三山ひろしの新境地②~勝負曲「谺-こだま」 全力で、半歩でも前へ~

昨年12月に“三山ヒロシ”名義で初のポップス曲「その名もコノハナサクヤヒメ」に挑戦した三山ひろしだが、令和三年の勝負曲「谺-こだま」もまた、ある意味で挑戦となった。デビュー以来、オリジナルシングルは師匠である故・中村典正氏の曲を歌い継いできたが、初めて新境地へ踏み出したからだ。

 

中村作品との区切り。覚悟はしていたが、寂しさもある

いではく氏が作詞し、四方章人氏が作曲を手がけた三山の新曲「谺-こだま」は王道の演歌だ。懐かしい山々といった故郷の風景が目に浮かび、望郷の想いを三山ならではのスケール感で歌い上げる男唄となっている。新たなシーズンを精力的に活動しようという、さらなる意気込みも伝わってくる。

――1番は「さよならと叫べばヨ さよならと こだまが返る ふるさとの山」という歌詞で始まります。三山さんの故郷・高知の山々が返す、力強いこだまが連想できます。

三山 僕が歌手を志していよいよ上京するという時、見納めかなと思って見つめた時の山々を思い出します。もし歌手になれなかったら二度と故郷には帰らないつもりだったので、他人にはわからないような切々たる思いがありました。そして、この1番の歌詞は「都会に出てから 早十五年」と続きます。25歳で家を出て、40歳になったまさに今の僕のようです。作詞のいではく先生はそれをわかって詩にしてくださったと思いますが、余計に心揺さぶられるものがありますね。

――作曲は四方章人氏です。亡くなった師匠の中村典正氏から、初めて離れた作品となっています。

三山 先生が残された中村作品はまだあるのですが、ここでひとつの区切りとしました。勝負曲が先生の作品ではなくなったことは、覚悟はしていましたが寂しさがあります。レコーディングの時もグッとくる思いがありましたね。演歌しか書けないという武骨な先生のもとで、それがかっこいいと思い、信じてやってきましたが、これからは中村イズムを持ちながら心を切り替え、“三山ひろし”はこんな曲も歌えるんだとアピールできるようステップを踏んでいきたい。気持ちを新たにできる、いい曲をいただいたと思っています。

いい意味で、期待を裏切り続けたい

――カップリングは「一献歌」。同じ作家陣による作品で、どこか懐かしく、心地いいメロディーです。“フォーク演歌”と評されています。

三山 この曲を初めて聴いた時、コンサートでギター片手に弾き語りをやりたいなと思いました。今風でオシャレな、フォーク調の曲です。“ニュー三山ひろし”のイメージですね(笑)。

――お酒をモチーフにした歌ですね。

三山 時を経てお酒の味わい方も大きく変わってきました。年を重ねるにつれて自分に合った好きな飲み方ができるようになり、何をするにも自分のこだわりを入れられるようになりました。古き友人と飲む時は、現実に向き合いながらも、時に思い出に浸って語り合い、言葉と言葉の間に生まれる空白もまた酒の肴になるんですね。まさに今の自分が投影できます。そんな、40歳になったばかりの僕が等身大で歌える楽曲になっています。

――これからが男の盛りともいえる年齢ですが、実際に40歳になった心境を教えてください。

三山 祖母がかつてよく言っていたんですよ。「四十過ぎての男の意見、彼岸過ぎての麦の肥(こえ)」って。お彼岸が過ぎていくら肥料をあげても麦は育たない。同じように、四十過ぎた男にいくら意見しても聞き耳を持たない、という意味です。祖母は「このことわざのようになったらいかん。常に人の声に耳を傾け、そうでないと人として成長せんからな」と言っていました。当時はピンとこなかったけど、今ならよくわかります。四十代は経験も積んで、自分にある程度自信が持てるようになった頃。でも、そこが落とし穴。いつも自分の頭をスポンジみたいにして、言われたことをきちんと吸収したうえで責任ある行動をしたいですね。

――2021年はどんな三山さんが見られるでしょうか。

三山 「その名もコノハナサクヤヒメ」も含め、新たな曲が生まれています。コンサートではこれまでにない内容で盛り上げていきたいです。6月に中野サンプラザ(東京)を予定していますが、ギターの弾き語りがあるかもしれないし、華やかに、キラキラとした演出を考えています。乞うご期待! そして、こうした挑戦も含め、いつまでも気持ちは若く、演歌界の元気印でいたいですね。原点に立ち返れば、自分がなぜ歌手になりたかったのか。それは、僕の歌で皆さんが喜んでくださるからです。皆さんに笑顔になってもらう、楽しんでもらえる自分でないといけない。これは絶対に譲ってはいけないことなので、いつの時も全力で努力し続け、半歩でも前へ。いい意味で、期待を裏切り続けることのできる自分でありたいと思っています。

文=藤井利香


2021年1月13日発売
牧歌的な魅力とスケール感
三山ひろし「谺-こだま」

「谺-こだま」
 作詞/いではく 作曲/四方章人 編曲/伊戸のりお
c/w「一献歌」
 作詞/いではく 作曲/四方章人 編曲/伊戸のりお
日本クラウン CRCN-8379 ¥1,227+税

2021年の新曲・第一弾としてリリースされた「谺-こだま」。三山はシングル曲(表題曲)としては、デビューから故・中村典正氏の作曲作品を歌ってきたが、師匠以外の作曲家が手がけた曲をシングル曲としてリリースするのは初となる。牧歌的な魅力とスケール感を合わせ持った男唄で、谺(こだま)をモチーフに望郷の想いが綴られている。カップリング曲「一献歌」は、酒をモチーフにしたフォーク演歌となっている。


2021年1月27日発売
DVD「三山ひろし物語~こころの師匠と共に」
三山ひろしが歩いてきた道と師匠・中村典正との思い出を歌と語りでたどる映像作品。

<収録曲>1.いごっそ魂 2.男の路地裏 3.祝いしぐれ 4.仁義 5 終着駅は始発駅 6.男の港 7.こころ酒 8.むらさき雨情 9.人恋酒場 10.お岩木山 11.祝い船 12.男の燈台 13.浮草慕情 14.花街一代 15.これから峠 16.父・娘(おやこ) 17.祝い船 18.望郷山河 19.北のおんな町
日本クラウン CRBN-95 ¥4,364+税


Profile
三山ひろし(みやま・ひろし)
1980年9月17日、高知県生まれ。本名は恒石正彰。作曲家・中村典正氏のもとで修業し、2009年、「人恋酒場」でデビュー。音楽情報番組「あさうたワイド」(BS日テレ。毎週木曜日 午前5時~5時29分)では師匠・松前ひろ子とともに司会を務める。2020年12月2日に初めてのポップス曲「その名もコノハナサクヤヒメ/きみにハレルヤ!」を、”三山ヒロシ”名義でリリース。2021年1月13日には新曲「谺-こだま」を発売し、谺(こだま)をモチーフに望郷の想いを歌う。また2020年大みそかの『NHK紅白歌合戦』には6回目の出場を果たし、企画としてギネス世界記録「連続してけん玉をキャッチした人の最も長い列」に挑戦。125人を達成し、2年越しの記録更新を果たした。

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