アーティスト おかゆ、名刺代わりの11曲~『おかゆウタ カバーソングス3』で時代を切り取る~
メジャーデビュー5周年のおかゆがカバーアルバム『おかゆウタ カバーソングス3』をリリースした。時代を切り取る11曲が収録されているが、この5年の進化を感じさせるアルバムは、“おんな流し”出身のおかゆが、“アーティスト おかゆ”へと脱皮する一枚となる。
文=藤井利香
おかゆウタは私の名刺代わり
――2023年5月発売のシングル「渋谷のマリア」が好評のうちに、このほど3枚目のカバーアルバムがリリースされました。全11曲が収録されていますが、曲選びでのこだわりは?
おかゆ 2023年は超進化を目標にしてきたので、それを感じてもらえるような選曲をしました。初期の頃の私だったら歌いこなせなかったかもしれない、でも、デビューして5年が経ったからこそ披露できるという曲を中心に、私の成長を見ていただける内容です。このアルバムが自分の名刺代わりになるなと、そんな気持ちです。
――1曲目の「ロンリー・ガール」は、おかゆさんのこれまでの歩みを彷彿とさせ、ジャストマッチですね。
おかゆ ギャル時代のバイブル的楽曲が「ディア・ロンリーガール」。歌詞に渋谷のセンター街が出てきて、いつか上京したいという夢を抱いた憧れの曲でした。しかも、私は加藤ミリヤさんがアンサーソングとして歌っていたのを聴いていたのですが、原曲(歌:佐東由梨)が昭和歌謡のヒットメーカー(作詞:松本隆/作曲:筒美京平)による作品だったと知ったときはびっくり。「淋しいんじゃないよ ひとりが好きなだけ」といった共感できる歌詞に加え、初々しくオシャレでグルーヴ感のある曲調。いつかカバーしたいと思っていました。
――「フライディ・チャイナタウン」や「CAT’S EYE」などは、今も根強い人気の昭和歌謡です。
おかゆ 「CAT’S EYE」はアレンジも歌唱もおかゆバージョン。自分の歌い方を一度ぶっ壊して挑戦しました。「フライディ・チャイナタウン」も同じで、声の出し方やマイクへののせ方を変えながら、楽しんで歌いました。
歌い方というと「くれないホテル」「夜空」も同じになります。「くれないホテル」はいつもの自分で歌ってみたとき、ちょっと違うなと。スイングするようなリズムでゆったりとした曲調なので、より柔らかく、キュンとするような歌い方をすれば主人公が際立つかなと思い、何人か主人公を変えながら歌いました。この曲を私は知らなかったんですが、ファンの方から私に合っているとリクエストをいただき、出会えてよかったなと思える一曲です。
「夜空」は五木ひろしさんの名曲。ロックっぽいアレンジなんですが、リズム感があって親しみやすいグルーヴ歌謡です。何かのタイミングで若い人の間でバズってもいいなと思うほどです。
詩が突然、降りてきた。
――「翼の折れたエンジェル」「グッバイ・モーニング」は、7月に開催したデビュー5周年記念ライブでも歌われていましたね。今回、初回限定盤に付属するDVDにもそのときの映像が収録されています。
おかゆ それぞれアレンジャーが違うので、聴き比べていただくとまた楽しいと思います。今回のCD作品では、私がかねてからお願いしたかったアレンジャーさんの力も借りることができたんです。納得のいく作品づくりにもつながりました。
――そして今回、ラストを飾るのが「Amazing Grace」。こちらは誰もが知る讃美歌ですが、おかゆさん自身が日本語で歌詞をつけたそうですね。
おかゆ そうなんです。話せば長くなりますが(笑)、ウクライナ戦争が起きる少し前に、私がメインパーソナリティーのラジオ番組でクリスマス用の選曲を考えていたとき、「戦場のメリークリスマス」が浮かんだと同時に、それに合わせる詩が自分のなかに突然降りてきたんです。命とは、生きることとは、なぜ人は争うのかといった思いが自分でもびっくりするくらい溢れ出て、その言葉を慌ててスマホにメモ。それをもとに、あるとき“戦メリ”をライブ限定で歌ったのですが、ファンの方からCD化してほしいとリクエストをいただきました。その経緯があって、「Amazing Grace」に歌詞をつけることを思い立ったんです。海外の曲に日本語の詩をつけるというのはまさに初挑戦でした。
――「戦場のメリークリスマス(Merry Christmas, Mr.Lawrence)」のあの奥深い曲調に合わせる詩が自然と生まれ、さらにその後、本当に戦争のニュースが流れてきたのですから驚きですね。
おかゆ 運命に導かれるように詩が書けたような気がしています。“戦メリ”では反戦というよりも、ポジティブでもネガティブでもない、ただ平和を願う思いを書いた詩だったのですが、今回はなぜ人は他者を殺めるのか、どうしたら不安のない明るい明日がやってくるのか、といったことをもっと具体的に綴りました。とくに「子どもたちの笑顔を守ることが世界を救う」といった歌詞には強い思いが込められています。生きづらい世の中ではなく、誰もがありのままに生きられるようであってほしいと願った詩です。
――そして、これまでも歌う機会の多かった藤圭子さんの「女のブルース」。おかゆさんならではのギターの弾き語りで、まるでスナックにいて聴くようなスタイルになっています。
