲「二重唱(デュエット)」を披露。“あなたが好き ほんとに好き”と、少女の初々しい恋心を大人の色気をまとった衣装で可憐に歌い上げる。直前のMCで「今年、誕生日が来たら前期高齢者の仲間入りです」と笑いを誘っていた彼女は、歌い終わると「恥ずかしい(苦笑)」とはにかみ、そのギャップで会場を沸かせた。

その後は、ABC朝日放送音楽祭・服部良一特別賞や、新宿音楽祭・敢闘賞など数々の新人賞を受賞したデビュー曲「北の岬」(1980年)をはじめ、「雨よ降れあの人に」(1988年)、「円舞曲(ワルツ)」(1983年)、そして2014年に10年ぶりの新曲としてリリースされた“和シャン”のテイストを持つ「別離〜さよなら〜」と、自身の歴史を彩るオリジナル曲を情感豊かに紡いでいった。

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縁が結んだ最新曲「愚連歌」と、情念の叫び

ライブの中盤、話題は最新曲「愚連歌」の誕生秘話へ。この曲は、「踊りあかそう」と同じく作詩・髙畠じゅん子氏、作曲・徳久広司氏による作品だ。キッカケを作ったのは、唯一の女形歌手であり、早瀬の2年後輩にあたる北岡ひろし。久しぶりに番組で共演した北岡が、作詩家の髙畠氏を誘って銀座TACTでの早瀬のライブに訪れたことがすべてのはじまりだった。

ステージで歌う“姐御肌”な早瀬の姿を見た髙畠氏の頭に、瞬時に「愚連(ぐれん)」という言葉が閃いたという。そこから新曲の制作はトントン拍子に進んだ。

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髙畠氏は作詩をする際、まずタイトルから決めるという。それはつまり、髙畠氏の中で「今の早瀬ひとみが何を歌うべきか」「誰にどう響かせるべきか」というビジョンが、タイトルの時点で明確に存在していた証左である。

「バカだよね あんないい人 傷つけちゃってさ」

「愚連歌」にはそんなフレーズが登場する。ついつい強がって生きてしまう女性の、その奥底にある脆さや、自分を責めてしまう不器用な“かわいらしさ”。早瀬は、昭和の歌謡ブルースの匂いをまとったパンチのあるメロディに乗せ、そんな女性の機微を哀愁たっぷりに歌い上げた。観客も息の合った掛け声で応え、会場が一体となる。歌い終えた早瀬は「いい歌でしょ?」と、誇らしげに、そしてうれしそうに客席に語りかけた。

第1部の締めくくりに選ばれたのは「朝日があたる家」。先ほどの「二重唱(デュエット)」での可憐さから一転、地の底から湧き上がるような悲劇的な情念の世界を叩きつけ、観客を圧倒した。

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昭和の青春時代と、敬愛する先人たちの魂を継ぐ

会場には、新曲の生みの親である髙畠じゅん子氏と、キューピット役となった北岡ひろしの姿もあった。休憩を挟んだ第2部、早瀬は真っ赤なジャケットに白のパンツルック、そしてハットというスタイリッシュなマニッシュスタイルで登場した。

後半のスタートは、ムード歌謡の巨匠・中川博之氏と髙畠氏が手がけ、1977年に森雄二とサザンクロスがヒットさせた「足手まとい」。これは客席の髙畠氏への、早瀬なりのリスペクトの表現だった。さらに「私にも大阪を舞台にした曲が一曲だけあります」と、ヒット曲「ちょっと待って大阪」を楽しい振付を交えて披露した。

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ここからは、昭和の音楽シーンを彩ったアイドルたちへのオマージュの時間が続く。

「三人娘」「中三トリオ」「御三家」と昭和を代表するアイドルグループの名を挙げつつ、「私は、なんといっても新・御三家です」と宣言。「私鉄沿線」(野口五郎)、「よろしく哀愁」(郷ひろみ)、そして「3人の中では一番好きだった」という西城秀樹の「激しい恋」をメドレーで熱唱した。

