西川ひとみ

西川ひとみが「絶唱・・・北岬」を魂の歌唱~ラストシーンは遠く叫ぶように”あなた・・・”~

前作「玄界灘に春が来る」では、オリコン演歌チャート初登場2位を記録し、スマッシュヒットとなった西川ひとみ。約2年ぶりとなる新曲「絶唱・・・北岬」は、夫を亡くし、子どもに支えられながら生きる女性が主人公の作品だ。西川は震災で出会ったお母さんたちの姿を浮かべながら、こぶしを効かせた前作の力強い歌声とは大きく趣を変え、重い内容の歌詞を語りかけるかのように歌い上げる。途中にはセリフも入り、西川の持つ世界観をさらに独特のものへと導いている。

「絶唱・・・北岬」のラストは、あなた・・・

作曲の岡千秋先生が、これまでとは違う歌唱で西川に歌わせたいとつくってくださった作品です。私はこれまで地声で押せ押せの歌唱法でしたが、この曲は力を抜いて裏声も使って歌います。歌う前は無理だと思っていたのですが、やってみたら意外によくて、もしかしてこれからの私にはこの歌唱が合っているのかな、と。思いがけず新境地を拓くきっかけになりました。

今までの曲を知るファンの方にしてみたらびっくりするかもしれませんね。どうしたのって(笑)。でも、ゴルフも全身ガチガチに力を入れてボールを打ったら飛ばないそうで、ふっと体の力を抜いてクラブを振ることが大事。歌も同じで、体に力を入れ過ぎるとそれ以上の声が出ません。しかもこの歌のストーリーは、つらい目に遭うながらも健気に生きるお母さんが主人公。お母さん役をどう表現するかはとても難しかったんですが、とにかく力を抜いて、声の響きで歌うよう心掛けました。

西川ひとみ

歌う際に生きたのが、過去に起きた東日本大震災や熊本地震などで出会ったお母さんたちの姿です。ご主人を亡くし、本当につらい思いをしているのに、それを表には見せないでがんばっている。「今でもだんなが戻ってくるような気がするんです」と、笑みを浮かべてそう話す方もいらっしゃいました。そんな心の内を聞いていたので、まさにこの歌の心境なんだろうと想像することができましたね。そういった方々に、早くこの曲をお届けできたらと思っています。

曲が完成するまでのエピソードはほかにもあって、例えばタイトルは当初「春待つ、北岬」でした。それが変更になったのは、ラストに「あなた・・・」と叫ぶ部分を急きょ入れたから。レコーディングしながら岡先生が、「ちょっと言ってごらん」と。遠くに叫ぶように言ったら、これなら「絶唱」のほうがいいとタイトル変更になりました。歌えば歌うほど簡単な内容の歌ではないことがわかりますので、私もこれでよかったと思っています。

今までにない挑戦。うれしい発見

セリフのところも、実は入れるかどうかレコーディング当日まで決まっていませんでした。でも歌をサラリと歌い、セリフで曲にインパクトを与えようということになり、セリフ入りが決定。朗読するイメージで語り、セリフが入ったことで曲が生きたなと感じています。

そして今回、力いっぱい叫んでいたところを抑え気味で歌っていますが、もっとも難しかったのが、1番から3番にあるサビの最後の「ネェあなた」のフレーズです。ささやきかけるように、声にならないくらいに歌うという今までにない挑戦でした。先ほども申しましたが、私の歌にこれもありなんだなといううれしい発見につながりました。

しかも、体にいい! 3年前の「海峡冬つばめ」では体をこれでもかと捻ったり、叫んで踏ん張ったりしたので、ぎっくり腰になってしまって・・・。腰がしっかりしていないと歌は歌えないというのがよくわかりましたね。スポーツと同じで歌も足腰が本当に大事。だからこの曲は、しっかりと地面を踏みしめながらも体の力はほどよく抜いて柔軟に。その方が歌にも強弱がつけられるので、今後もそれを意識しながら歌い続けたいと思っています。

西川ひとみ

イントロは、韓国風を意識したと聞いています。そして、曲中で私がとくに気に入っているのが「私だけ この世に 置いてった」の「置いてった」のところ。「置いていった」ではなく、「置いてった」。切ないけれど、可愛らしさが出ています。そのあとの「呼んでいる 私が見えますか」ところも、「私が」のところを地声で入らずに抜いて歌っているのがポイントです。今回はまず楽曲を何回も聴いて、この歌をどう歌っているかを知っていただくとカラオケでも歌いやすくなると思います。ぜひ、たくさん、たくさん聴いてください。

ちなみに、CDジャケットの着物は人形町の問屋さんで一目ぼれしたものです。「うそでしょ!?」と思うような値札がついていましたが、3時間粘って格安で購入。今では「値切りの西川さん」と言われています(笑)。値切り倒された問屋さんですが、今ではファンの一人になってくださって、いいご縁をいただきました。着物の柄は桜です。裾にいくほど華やかなので、こちらもステージでぜひ見て楽しんでください!

