水森かおり

水森かおりが全曲解説!~“歌”で旅する人気アルバムシリーズ『歌謡紀行22~日向岬~』

水森かおりのライフワークともなっているのが、人気アルバム『歌謡紀行』だ。“歌”で旅するアルバムとして、2002年に『歌謡紀行~東尋坊~』がリリースされると話題となり、以来、毎年の恒例企画となった。その最新盤『歌謡紀行22~日向岬~』が完成した。全14曲のご当地ソングが収録され、うち6曲がオリジナル新曲となっている。

 

“歌謡紀行”ならではのハーモニー

アルバムシリーズ『歌謡紀行』の人気のひとつは、水森かおりのシングルにはない世界観の作品も多数収録されていることだ。

『歌謡紀行22~日向岬』でも、歌手・水森かおりの歌声を存分に楽しめるが、1曲目には今年の勝負曲「日向岬」が収録される。九州・宮崎を起点に旅ははじまり、「日向岬」のスケール感のあるメロディーで聴く者を引き込むと、以降、挑戦曲を含めて既発曲と新曲が“歌謡紀行”ならではのハーモニーを奏でていく。

このアルバムのために既発曲から選曲されたのは、先の「日向岬」(2023年)のほか、「五能線」(2005)、「鳴子峡」(2021)、「高遠 さくら路」(2019)、「伊勢めぐり」(2013)、「島根恋旅」(2014)、「早鞍ノ瀬戸」(2017)、そして「鳥取砂丘」(2003)の8曲だ。

オリコンシングル総合ランキング初登場8位を記録し、20年連続初登場トップ10入りを果たした「日向岬」や、『NHK紅白歌合戦』への初出場を果たした「鳥取砂丘」など人気曲ばかりとなっている。

水森かおり

今回もお得な旅を楽しんで!

アルバムのためのオリジナル新曲は、北海道・利尻島を舞台にした「シラサギ」、岡千秋氏による演歌作品の「厳美渓(げんびけい)」、水森をイメージして書かれた「目黒川」、湖上に浮かぶ駅で展開される男女の出会いと別れが歌われた「湖上駅」、水森も訪れたことがあるという長崎ランタンフェスティバルの幻想的な灯を背景に描かれた「長崎ランタン」、そしてフランス・パリの“モンマルトル”を舞台とした「虹色のパレット」の6曲。半分がフォーク調の歌謡曲作品となっている。

「『シラサギ』、『目黒川』、『虹色のパレット』の3曲はフォークっぽい作品です。頑張らないけど、張り上げなきゃいけない、盛り上げないといけない部分があり、歌唱ではその匙加減が難しかったですね。歌い上げてしまうと、作品のやさしい世界が崩れてしまうので。でも、どの曲も一曲一曲を楽しみながら、難しいなと思いながらそれも楽しみながらレコーディングさせていただきました」

演歌・歌謡曲だけではなく、水森による幅広い楽曲が楽しめる『歌謡紀行22~日向岬~』は、完成度の高いアルバムとなっている。

「今回もまたバラエティーに富んだ、アルバムならではの世界観に挑戦させていただけました。北は北海道から南は九州まではもちろんですが、今回も日本を飛び出してヨーロッパまで行きました! 皆さんに聴いていただいて、お得な旅をしてください!」

水森かおり

 

水森かおりがオリジナル新曲を全解説!

それでは、水森かおり自身が「今回もバラエティーに富んだ作品が集まった」という『歌謡紀行22~日向岬』に収録されたオリジナル新曲全6曲を解説してもらおう。

「シラサギ」
作詩/半﨑美子 作曲/半﨑美子 編曲 五十嵐宏治

「シラサギ」はシンガーソングライター 半崎美子による書き下ろし作品。タイトル曲「日向岬」に続く2曲目に収録されている。北海道利尻島の美しい風景に、水森が力強い生命力を吹き込んでいる。