この一連のパフォーマンスの合間、早瀬がファンに向けて「あなたの青春時代のアイドルは?」と問いかける場面があった。すると客席からは、すかさず「千葉仁美!」という大きな声が飛んだ。早瀬の本名である。長年彼女を見守り続けてきたファンならではの、愛情にあふれた掛け合いだった。

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ライブは終盤へ向かい、楽曲の重みはさらに増していく。

「どの歌も緊張するんですけれども、子供の頃から歌手になりたくて、それを決定させてくれたのが、この人になると思わせてくれたのが、ちあきなおみさんであり、この曲です」

そう語り、歌い始めたのはちあきなおみの「喝采」。早瀬の歌声には、一人の少女が歌手を志した原風景と、長年歌い続けてきた重みが宿っていた。続いて「私は岩手県出身ですが、この曲を聞くと故郷を思い出します」と、美空ひばりの「津軽のふるさと」を郷愁たっぷりに、しっとりと歌い上げる。

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そして、ファンの中に、この日(4月28日)が誕生日だという女性を見つけた早瀬。彼女は即座にアカペラで「ハッピー・バースデー・トゥー・ユー」を歌い、「みんなでお祝いしましょう」と美空ひばりの「KANPAI!!」へとつなげた。過去(むかし)のしがらみや悲しみは時効にして、再会と人生を祝おうというハッピーソングが、会場を温かな光で満たしていく。

その祝祭の空気の後、早瀬は改めて自身の活動が多くのファンや関係者に支えられていることへの深い感謝を述べると、尊敬してやまないちあきなおみの「紅い花」を披露。それは単なるカバーの枠を超え、歌手・早瀬ひとみの力量と魅力が極限まで凝縮された瞬間だった。まるでステージ上にちあきなおみの魂が憑依したかのような、圧倒的な説得力を持つ歌声が響き渡った。

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過去を水に流し、共に創り上げる未来

「ラストは、私と皆様の新しい人生が明日から始まりますように」

本編の最後に早瀬が選んだのは、エディット・ピアフの代表曲であるシャンソンの名曲「水に流して(Non, je ne regrette rien)」だった。

過去の喜びも悲しみも、すべてを後悔せず水に流し、新しい人生のスタートを踏み出すという壮大な一曲。45年という長いキャリアの中で経験してきたあらゆる出来事を受け入れた上で、「またここから、ゼロから走り出しましょう」とファンに語りかけるような、力強い決意表明の歌だった。

早瀬ひとみ

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鳴り止まない拍手に応えてのアンコールは、人気曲「知ったかぶり」(2014年)。ラテンの軽快なリズムに乗せ、大人の女性の恋の駆け引きと本音を艶やかに歌うライブ映えする一曲だ。ステージと客席が陽気なラテンのビートで完全に一つに溶け合い、笑顔と熱気の中でステージは幕を下ろした。

「銀座TACT」でのライブは、昭和歌謡という自身の豊かなルーツを抱きしめながら、46年目を歩き出す早瀬ひとみの「未来への宣言」だった。その宣言はステージの上だけで完結するものではない。全国から集まったファンと共有し、これからの歌手ヒストリーを共に創り上げていきたいという想いに溢れていた。

熱気に包まれた地下1階の老舗ライブハウスから地上へ出ると、ゴールデンウィークを楽しむ多くの人が、華やかに街を行き交う銀座の夜が広がっていた。

早瀬ひとみ

 


2025年1月1日発売
早瀬ひとみ「愚連歌」
早瀬ひとみ

「愚恋歌」
作詩/高畠じゅん子 作曲/徳久広司 編曲/矢田部正
c/w「踊りあかそう」
作詩/高畠じゅん子 作曲/徳久広司 編曲/矢田部正
日本コロムビア COCA-18236 ¥1,500(税込)

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