竹川美子が軽やかに歌うデビュー20周年記念曲「汐騒」~瀬戸内の風景を思い浮かべて~
2003年に「江釣子のおんな」でデビューした竹川美子がデビュー20周年を迎える。喉を傷め歌えなくなったつらい時期もあるが、多くの支えにより今があると語る。そんな竹川が20周年記念曲「汐騒」を哀愁漂うメジャー・メロディーに乗せて軽やかに歌っている。
文=藤井利香
竹川美子のデビュー20周年記念曲のタイトルは「汐騒(しおさい)」。三島由紀夫の著作に代表されるように、「潮騒」と書かれるのが一般的だが、こちらを使うとまた異なる情景が浮かび上がってくる。
歌詞のなかにも出てくるが、舞台は香川県にある沙弥島(しゃみじま)。柿本人麻呂がここで和歌を詠んだという伝説のスポットがあり、同県出身の作詩家・原文彦氏が、一度この光景を歌にしてみたいと綴った作品だ。
愛する人を想い続けて歩く夕暮れの浜辺に、汐騒の音だけが鳴り響く。そんな感傷的な世界観のもと、叶弦大氏の哀愁漂うメジャー調の旋律にのって、竹川が透明感ある歌声で哀しみや切なさを表現する。
竹川は今年5月21日で、デビュー20年を迎える。その記念となる作品で、キャンペーンも積極的に行いながら多くの人にこの歌を届けたいと笑顔で語る。
カップリングには「女のみれん」。こちらはマイナー調のメロディーの本格演歌。やはり海を題材に、女ごころの切なさを歌っている。
「潮騒」から「汐騒」に
瀬戸内にある沙弥島が歌の舞台です。私は広島出身なので、やっと故郷に近いところの歌をいただけたなとうれしく思っています。
原先生が「汐騒」という歌を作ったよと昨年教えてくださって、その時点ではタイトルが「潮騒」でした。誰もが知る通常の“潮”を使った「潮騒」でした。正式に作品ができてきて、さぁ歌入れとなったときでした。急きょ“汐”に変更となりました。
みんなで意見交換しながら、曲のイメージからぴったりくるのは夕方の風景。「潮騒」でも十分よいのですが、「汐騒」にすることで確かに印象も変わります。私も大賛成で、今ではとても気に入っています。
素敵な言葉で綴られた「汐騒」
沙弥島という島は、柿本人麻呂がここで和歌を詠んだ場所として知られています。「万葉の島」とも言われ、石碑もある観光スポットだとか。二番に「三十一(みそひと)文字に詠んでも あなたに届かない」という歌詞があって、「三十一文字」というのが和歌を示す言葉です。こんなきれいで素敵な言い方があったんだなと、思わず感激してしまいました。
ほかにも私の好きな(砂浜に)“小指で書きました 今でも好きと”という出だしなど、島の情景が浮かび上がる歌詞が並んでいます。海辺の様子が自然と連想でき、女ごころが素直に伝わってきますよね。私はまだ行ったことがないのですが、早くこの場所を見てみたい。この歌をきっかけに、皆さんにも足を運んでもらいたいですね。
夕暮れを感じさせる隠し味が随所に
「汐騒」は詩が先に作られ、そのあとに師匠である叶先生が曲をつけてくださいました。叶先生が、メロディーをきれいに歌おうとするのでなく、この歌では詩をまず大事にしなさい、と。情景が思い浮かぶように、言葉でしっかり表現することをアドバイスされました。
曲としては切ないイメージですが、叶先生らしい曲調で歌謡曲のテイストが少し入り、哀しみのなかにも明るさがあります。声質が合っているのか私の歌は幸薄い女性の歌が多くて、マイナーの曲がほとんど。とくに前作の「ひとり岬宿」などそうなんですが、今回は違って笑顔で歌えます。力を入れて歌わなくてもいい作品なので、叶先生の言うとおり、聴く人が瀬戸内の風景を思い浮かべられるよう、軽やかに歌っていきたいと思っています。
さりげなく流れる「夕焼小焼」
ところで、先生が無理にアピールしなくていいということだったのですが、お気づきだったようですね。一番と二番の間奏は、童謡「夕焼小焼(ゆうやけこやけ)」をアレンジしたメロディーになっています。一番のラストの歌詞が「小島は暮れる」で、それを受けて、夕方の雰囲気を出したちょっとした隠し味です。二番と三番の間奏はまた異なり、ほかにも夕暮れを感じさせる工夫が随所に入っています。全体的に哀愁が漂うステキなアレンジを、編曲の石倉重信先生がしてくださいました。
この歌詞を見るかぎり、女性が愛したお相手の方は、もしかしたら亡くなってしまったのかもしれません。いかようにも取れますが、そこは聴いてくださる方のイメージで受け取ってください。カラオケで歌う際は、まずは力まずに。そのうえで、言葉を大事にして歌ってほしい。そうすれば自然と情景が浮かんでくると思います。
演歌好きなら本格演歌「女のみれん」
カップリング曲の「女のみれん」は、オーソドックスなどっぷり演歌です。同じ原先生が作詩で、作曲の小林(房継)先生は10年以上前に一度お仕事でお世話になったことがあり、今回初めて曲をお願いすることになりました。独特なマイナー調の曲で、演歌好きの方にはぜひこちらも歌っていただきたいですね。
「汐騒」同様、海をテーマにした歌。“好きと 嫌いが ぶつかって 渦を巻きます 女のみれん”という歌詞など、鳴門海峡の渦潮を連想させます。女性の気持ちを海のうねりにのせた詩で、こちらも原先生の表現の豊かさを感じないではいられません。
ドクターストップ! 歌えない!!
