山口ひとみ

山口ひろみは新曲「大間崎」でさらに艶めく美しい女性へ

「そんな通りいっぺんの歌を歌う歌手になるな」

作曲家の岡千秋氏がレッスン中に山口に投げかけた言葉だ。大きな節目となる歌手生活20周年を来年に控え、歌手・山口ひろみがもうひと皮むけるために必要なこと。それを気づかせるためにあえて厳しく伝えたのであろう岡氏に、山口は戸惑いながらも挑んだ。
そして、新曲「大間崎」は完成した。

20周年目前!切なくも情熱的な女性を歌う三部作最終章「大間崎」

 

Q 今回の新曲「大間崎」は、海を舞台にした「最終出船」(2018年)「悲恋半島」(2020年)に続く三部作の完結編ということですが、どんな作品でしょうか。

山口 前2作品は男性のほうにちょっと問題のあるシチュエーションだったのですが、今回は2番の歌詞にも出てくるんですけれど、女性側が訳ありの恋なんですね。なので、男性が身を引いて目の前から消えてしまったけれどどうしても思いきれなくて、すべてを捨ててただ逢いたくて彼を探しに北の果てまで行くという、とても情熱的な女性が主人公です。

Q  大間崎は本州の最北端の地ですよね。行かれたことはありますか?

山口 まだないので一度行ってみたいですね。最初は舞台を限定する土地の名前は歌わないということだったんです。だけど、実は前作の「悲恋半島」の時に、「北の果て」という言葉が出てくるんですが、『これはどこですか?』という問い合わせがあまりにも多くて(笑)。その話を、スタッフさんや作家の先生方が会議をされた時にお伝えしたら、いくつか出た候補の中から大間崎になりました。

Q 大間といえばマグロの一本釣りが有名ですよね!

山口 ですよね!イメージ的にはどうしてもそうなると思うんですが、あえてそこを狙ったみたいです。激しい波のイメージと激しい恋を重ねるというか……。私も本当にびっくりしちゃって。私自身も『大間~?!マグロですか?』って聞いちゃいました(笑)。

Q 今回は女性が訳ありという設定ですが、作詞を手がけられた麻先生からは何かお話しがあったんですか?

山口 そうですね。これまでとはちょっと変えてみようと、女性が男性に去られるのは去られるでもまた違った切り口もいいんじゃないかということで女性のほうに問題があるという。今の時代はこういうこともある……かなと思うので(笑)。

Q とてもストレートで大胆な歌詞も出てくるじゃないですか。歌われてみていかがでしたか?

山口 一作目の「最終出船」の頃から、20周年を前に“山口ひろみを変えていく”という目的があって、1曲の中に3コーラスあるとしたら最低1カ所は絶対にちょっとスパイスを効かせたところを入れようと。詞も曲もなんですけれどいわゆる泣き節、泣く女性よりは、もう少し“現代に生きる強い女性を描こう”というのがコンセプトのひとつにありました。ですが、切り口が変わって女性が訳ありだったことに関してはびっくりしましたね。二番に「叶わぬ恋と知りながら あの日抱かれた 愚かさつらさ」という歌詞があるんですけれど、事務所としてはもうちょっとオブラートに包んだもののほうが、という意見もあったんです。でも、最終的には私もいい歳なので歌手としてもうひと皮向けるのに、かわいいだけじゃなくて大人の感じを出そうということで「抱かれた」という言葉をあえて入れた、と麻先生はおっしゃっていました。

Q 山口さんとしては抵抗もなく歌われた?

山口 はい。私自身としては、全く抵抗はありませんでした。その前の言葉では「愚かさつらさ」の意味がストレートに伝わってこなくて。わかっていて抱かれてしまったから愚かだなと思う女性の気持ちもちゃんと描かれるなと思ったので、こちらで私は良かったなと思っています。

山口ひとみ

なりふり構わず愛する男性を追いかける女性を歌声で表現する

 

Q  今回も前2作と同じく岡千秋先生作曲ですがメロディーについてはいかがですか?

山口 先生もおっしゃっていましたけれど、とても歌いやすいです。細かい注意点はありますが、普通に歌いやすい気持ちいいメロディーだと思います。ちなみに、「お」がとても多いんですよ~。「追ってきました」「大間崎 大間崎」って。岡先生から 『「お」の発音をはっきり歌え』と、でも女性の歌なのであまり強く歌っても……という、力の入れ具合などの兼ね合いもあり、この点の表現が少し大変でしたね。

Q レコーディングでは、他にもいろいろとアドバイスをいただいたんですか?

山口 え~っと……、ほぼほぼ怒られた記憶しかないですね。先生は怒ってないよっておっしゃっていましたけど(笑)。レコーディングが始まって1、2回歌った後、『全くだめなんだけど』というところから始まって……。『うまく歌おうとか音程がどうとか全部忘れてくれる?とりあえず体全体を使って歌いなさい』と、もう本当にミュージカルみたいに歌うところからスタートしました。全てを捨てている女性なので、なりふり構わず愛する男性を追いかけて欲しいから、まず声を前に出すこと。それには岡先生の狙いがあって、20年目に向けて山口ひろみを変わっていかせたいというコンセプトがあってできた三部作なので、ここから先歌手として残っていくためにどうしていくか、というところの視点で書いてくださいました。どうしても20年も歌っているともちろんいいこともあるんですけれど、ついちゃいけない垢もついてしまって、変なクセとかこうすればうまく歌えるよねというのがわかってくるんですよ。岡先生はそれを全部捨てて欲しいと。まっさらなところからもう一度積み上げていくには、こういう歌い方をしていかなきゃいけないんだと言われて、目からうろこでした。

Q デビューしたばかりの頃の山口さんに戻るという感じでしょうか?