「美子ちゃんのつくった作品を手にとったときに感じたのは、すごい方だなということ。同じ歌い手でも、詩とかメロディーを生み出す人のすごさを改めて感じさせてくださいました。『シラサギ』は美子ちゃんのピュアで、透明感のある世界そのもの。お話しをうかがってみると、利尻は母様の故郷だということでした。お母様にとっての大事な場所を、私に歌わせてくださったのは、とてもうれしく思いました。やさしい風が吹くような作品です」

「厳美渓(げんびけい)」
作詩/麻こよみ 作曲/岡千秋 編曲/矢田部正

「シラサギ」の舞台 北海道から岩手県へ。失った恋の切なさを抱えた女性がやってきたのは、一関市を流れる磐井川にある渓谷 厳美渓。美しくも険しい風景の中に、岡千秋氏による演歌歌謡曲のメロディーが流れる。水森は「カラオケでも歌いたい人が多いんじゃないか」と話している。

「日本にはまだまだ知らない名所がありますね。厳美渓もこの曲をいただくまで知りませんでした。作品は私のシングル曲の世界に近いですね。岡千秋先生はカラオケファンの心を、心地いいツボをよくご存じなので、私も先生の世界に誘われるような感じで、気持ちよく歌わせていただきました。とてもお茶目な先生なので、レコーディングもリラックスして臨めました」

水森かおり

「目黒川」
作詩/みろく 作曲/西島三重子 編曲/矢田部正

「五能線」「鳴子峡」を挟んで登場するのがシンガーソングライター 西島三重子による「目黒川」だ。桜の名所としても有名な目黒川のほとりに、繊細に描かれた男女の別れのシーンなどは、必要以上の感情表現を避けた、水森かおりでなければ歌えない世界観を感じることができる。

「この作品は、数年前にアルバム用の作品候補としてつくっていただいたうちの一曲だったんですよ。西島先生が『水森かおりを意識して書いた』とおっしゃるぐらい、西島先生的にはイチオシだったんですが、そのときは別の作品が選ばれました。それが西島先生としては心残りだったそうで、『かおりちゃんに歌ってもらえなかったら私が歌う』と、ご自身で一度、リリースされています」

「目黒川」が今回のアルバムに選曲されたことを知った西島氏はたいそう喜んだという。

「レコーディングでお会いするなり、『かおりちゃんをイメージして書いたので、本当にうれしい。やっと歌ってもらえる! ありがとう。うれしい!』って」

水森は西島氏本人が一度、リリースしていることから、カバー曲として歌おうとしたが、西島氏は「かおりちゃんのために書いたんだから、オリジナル曲として歌ってくれていいから」と断言されたという。水森はその言葉に「うれしかった」と感謝した。

ちなみに、水森にとって“西島三重子”は、同じ歌い手というよりも、作曲家の先生というイメージだという。

「西島先生の歌唱には、真似できない独特な世界観があります。なんなんだ、このさりげない説得感は? みたいな。それを教わろうとするんですが、近づきたいけど近づけないですね。私にとっては歌手の大先輩でもありますが、歌の先生です」

水森かおり

「湖上駅」
作詩/旦野いづみ 作曲/桧原さとし 編曲/佐藤和豊

静岡県の大井川鐵道井川線には、ダム湖に突き出た半島状の先端に奥大井湖上駅がある。まさに湖上の駅。奥大井恋錠駅の愛称でも呼ばれ、縁結びの場所としても知られる。そんな湖上駅に、男女の出会いと別れが展開される。

「桧原先生の世界って、演歌だけど演歌じゃないような絶妙な世界があります。『湖上駅』もまさに“桧原ワールド”です。すごく心地よく、気持ちよく歌えました」

作品にハマったときの心地よさを強調した水森。湖上を吹き抜ける風のような水森の歌声が、なんとも言いえないもの悲しさを膨らませてくれる。

「長崎ランタン」
作詩/さくらちさと 作曲/大谷明裕 編曲/佐藤和豊

「高遠 さくら路」など人気シングルを4曲挟んで登場するのが、「長崎ランタン」だ。長崎の冬の風物詩であり、冬の夜空を極彩色に染める長崎ランタンフェスティバルの幻想的な光景に誘われるように、一人の女性が別れた男性との思い出の場所を訪れる。恋に翻弄される女性の心情が、大谷明裕氏による3拍子のメロディーに乗せて歌われる。