西川ひとみ

 

ノリノリで歌える「二人はいつでも歌日和」

「絶唱・・・北岬」のカップリングには、テレビのレギュラー番組『西川ひとみと三里ゆうじの歌日和』(BS 12/土曜日 あさ4時45分~)のテーマソングとしてつくられた「いつでも二人は歌日和」が収録される。MCを担当している三里ゆうじとのデュエット曲で、親しみやすく、誰もがノリノリで歌える。カラオケ好きの方はレパートリーの一つに入れたい曲だろう。

カラオケスナックが舞台の作品なので、皆さんきっと楽しんで歌ってくださるのではと期待しています。ところがレコーディングでは、笑い話がたくさん。お相手の三里さんは、私とテンポの取り方から違って、それが最初の関門でした。「ハッピー ハッピー」のところでは、三里さんたら「ピー」が訛ってしまうものだからさぁ大変。そんな関門がいっぱいあって生まれた傑作です(笑)。

その三里さんの衣裳ですが、赤いジャケットに靴まで赤かったんです。衣裳へのこだわりは私以上だったかも。

この曲をカラオケで歌う際は、コミックソングなのでどうぞ皆さん、自由に歌ってください。そして「ハッピー」のところは振りも好きにつけて、ぜひ盛り上がっていただきたいですね。

 

西川ひとみ

魂を入れて歌い、全国へ歌を届けたい

西川ひとみ コロナ禍で歌えない。これがどれだけ苦しいことなのかを実感したここ2年。自分でも気づかないうちにストレスを抱えていたようで、自律神経の病気になってしまいました。もともとよくなかったところへコロナ禍による活動自粛で症状が悪化し、顔面麻痺になったり、耳の調子が悪いなど、自分でもまさかの思いです。

いつもと違う日常を送ることで他にもいろいろな思いをしました。でも、こういうときだからこそ、じっくり考えることもできたと思っています。今までがむしゃらに進んできた私ですが、もっと気持ちを楽にして、自然体で歌っていってもいいなと思えるようになったんです。身に着けていた鎧をはいで初心に返り、今後は「西川、変わったな」と思われるようなステージをお見せできたら本当に幸せです。

2月の新曲発表会が中止になりとても残念でしたが、宮城県を皮切りに、北から南へと全国を回ってキャンペーンをさせていただく予定です。この曲はじわじわと世の中に浸透していくものだと思っていますので、ランキングもあまり気にせずに、魂を入れて歌うことだけを考えこの一年を過ごしていきたいですね。

(文=藤井利香)

 

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2022年2月2日発売
西川ひとみ「絶唱・・・北岬」
西川ひとみ

「絶唱・・・北岬」
作詞/円 香乃 作曲/岡千秋 編曲/伊戸のりお
c/w「二人はいつでも歌日和」(歌唱:西川ひとみ&三里ゆうじ)
作詞/円 香乃 作曲/岡千秋 編曲/伊戸のりお
徳間ジャパンコミュニケーションズ TKCA-91395 ¥1,350(税込)


西川ひとみ

profile
西川ひとみ(にしかわ・ひとみ)
9月14日、熊本県生まれ。四天王と呼ばれた昭和の浪曲師・松平円十郎の一人娘として生まれ、3歳のころには寺の境内で「岸壁の母」を歌った記憶があるほど、歌に関して父親の影響を受ける。幼くして父親が他界し、母娘で育ってきたが、物心がついたころから培われてきた歌の素養を活かし、歌手を目指して上京。6年間の修行を経て1994年2月、西村妃都美の芸名で日本クラウンよりデビュー。デビュー曲は「別府航路」。歌手活動のかたわら、ファッション誌『百日草』等着物モデルとしても活躍していたが、家庭の事情で歌手生活を一時中断していた時期もあるが、2005年、「ゆうすげ雨情」で歌手復帰。2007年、現在の西川ひとみに改名。2017年、徳間ジャパンコミュニケーションズへ移籍。2020年、移籍4作目となる「絶唱・・・北岬」をリリース。

徳間ジャパン 西川ひとみページ

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