井上由美子の「オロロン海道」~希望の春はきっと来る・・・自身の歌手人生も重ねて~

井上由美子の代表曲になる予感がした前作「野付半島」。この世の終わりの風景を思わせる野付の地を失恋した女性が訪れる作品だった。だが、世の中はコロナ禍で自粛・自粛の毎日が続き、作品の良さを世間にアピールする機会が制限された。そんな井上に届けられた新曲「オロロン海道」。旅の続きの始まりだった。野付をあとにした主人公は、オロロン海道の長い道を行く。その先にあるのは、もしかして希望? 井上自身の歌手人生とも重ね合わせられるような作品でもあった。

一歩踏み出すんだという決意の歌「オロロン海道」

Q 昨年発売された「野付半島」は、デビューから16年目で新たな井上由美子の勝負曲になるだろうと話されていた作品でした。ファンの方の反響というのはいかがでしたか。

井上 とても好評をいただいていたので「よし、これで頑張ろう!」と思っていた矢先のコロナ禍でした・・・。関東ではキャンペーンができて、これから地方に向けて動き出そうという時に止まってしまって全部なくなって。結局舞台となっている北海道にも行けなかったし、野付にも行けなかったので、中途半端で不完全燃焼で残念でした。

Q 今回の新曲「オロロン海道」は、その「野付半島」の続編ともいえる作品ですね。

井上 そうですね。「野付半島」は、失恋してそれを癒すために旅をして、死んでしまいたいという状況の中で、でも最後に春はいずれ来るからというような少し希望を感じさせる曲でした。今回の曲はさらに前向きな感じで、ここで自分は生きていくんだ、という一歩踏み出すんだという決意に変わっていく主人公の心情を歌っています。この曲でまた頑張れば、「野付半島」の時の分も挽回できるかなと思っています!

Q このコロナ禍にある中で、井上さん自身の歌手活動の裏ストーリーではないですけど、少し重なるところもあるんじゃないですか。

井上 歌詞の意味は違っても、違う意味で自分自身に重ねている部分があったりして、いろんな思いをサビの「風よ 海よ」というところにぶつけて歌っています。

Q オロロン海道とは、実際に北海道にある小樽から石狩、留萌、稚内を結ぶ322kmの海沿いを走る広大な道ですが、井上さんは行かれたことはありますか?

井上 あります! 3年くらい前にイベントで北海道に行った時に“日本海オロロンライン”を通ってもらったことがあります。まっすぐ果てしなく道が続いていて、空と道だけみたいな一本道。その時に、道の真ん中で車も来ないから写真を撮って、その写真がお気に入りの宝物なんです。先に進んでいく楽しみしかないような道だったなぁってすごい感動したのを覚えていて、この曲をいただいた時にあそこのことなんだ!って思い出しました。

井上由美子

北海道のオロロンラインで撮影した写真。人もいない。車も通らない。開放的な空間で撮影した写真の一枚で、井上由美子のお気に入り!

「サビの部分はとても気持ちよく歌って!」

Q この曲をいただいたのはいつ頃ですか?

井上 昨年(2020年)の11月ぐらいかな。曲はもっと早くできていました。徳久先生がメロディーを作ってくださっている時に、作詞の円香乃先生が打ち合わせに行ってくださって、そこでメロディーを聴かれて雰囲気を膨らませて書いてくださいました。

Q 徳久先生の中ではメロディーの雰囲気も前作「野付半島」の続きになるようなイメージがあったのかもしれませんね。

井上 そうですね。昨年は野付半島も回れていないし中途半端な感じでしたから、その流れのような作品を作ろうというのだけはおおまかにプランとしてあったようです。デモテープを聴いた時、徳久先生も気持ちよさそうに歌ってるな〜って、先生も好きな感じのメロディーなんだろうなって思いました。

Q 井上さんは初めて聴いた時の印象はいかがでしたか?

井上 正直、全然入ってこないという曲もあったりするんですが、「この曲は覚えるのに何回も聴かなくても大丈夫なメロディーでよかった!」と思いました(笑)。自然と耳に入ってきて残りましたね。

Q レコーディングはどんな感じでしたか?

井上 完成した作品の出だしのあたりなどは、すごく淡々とした感じになっているんですけど、レコーディングの時はもう少し抑揚というか感情を入れてみたくて、自分なりに歌い方に変化をつけたりなどチャレンジしたんですね。だけど、『サビの「風よ」にもっていくためにそういうのはなくていいかな』という話にない、ちょっと物足りないなみたいな感じで歌ったんですが、出来上がって何回も聴いているうちに、この方がいいかなって思うようになりました。その分、生で歌う時は力の入れ方も変わるだろうし、思いきりその時の気持ちで歌えばいいかなって。カラオケでも、皆さんにとくにサビの部分はとても気持ちよく歌っていただけるんじゃないかなという仕上がりになりました。

Q 最後に今後の目標や抱負を聞かせてください。

井上 今世の中がこういう状況の中で(コロナ禍で)、内容はまったく同じ心情ではないけれど、少し重なるような歌をいただいたのも運命だと思っています。いろいろな思いも重ねながら歌って、この曲でなんとしても生き延びて(笑)、人の心の役に立てるような歌手になりたいですね。自分の目指すところに向かって頑張りたいと思います!

 

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2021年3月10日発売
井上由美子「オロロン海道」

井上由美子「オロロン海道」

「オロロン海道」
作詞/円 香乃 作曲/徳久広司 編曲/伊戸のりお
c/w「野付半島」
作詞/円 香乃 作曲/徳久広司 編曲/伊戸のりお
キングレコード KICM-31009 ¥1,400円(税込)

「雪の野付を後にして・・・」という歌詞が、前作「野付半島」の世界観を残した続編ともいえる作品。北海道にある小樽から石狩、留萌、稚内を結ぶ322kmの海沿いを走る広大な道”オロロン海道”を流れる風、そこから望める海に向かい、失った愛に別れを告げ前を向いて歩き出そうとする切なく強い女性の心情を歌う。カップリングには、昨年発売した前作「野付半島」を収録。


profile
井上由美子
(いのうえ・ゆみこ)
9月10日、大阪府生まれ。中身は生粋の大阪人だが、歌手を目指して上京。高校からは東京の住人へ。歌手への道はなかなか開けなかったが、2003年、文化放送「走れ! 歌謡曲」35周年記念演歌歌手オーディションで優勝し、2004年、「恋の糸ぐるま」でデビュー。2009年1月、初めての単独コンサートを東京・新宿区の四谷区民ホールで行う。また同年、ファンクラブ「ゆみっこ広場」を開設。2011年11月、同じキングレコード所属の永井裕子と女性演歌デュオ「なでしこ姉妹」を結成し、デビューシングル「望郷おんな節 」をリリース。2019年11月、歌謡テイストの新機軸となる「野付半島」に挑戦し、2021年3月、その続編とも言える「オロロン海道」を発売。好きな言葉は「一生懸命」。口癖は「アホか!」だが、大阪人の井上は「挨拶代わりみたいなモンだと思っております」とのこと。「どんな時でも人を思いやる優しい心を忘れずに、体は小さいけど、精いっぱいの力で一生懸命歌います!」(井上)。

井上由美子 公式HP
井上由美子 公式ブログ「井上由美子のなんでやねん!?」
井上由美子 公式ちゃんねる「ゆみっこ広場」

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