「コンサートで長崎にうかがったときに、たまたま長崎ランタンフェスティバルの開催と重なってうかがったことがあります。綺麗だねって、写真を撮った思い出があります。ランタンの明かりがとても幻想的でした。自分の中に映像が浮かびやすいので、歌いやすかったですね。大谷先生もまた独自の世界観をお持ちで、やさしくて柔らかい作品です。ランタンの灯の雰囲気とメロディーが合っていて、歌っていてもすごく穏やかな気持ちになります」

「虹色のパレット」
作詩/本橋夏蘭 作曲/なかまさや 編曲/若草恵

舞台は日本を飛び出しフランス・パリへ。サクレ・クール寺院があるモンマルトルの丘から臨むパリの絶景に、愛した人と過ごした日々を重ね合わせる「虹色のパレット」。前作『歌謡紀行21~九十九里浜~』では、地中海に浮かぶスペイン領のマヨルカ島のバーカウンターからはじまる「マルガリータ」を歌っているが、今アルバムでもヨーロッパを舞台にした、ストーリー性のある作品が収録される。

「海外を舞台にした作品を歌うときは、開放的な気持ちになったような気がします。気分が変わるのかもしれないですね。ただ、この作品は旋律が珍しくて、言葉数がすごく多いので、レコーディングは難しかったです」

モンマルトルの地は、芸術家の街としても知られており、“虹色のパレット”とは、主人公の心情を“パレット”に象徴して表現している。ちなみに、水森は図工や美術が苦手だという。

「絵を描こうと思っても、何も浮かばないんですよね。歌だったら、こう歌ってみようかなと、いろんな想像力を掻き立てられるんですけど、絵は本当に思考回路がぴたっと止まってしまうんですよ(苦笑)。子どものころも、図工や美術の授業は苦痛でした。彫刻なども作り上げるのが苦手。編み物は好きですけどね」

水森かおり

 

トピックス~海外旅行~

ご当地ソングの女王・水森かおりが『歌謡紀行』シリーズで海外を舞台にしたオリジナル作品を歌うのは、「地中海」(アルバム『歌謡紀行14~大和路の恋~』)、「マルガリータ」(アルバム『歌謡紀行21~九十九里浜~』に続いて3曲目。「虹色のパレット」の舞台・フランスには行ったことがないというが、短大の卒業旅行としてシンガポール~マレーシアを女友だち4人と訪問したときにはこんなエピソードも。

「当時はスマホもない時代。ガイドブックを見てご飯屋さんへ行ったら雑居ビルに迷い込んでしまって、『あれ? これ違うんじゃない?』って。人がお祈りしていて、怖くなって逃げたこともありましたね。現地ならではのかわいいバックがほしいと、ガイドさんに連れて行ってもらったらA級コピー品のお店で(笑)。技術は最高だよって・・・。私たちがほしいのは、そうじゃない!!って(笑)」

トピックス~私の50歳~

8月31日に50歳の誕生日を迎えた水森かおり。人生100年と言われるが、50歳という節目に何を思ったのか?

「ただの節目の年です(笑)。20歳のときに思ったんですけど、『自分が30歳になったときに素敵な女性になっていられるように10年間頑張ろう』って。30歳になったときには『素敵な40歳になれるように』って。40歳になったときにも素敵な50歳になれるようにと、そういう思いで10年やってきたんですが、何をやってきたんですかって聞かれると、とくに何もやってきてはいない(笑)。10年は速い! でも、振り返ったときに何もしてないなあって(笑)」

あくまでマイペースの水森かおり。だが、そのマイペースを貫くことがじつはいちばん難しい。『歌謡紀行』シリーズが途切れることなく、22作まで積み重ねることができたのも、変わることがない、歌に対する水森の真摯な取り組みの証だろう。そして、このマイペースは23作、24作・・・と続いていく。