おかゆ そうなんです。流しの弾き語りというのが私の歌い手としての原点なので、まるで飲み屋さんにいるような雰囲気でつくりました。流しですからギター1本で歌い、歌い始めで「それでは聴いてください」とセリフを入れたのもそのためです。流しですからギターも、譜面を見ずに弾いていて、その場の思いつきで音を取りました。
“アーティスト おかゆ”として。
――かつてのいい曲というのは本当にたくさんありますね。おかゆさんのカバーで原曲を知る方もきっと多いと思います。
おかゆ ぜひそうあってほしいですね。流しってリクエストに応えて歌うので、基本カバー曲なんですね。そのカバーのおかげでここまで歩んでこられたので、みんなの聴きたい曲を残してくれてありがとう、という思いです。これからも大切に歌っていきたいです。
――このカバーアルバムを機に、コロナ禍で休止していた流しの活動を再開するそうですね。流しで出会った7842(亡き母の口癖、「七転び八起き幸せに」から転じた数字)人の人と写真を撮り、ブログにあげて輪を広げていました。
おかゆ 7842人と出会うことは、流しを始めたときに掲げた目標です。コロナも終息したので、達成することでひとまずこれまでの自分に区切りをつけたいと思いました。この先流しをまったく辞めるというわけではないんですが、また新たな気持ちで歌と向き合うためにも、がんばりたいなと。あと700人くらいなので、俗にいうリーチの状態。2024年中にはきっと達成できると思います。流しでお邪魔するスナックのママさんたちとの会話もまた貴重で、曲作りのヒントをたくさんくださいます。創作意欲もさらに湧いてきそうです!
――2024年は、さらに充実した1年になりそうですね。
おかゆ 2023年は思いがけず自分のことで忙しく、楽曲提供の依頼をいただいたのにできなかったという大きな反省がありました。本当に残念なことをしたなと。ですので、2024年は“アーティスト おかゆ”として進化していくためにも、自分の作品のストックをもっと増やすなど、音楽にもっと落ち着いて向き合いたいと思っています。どんなにつらいことがあっても、私には歌がある。その思いを胸に、これまで以上にがんばります!!
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2023年12月27日発売
時代を切り取るヒット曲をおかゆが歌う!
おかゆ『おかゆウタ カバーソングス3』
初回限定CD+DVD (DVDにはライブ歌唱の映像を収録)
通常盤CD
CD収録曲 ※カッコ内はオリジナル歌手
01. ロンリー・ガール(佐藤由梨)
作詞:松本隆 作曲:筒美京平 編曲:鈴木 豪
02.翼の折れたエンジェル(中村あゆみ)
作詞:高橋研 作曲:高橋研 編曲:鈴木 豪
03.ジョニィへの伝言(ペドロ&カプリシャス)
作詞:阿久悠 作曲:都倉俊一 編曲:斉藤真也
04. CAT’S EYE(杏里)
作詞:三浦徳子 作曲:小田裕一郎 編曲:綾瀬 悠
05.フライディ・チャイナタウン(泰葉)
作詞:荒木とよひさ 作曲:海老名泰葉 編曲:鈴木 豪
06.くれないホテル(西田佐知子)
作詞:橋本淳 作曲:筒美京平 編曲:斉藤真也
07.夜空(五木ひろし)
作詞:山口洋子 作曲:平尾昌晃 編曲:鈴木 豪
08.グッドバイ・モーニング(サンディー)
作詞:庄野真代 作曲:中島 薫 編曲:阿部靖広
09.化粧(中島みゆき)
作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき 編曲:多田三洋
10.女のブルース(藤 圭子)
作詞:石坂まさを 作曲:猪俣公章 編曲:おかゆ
11. Amazing Grace(讃美歌より)
作家不詳 日本語詞:おかゆ 編曲:多田三洋
初回限定盤DVDライブ映像収録曲 ※カッコ内はオリジナル歌手
1.朝日楼〈朝日のあたる家〉(ちあきなおみ)
アメリカ民謡 訳詞:浅川マキ 編曲:斉藤真也
2.一杯のジュテーム(秋元順子)
作詞:おかゆ 作曲:おかゆ 編曲:おかゆ
3.翼の折れたエンジェル(中村あゆみ)
作詞:阿久悠 作曲:都倉俊一 編曲:斉藤真也
4.枯葉(シャンソンより)
日本語詩:岩谷時子 作曲:J.Kosma 編曲:斉藤真也
5.グッドバイ・モーニング(サンディー)
作詞:庄野真代、作曲:中島 薫 編曲:斉藤真也
【ライブ映像は2023.7.2 Veats Shibuya デビュー5周年記念ライブ「渋谷のオカユ」より】
音楽ストリーミングサービスおよびiTunes Store、レコチョク、moraなど主要ダウンロードサービスでも配信中。
おかゆによる全曲解説
『おかゆウタ カバーソングス3』
01 ロンリー・ガール
私のギャル時代のバイブス的楽曲「ディア・ロンリーガール」の原曲が昭和歌謡だという事を知った日、とても運命を感じました。松本隆先生、筒美京平先生の名コンビによる激レア名曲です。「淋しいんじゃないよ 独りが好きなだけ」この歌詞にギャルに憧れて上京した自分が重なります。
02 翼の折れたエンジェル
雨にまつわる、ロックテイストな名曲。テレビで初めて歌わせて頂いてからずっとお気に入りです。メジャーデビュー5周年のライブで初めて生バンドと一緒に歌い、さらに好きになりました!中村あゆみさんのロック魂を見習ってこれからも歌っていきたいと思います!