20年も歌い続けてこられたこと自体、これほど幸せなことはありません。その間にはいろいろな出会いがあり、たくさんの人に支えていただきました。その出会いなくして今の竹川美子はありません。
振り返って過去一番苦しかったのは、デビューして10年ちょっと経ったくらいでしょうか。「ちぎれ雲」を歌っていた頃(2016年)で、喉を傷め、声帯に結節というペンだこみたいなものができてしまったことがありました。声が出せなくなり、ドクターストップ。その後、上咽頭炎も発症していることがわかって、キャンペーンはすべて中止せざるを得ませんでした。
完治まで、1年近く。その間、声が出ないだけでなく音も取れなくなるという最悪の状態に。歌おうとしてもそれまでの歌い方がまったくできなくて、もう金輪際歌えないんじゃないかとさえ思ったこともあります。
力まず、目の前の歌を大切に
復帰できたのは、やはり周りの人のサポートです。先輩方をはじめ多くの人が、自信をなくした私を励ましてくれました。今となっては思い出ですが、もう二度とこんな思いをしないためにも、復帰後は喉をはじめ体のケアにはかなり気を使うようになっています。
そんな経緯があっての20年。「汐騒」は周年曲ではありますが、それを強く意識するというのではなく、今後も一曲ずつ大事に歌っていくつもりです。キャンペーンでは、一人でも多くの方に聴いていただきたい。歌だけでなく三味線も披露して、弾き語りなどできたらいいなと思っています。ぜひ、楽しみにしてください。
竹川美子と同じステージで歌唱できる大チャンス!
竹川美子『20周年記念』カラオケ・コンテスト開催!竹川美子20周年記念作品「汐騒/女のみれん」の発売を記念し、カラオケ・コンテストが開催される。20周年を記念し、応募対象曲は竹川美子のデビュー曲「江釣子のおんな」から「汐騒/女のみれん」まで。カップリング曲を含むシングル曲全作品となっている。
一次審査を通過した優秀者10名は2024年1月、都内レコーディングスタジオにて決勝大会に出場し、最優秀者1名を決める。最優秀者は2024年3月23日、伝承ホール(東京都渋谷区)にて開催予定の「竹川美子20周年記念コンサート」で受賞曲を歌唱することができる。
なお、応募にはCD「汐騒/女のみれん」に封入される歌詞カードについている応募券が必要。
応募方法などの詳細は、日本クラウン 竹川美子ページへ
2023年5月10日発売
デビュー20周年記念作品
竹川美子「汐騒」
profile
竹川美子(たけがわ・みこ)
1月6日、広島県生まれ。父親が当時、春日八郎の後援会会長を務めていた影響で幼い頃から演歌を歌うようになり、カラオケ大会に出場。1991年12月には 『NHKのど自慢』の広島県江田島町大会に出場し、チャンピオンを獲得。1995年10月、 『NHK-BS歌謡塾あなたが一番』島根県美保関町大会で準チャンピオンとなり、作曲家 叶弦大氏と出会う。1998年より叶氏を師事し、神奈川県・伊豆長岡にて内弟子生活をスタートさせ、日舞、民謡、三味線などの稽古にも励む。2003年、「江釣子のおんな」で歌手デビュー。2007年には28回松尾芸能賞で歌手新人賞を受賞。2023年はデビュー20周年を迎え、2024年3月に渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホールで、デビュー20周年コンサートを開催予定。エフエム伊豆「竹川美子のドレ美子ソラシド」(毎週水曜20:30~21:00 OA)にレギュラー出演中。またPODCASTで「竹川美子の演歌ききますぅ?」を毎週月曜日21時に配信している(アーカイブはいつでも聞くことが可能)。もらってうれしいものは入浴剤。
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