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【取材日記】水森かおりさんが『歌謡紀行22~日向岬~』を9月20日に発売されます。アルバムならではの世界観が満載です。

 


2023年9月20日発売
“歌”で旅するアルバムシリーズ
水森かおり『歌謡紀行22~日向岬~』
初回限定盤(CD+DVD)
水森かおり

徳間ジャパンコミュニケーションズ TKCA-75170 ¥3,700(税込)

通常盤
水森かおり

徳間ジャパンコミュニケーションズ TKCA-75171 ¥3,000(税込)

収録曲(★はオリジナル新曲)
01.日向岬
作詩/かず翼 作曲/弦哲也 編曲/伊戸のりお
02.シラサギ★
作詩/半﨑美子 作曲/半﨑美子 編曲/五十嵐宏治
03.厳美渓★
作詩/麻こよみ 作曲/岡千秋 編曲/矢田部正
04.五能線
作詩/木下龍太郎 作曲/弦哲也 編曲/前田俊明
05.鳴子峡
作詩/かず翼 作曲/弦哲也 編曲/伊戸のりお
06.目黒川★
作詩/みろく 作曲/西島三重子 編曲/矢田部正
07.湖上駅★
作詩/旦野いづみ 作曲/桧原さとし 編曲/佐藤和豊
08.高遠 さくら路
作詩/伊藤薫 作曲/弦哲也 編曲/伊戸のりお
09.伊勢めぐり
作詩/田久保真見 作曲/弦哲也 編曲/伊戸のりお
10. 島根恋旅
作詩/仁井谷俊也 作曲/弦哲也/編曲/伊戸のりお
11. 早鞆ノ瀬戸
作詩/たきのえいじ 作曲/弦哲也 編曲/前田俊明
12. 長崎ランタン★
作詩/さくらちさと 作曲/大谷明裕 編曲/佐藤和豊
13. 虹色のパレット★
作詩/本橋夏蘭 作曲/なかまさや 編曲/若草恵
14. 鳥取砂丘
作詩/木下龍太郎 作曲/弦哲也 編曲/前田俊明

「日向岬」を含め代表曲を中心とした8曲に加えて、このアルバムのために用意したオリジナル作品6曲を収録。初回限定盤は「日向岬」のミュージックビデオと字幕入りカラオケのDVDを加えた2枚組。

 


2023年07月12日発売
水森かおり『Cover Box vol.Ⅰ~時代を彩る名曲たち from 歌謡紀行~』
水森かおり

徳間ジャパンコミュニケーションズ TKCA-75150 7,000(税込)

水森かおりのアルバム歌謡紀行シリーズから、昭和・平成の名曲カバーと、このBOXのために新たに新録されたカバー曲2曲を加え、全48曲3枚組として発売‼ さらに初回生産分のみエコバッグ封入、BOX仕様!(※初回生産分の在庫がなくなり次第、CDのみの通常仕様となる)

(収録予定楽曲)
【Disc①】
・友禅流し
・木曽路の女
・京のにわか雨
・河内おとこ節
・鳴門海峡
・火の国の女
・花
・石狩挽歌
・神田川
・池上線
・旅愁
・音無川
・涙そうそう
・青葉城恋歌
・貴船の宿
・無縁坂

【Disc②】
・江の島悲歌
・女鳴き砂日本海
・新宿の女
・雨の御堂筋
・さくら
・あずさ2号
・空港
・琵琶湖周航の歌
・恋路海岸
・長崎の鐘
・襟裳岬
・星の砂
・京都の恋
・太田ブルース
・津軽恋女
・コーヒールンバ

【Disc③】
・北上夜曲
・湖畔の宿
・釧路の駅でさようなら
・港が見える丘
・銀座カンカン娘
・マリモの唄
・南国土佐を後にして
・蘇州夜曲
・ブルーライトヨコハマ
・瀬戸の花嫁
・東京ブギウギ
・女ひとり
・釡山港へ帰れ
・熱海の夜
・憧れのハワイ航路(新録)
・遠くへ行きたい(新録)

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