03 ジョニィへの伝言
亡き母が大好きで、そして私も憧れている髙橋真梨子さんが、ペドロ&カプリシャス時代から歌われている名曲の第三弾です。「別れの朝」「五番街のマリーへ」そしてこの「ジョニィへの伝言」までカバーアルバムに収録することができてとても嬉しいです。阿久 悠さんならではの情景が目の前に広がる詞と都倉俊一さんの親みやすいのに壮大なメロディがすばらしい楽曲です。
04 CAT’S EYE
私が行っている昭和歌謡DJ でも人気の高い名曲「CAT’S EYE」!アレンジも歌唱もおかゆバージョンで収録しました!間奏で聞こえる3人の英語のセリフも私が吹き込みました!この「CAT’S EYE」でLet’sDancing!しましょう!
05 フライディ・チャイナタウン
この曲もやはり昭和歌謡DJ で盛り上がる楽曲!キャッチーでエモいアレンジ、パワフルな泰葉さんの歌唱は時代も世代を超えて沢山の方に愛される名曲です!原曲に負けないようパワー全開で歌うおかゆワールドをお楽しみください!
06 くれないホテル
スゥィングがとてもお洒落な極上昭和歌謡!今回リクエストをいただき、はじめて歌ったのですが、昔から歌っているかのような懐かしさ、歌いやすさを感じました。やわらかな歌い方を表現したく、普段の私とは違う歌い方を意識しました。ゆっくりリラックスしながら聞いて頂きたい曲です。
07 夜空
流ししている初期の頃に五木ひろしさんの「狼のバラード」を聴いて衝撃を受け、グルーヴ歌謡に目覚め、メジャーデビュー曲「ヨコハマ・ヘンリー」などを作る上で大きなきっかけに繋がりました。五木さんの曲で二番目に好きな曲が「夜空」です。この曲もグルーヴ感はもちろん、曲のスケール感が気持ちよく、今の時代にも全く古さを感じさせない、むしろ新しくも感じる素晴らしい曲だと思い、今回カバーさせて頂きました!
08 グッドバイ・モーニング
1976 年の第7 回世界歌謡祭において、グランプリと最優秀歌唱賞を受賞した楽曲です。シングル「渋谷のマリア」のGM盤のカップリングにも収録しました。最近知った時に、すぐに好きになった曲です。日本の歌謡曲にはない広がりのあるメロディで、歌っている私も歌の世界に惹き込まれます!私の歌の世界が広がり、ポップな曲を作るきっかけにもなっています。
09 化粧
私と同じ札幌出身の憧れのシンガーソングライター、中島みゆきさん。中島さんのように心を揺さぶる曲を作り歌いたい、中島さんの曲を聴くと、歌うと、涙が溢れて、いつもそう思います。アコギ一本で定期的に行っている流しライブで歌い、好評を頂いたこの曲。主人公の気持ちに成り切って歌いました。
10 女のブルース
私が流しをはじめたころ、藤 圭子さんに似ていると言って頂くことがありました。藤 圭子さんの歌は大好きで私の声にも馴染むので、歌う機会が多かったと思います。「女のブルース」の石坂まさをさんの歌詞は流しをしていた私がとても実感できるものでした。このアルバムでは流しスタイル(ギター弾き語り)で歌っています。
11 Amazing Grace
選曲のタイミングで、戦争のニュースが…人はなぜ争うのか、命とは、生きることの意味を改めて考えさせられるきっかけとなりました。世界中の方から愛され続ける大きな曲に、人類が生きていく上で大切なことと、伝えたいメッセージをこめて、詞をつけさせて頂きました。