
工藤あやのが初挑戦する悲恋演歌「白糸恋情話」~紡がれていた細い糸に自身を重ねて~
工藤あやのの2年ぶりの新曲「白糸恋情話」は自身初の本格演歌作品だ。明治半ばから昭和にかけて活躍した泉鏡花の小説を題材に、原文彦氏が作詞し、恩師・弦哲也氏が作曲した。紡がれていた細い糸に自身を重ねて涙するほどうれしかったという工藤。この楽曲のために関わってくれたすべての人の情けに感謝し、走り続けることを決めた!
「うれしくて涙が出ました」
「この曲に出会い、この曲に賭けられることが何よりうれしい」と工藤あやのは言う。作曲家・弦哲也氏の門下生となり9年目。2022年1月、2年ぶりの新曲となる「白糸恋情話」をリリースした。
コロナ禍のこの2年、思うような活動ができず心の中は複雑だった。誰よりも感情豊かで、人一倍がんばるけれど、人一倍落ち込みもする。悶々と考え込み、そんな自分の将来に「けじめをつけるときなのかも」と心は揺れ動いた。
でも、周りはそんなことなど誰も考えていなかった。水面下で動いていたのが今回の本格演歌作品だ。
「弦先生が今後の工藤あやのの楽曲や方向性についてずっと考えてくださっていて、デビュー以来ロック調演歌が中心でしたが、大正から昭和にかけての歌の世界観がやっぱりあやのには一番合うなと。そこへレコード会社のディレクターさんから、作詞の原文彦先生から預かっている作品があるのでどうかと声がかかったんです」
今回の楽曲は、泉鏡花の出世作と言われる「義決侠血(ぎけつきょうけつ)」が題材となっている。「滝の白糸」の外題で新派の代表演目でもある小説。概略は、旅芸人一座で水芸を披露し、美人太夫としても評判だった白糸が、たまたま出会った男の夢をかなえさせるために罪を犯してしまい、そのために死を喜んで受け入れるという切ない物語だ。
「原先生が誰か歌わせたいという人がいたらぜひに、ということで、2年ほど前にディレクターさんに預けていた作品でした。そこで白羽の矢が立ったのが私。すっと見えずにいたけど、細い糸がちゃんと紡がれ続けていたんだなと思うとうれしくて涙が出ました」
身を引き裂かれるような悲恋に挑む。
詞を受け取った弦氏も、原氏とまたタッグを組みたいと思っていたところでジャストマッチング。聞けば数日でメロディーが浮かび、完成したという。工藤にとっては7枚目のシングルで、2022年に賭ける思いは誰よりも熱い。
「小説を読みましたが、身を引き裂かれるような思いがしました。恋愛といっても燃え上がるような情念ではなく、純粋に相手を想い、切ないけれどそこには水辺に太陽の光が当たっているようなキラキラ感がある。主人公の女性も、そして男性も最終的には死んでしまうお話ですが、そのあたりの詳しいことは物語には書かれていません。だからこそ一本の糸で紡がれていく愛情を想像しながら、二人の気持ちを実らせてあげる、絶対かなえさせてあげるからねという思いで歌っています」
悲しいストーリーながら、人のために尽くそうと潔く、威勢のよさすら感じる主人公。どことなく工藤にかぶるところがあり、期待感はより一層膨らむ。

新曲「白糸恋情話」の発売を翌日に控えた1月25日、工藤あやのは新曲発売を記念した配信ライブを開催。ファンに悲恋演歌の世界を伝えた。
工藤あやのの世界観をつくる!
「この楽曲は、レコーディングで完成させないでほしいと弦先生に言われました。今の工藤あやのの等身大でいい、少しは背伸びをするかもしれないが出し切らないでほしいと。心情の変化をものすごく感じる曲でもあるので、歌い込んでいくことでどんどんよいものになるのだと思います。私自身もその日その時々の感情で歌い方が変わるタイプなので、それがいい意味で生きていけばいい。歌うことで成長していく楽曲ですね」
デビュー10周年に向けて、弾みとなる一曲になるであろう「白糸恋情話」。すでにMVがフルコーラスで公開されている。髪型や色合いにも自ら提案してこだわり、力の入った作品に仕上がった。艶っぽいCDジャケット写真の涙は本物だ。題字も作詞家の直筆文字に感銘を受け、ぜひにと原氏本人に書いてもらったという。
「同じ門下の先輩にあたる丘みどりさんには、歌って演じる『演魅(えんび)』がある。私にはまだ名前はつかないかもしれないけれど、これが工藤あやのの世界観だよ、というものをつくっていきたいと思っています。でも正直照れくさくて、艶っぽく歌ったあとになんちゃって! とか言いそうなんですが(笑)、そんな自分を否定するのはやめました。この作品と出合って、改めて感受性豊かに生きることは素敵なことだとそう思えるようになったんです。これまでポップスも歌ってきたので、こちらが好きというファンの方の声も大事にしながら、演歌との両刀使いでやっていけたらいいですね」
カップリング曲「手紙」。でも逢えない・・・。
「白糸恋情話」のカップリング曲として収録されるのがシンガーソング・ライターでもある向井浩二氏の書下ろしによる歌謡曲タイプの「手紙」だ。主人公の女性に届けられた愛する“あなた”からの手紙。読まなくてもそれは別れの手紙とわかった。故郷(ふるさと)を離れ、ひとり乗った電車の中で女性は涙する。一人前になるまでは、帰りたい、でも帰れない・・・。逢いたい、でも逢えない・・・。
曲づくりの際、工藤あやの自身が「スケールの大きいバラードを歌いたい」とリクエストして出来上がった作品だ。可愛らしく、すっと耳に入る聞きやすい工藤の歌声は、年齢を問わず幅広い人に受け入れられそうだ。