山口 もしかしたら、歌い始めた頃かもしれない。『音程なんて狂ってもいいから歌え』というのは、歌い始めた小さい頃までリセットしろってことかもしれません。私ミュージカルが好きなんですけれど、本田美奈子さんが舞台のオーディションを受けた時に同じことを演出家の方から言われていて、「そうじゃない。すべてをかなぐり捨てて、歌にならない歌でいいから表現しろ」と言われたというお話を思い出しました。私もまさしくそういうのを要求していただいたので、すごく今回も大変だったんですけれどとても勉強になりました

Q  山口さんに対する先生方の熱い思いを感じるエピソードですね。今回は特に生みの苦しみも味わった作品になったんですね。

山口  すごいやりがいもありましたし、ありがたいですね。私の中では、生みの苦しみというかまだ生んでいない感じです。毎日聴いていますけど、なかなか難しいなって……。

Q  来年は20周年という大きな節目を迎えられますが、何か考えられていることはありますか?

山口 昨年はほとんどキャンペーンもできていないんですね。前作はお客様の前で歌えたのが発売から半年後だったんです。まだまだ予測のできないコロナ禍の中で、今できることを考えなければなと思っています。「最終出船」の時から歌謡専門学校という企画をやらせていただいていて、今回もどうしようかと悩んだのですがオンラインでまた開校させていただくことになりました。前2作はDVD付きのCDに岡先生のレッスンを入れさせていただいていたんですけれど、今回はそうではなくて、コロナ禍なのでなかなかCDを買いに行けない方もいらっしゃると思うのでもっとたくさんの方に観ていただきたいとテイチクさんのYouTubeから配信させていただきます。ぜひYouTubeでレッスンを観ていただいてぜひ挑戦していただきたいと思います。本当は生で聴いていただきたいです。早く皆さんにお会いできることを楽しみにしています!

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北島ファミリー「ありがとうの空」

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2021年4月21日発売
全てを捨てて、あなたを求め辿り着いたのは……
山口ひろみ「大間崎」

「大間崎」
作詞/麻こよみ 作曲/岡千秋 編曲/南郷達也
c/w「ありがとうの空」
作詞/もりちよこ 作曲/原譲二 編曲/遠山敦
テイチクエンタテインメント TECA-21015 ¥1,350(税込)

来年迎える歌手生活20周年を前に”山口ひろみをもっと変化させたい”という作家陣やスタッフの思いが結集してできあがった、海を舞台に描かれる恋物語三部作の完結編「大間崎」。愛する男性を求め、あらゆるものをかなぐり捨てて本州の最北端に位置する青森県の大間崎に追いかけてくる女性の激しい愛を情熱的に歌い上げている。「麻先生は本当にずっと手がけてくださっていて、ずっと私の歌を聴いてくださって私が進みたい方向や進ませたいという方向も本当にビジョンをしっかり持ってくださっているので、すべて先生にお任せして書いていただきました。今回は女性のほうに事情があって一度は離れた二人ですが、止められない思いを抱いて女性が男性を追いかけていくという、現代に生きる強い女性像を描いています」(山口)
c/w曲「ありがとうの空」は、師匠である北島三郎が作曲を手がけた作品。「北島先生が”歌で皆さんを元気にしたい”とものすごくこだわってお作りになられた曲です。”うまいへた関係なしに、とりあず一緒に歌う時は気持ちを合わせて歌いなさい”と。これはファミリーならではですし、私たちファミリーが一致団結して心からお届けしたいと思います」(山口)

INFORMATION
山口ひろみ 歌謡専門学校 オンライン公開生授業2021を開催!

応募いただいたカラオケ音源をオンライン生放送を通じてご紹介、審査。第一次審査を通過した方々の応募音源をテイチク公式YouTubeチャンネル内にてご紹介。作曲家の審査・アドバイスによる特別授業で、あなたのカラオケの悩み・疑問に答えるワンポイントレッスン企画です。山口ひろみファン、カラオケファンの皆様はぜひご応募ください!

詳細は下記にて。
http://www.teichiku.co.jp/teichiku/artist/yamaguchi/

山口ひとみProfile
山口ひろみ(やまぐち・ひろみ)
1975年6月2日、大阪府生まれ。代々活躍した芸能一家に育ち、歌手を目指すようになる。大学在学中に北島三郎の弟子となり修業を重ね、2002年「いぶし銀」で歌手デビュー。北島ファミリーではその明るい性格と笑顔で末娘的存在のムードメーカーを担い、みんなから愛されている。防災士をはじめ、サッカー4級審判員やアロマテラピー検定1級など数々の資格を取得し、現在は心理学を勉強中。東日本大震災で被害に遭った宮城県女川町を第二の故郷と慕い、2017年、女川町観光大使を拝命。2022年には、歌手生活20周年を迎える。