「向井先生にはボイストレーナーとしても、デビュー当時からお世話になっています。音域も、そして私のキャラクターもすべて理解してくださっていて、今回は曲も詞も手がけてくださいました。私はこれまでどちらかというと男性を手のひらで遊ばすような歌が多かったので、お願いしたのは髙橋真梨子さんの『for you・・・』のような、あなただけを追い求めているといったスケール感のある曲でした。それに対して先生が、あやのには故郷のイメージを少しは残したほうがいいでしょうとおっしゃってくださったんですが、私はきっぱりいらないと返答しました。でも、出来上がってみたら、“あの街の風”とか、“海の色”とか。故郷のキーワードがさり気なく入っていて、私らしいかなととても気に入っています」
現代はスマホがあるので、手紙を書く機会はめっきり減った。でも文字を書くのはとても好きだという工藤。
「別れ話もちゃんと手紙にして渡したことがあります(笑)。出会いがあって、でもいろいろあって別れてしまったという記憶がある人も多いと思う。そんな過去を懐かしく思い出しながら、この曲を楽しんでいただくのもありなんじゃないかと思います」
山形のひだまり娘、2022年を突っ走る
母親に連れられ幼少期から民謡を習っていた工藤あやの。2010年「弦 哲也 北区(きた)の演歌座2010」で行われた“新人歌手発掘オーディション”で大賞を受賞し、2014年1月29日に「さくらんぼ 恋しんぼ」でデビューした。今作「白糸恋情話」に出合うまでは、歌手を卒業しようかとさえ悩んだこともあった。だが、今は違う。走り続ける覚悟だ。そして、演歌をたくさんの人に知ってもらいたいと願っている。「路上ライブで自分を試したい!」と工藤は言う。
「2022年は、今回の新曲を大切に、大切に歌っていきたいと思っています。歌う場所を選ばず、田んぼの中でもどこでもいい。ストリートミュージシャンの聖地と言われる千葉県柏市への申請も出して通ったので、路上で一人で歌い、一人でも多くの人に聴いてもらいたいし、自分の力を試してみたいですね。
私の歌に足を止めてくれる人がどれくらいいるのか、最初はいないかもしれない。でも、それを積み重ねることで演歌を知らない人や、演歌を避けてきた人にもそのよさを伝え、届けることのできる存在になりたい。そして、自分が成長するには、周りの人の力も必要です。たくさんの方々に愛されるような、可愛げのある歌い手を目指してがんばっていきたいです!」
(文=藤井利香)
2022年1月26日発売
第7弾シングルは悲恋の本格演歌
工藤あやの「白糸恋情話」

「白糸恋情話」
作詞/原文彦 作曲/弦哲也 編曲/若草恵
c/w「手紙」
作詞・作曲/向井浩二 編曲/矢田部正
ボーナストラック
「山形育ち」
作詞・作曲/山口岩男 編曲/矢田部正
徳間ジャパンコミュニケーションズ TKCA-91388 ¥1,350(税込)
工藤あやの7作目のシングル「白糸恋情話」。前作「大阪花吹雪」(2019年11月発売)以来、約2年振りの新曲は、泉鏡花の石川県金沢を舞台にした小説「義決侠血」を題材にした悲恋演歌。工藤が初挑戦する本格演歌でもある。題字は作詞家・原文彦氏の直筆。写真の涙は「曲の世界に入り込むと、自然と溢れた」(工藤)。カップリングの「手紙」は歌謡曲タイプの作品。故郷(ふるさと)の大切な人から突然届いた“手紙”に、主人公の女性の想いが重ねられる。
ボーナストラックには、山形弁のセリフが入った、癒しを呼ぶ「山形育ち」が収録されている。山形県出身のシンガーソング・ライター、山口岩男氏による作品で、山口氏のアルバム『山形魂』に入っていた楽曲のカバー。昨年は地元・山形のコンサートでも山口氏とともに歌い好評を得ている。人懐こさを感じさせ、聴く人の心を和ませてくれる。
「大好きな、お守りのような一曲です。他の方の歌をカバーする、それを新曲として出すというのは難易度が高いことでしたが、これまでラジオ番組でアレンジを変えて歌うなどしてきたこともあり、今回CDに入って皆さんに聴いていただけるようになりすごくうれしいです。もともとあった曲ですが、私が歌うことでまた見える世界観を少しでも変えることができたらなと思っています」
profile
工藤あやの(くどう・あやの)
1994年5月7日、山形県生まれ。歌手志望だった母親に連れられ、幼少期より民謡を習い、数々の民謡大会で優勝するなど実績を上げる。2010年、16歳の時に母親が応募した「弦哲也 北区(きた)の演歌座2010」新人歌手発掘オーディションで大賞を受賞。作曲家・弦哲也氏の門下生となる。2013年、地元の高校を卒業後に上京し、2014年1月29日、「さくらんぼ 恋しんぼ」でデビュー。キャッチフレーズは“山形のひだまり娘”。2017年、ソロコンサート「工藤あやのin北とぴあ」を開催。2018年、津吹みゆ、羽山みずきと歌謡ユニット「みちのく娘!」を結成。「春ッコわらし」でユニットデビュー。2019年11月、演歌路線の「大阪花吹雪」をリリース。2021年12月、みちのく娘!の3作目となる「みちのく恋の花」を、2022年1月、本格的な演歌作品「白糸恋情話」を発売。元気と勇気と幸せを与えられる歌手になり、「NHK紅白歌合戦」への出場を目指す。「やまがた特命観光・つや姫大使」を務めているが、今年、新曲の舞台・石川県から「いしかわ観光特使」を拝命した。
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