【マキマキ 歌の交差点!】天童よしみさん「残波」
天童よしみさんの2021年の勝負曲「残波」。各種ランキングでも上位となっている「残波」について、オトカゼチャンネルのメインパーソナリティー、牧野尚之さんがインタビュー。司会者として長年の経験がある牧野さんだから聞けるアーティストの本音と素顔をお届けします。
ノスタルジックな薫り漂う「残波」
牧野 今日は新曲「残波」をお出しになった天童よしみさんに、いろいろとお話をうかがってまいりたいと思います。天童さんよろしくお願いいたします。
天童 よろしくお願いします!
牧野 新年になりこれから頑張ろうということなんですが、昨年はいろいろございましたけれども、日頃どんな感じでお過ごしになっていましたか?
天童 そうですね。昨年は非常に大変な年でありましたし、世界、日本中もちろん皆さん大変だったと思うんですけど、わたくしなりに、やっぱり歌手として少しでも心身ともに元気で、そして早く皆さんに歌を届ける。これが使命でしたから、そこらへんはしっかりとやっていきたいと思って頑張ってきました。
牧野 デビューが1972年。ということは、今年2021年はそれこそ半世紀ですよ。
天童 本当にいろんなことがありましたね〜。いや〜本当にたくさんの出会いもありましたし、支えてくださった皆さんには感謝でいっぱいですね。
牧野 その中で天童さんはじつにいろいろなことに挑戦をされており、新しいところでは『NHK 紅白歌合戦』では、少年忍者さんよる和太鼓パフォーマンスとコラボされました。結構楽しみながらやってらっしゃるんですか?
天童 もうね、なんかこう心強いというか。皆さんがパフォーマンスを演じてくださるし、私もすごく歌がノッてくるというか、紅白のたびに楽しみなんですね。どなたと今年は一緒に共演できるんだろうとか、コラボできるんだろうとか、すごく思いますね。
牧野 そしてまた作品でも、オペラのカルメンに挑戦したりとか……貪欲ですよね。
天童 はい! これからはどんどんこういろんな引き出しを開けて、天童よしみはこんなこともできるんだみたいな自分の可能性をどんどん引き出していただけたらうれしいなと思います。
天童よしみの新たな挑戦
牧野 ところで、新曲「残波」。イントロを聴いた途端に南の島の雰囲気が出てまいりました。まず、ご自身からこの作品についてのお話をいただけますか。
天童 やっぱり故郷っていうのは一番いいですよね。私自身もやっぱり故郷を思う気持ち、帰りたいなぁ、でもやっぱり今は帰れない。でもそういうふうな気持ちが募ってきて。「残波」っていうのは、遠くに行ってしまった恋人、いつまでも故郷でその場所でいつまでも待っているという気持ちを表した歌ですね。
牧野 実際に沖縄の読谷村に残波岬という岬がありまして、すごくきれいなところです。沖縄の本島の中で、夕日がいちばん最後に沈むところ。それが歌詞にもありますよね。
天童 そうですね。いちばんおしまいに。”夕日が最後に沈む場所(とこ)”っていう歌詞なんですけれど、そこがやっぱり一番胸に迫るところですね。
牧野 メロディーとしても、島唄の雰囲気を出しながら、でも、作曲の杉本眞人先生のなんともすばらしい音の広がりと、それから水木れいじ先生の作詞。天童さんが以前ある番組で「私は詞を読み込んで、詞をまず大切にしたいんです」とお話しされていましたけども、最初にこの作品の詞を読んだ時はどんな感じでしたか?
天童 そうですね。”あの子にもらったビー玉ひとつ”っていうところが、一番皆さんの耳に残るメロディーと歌詞なんですね。ビー玉って昔ながらのおもちゃ箱に必ず入っていたりするじゃないですか。私もおもちゃ箱をひっくり返して、よくビー玉で遊んだんですよね。だからきっとね、その子にもらったビー玉を心に置き換えて、ずっと帰りを待っている。手のひらに乗っかったそのビー玉をずっと見つめながら。夕陽にかざしたらキラキラするとか、そういうふうな思い出みたいなのを全面に出している。そこを主人公に当てはめて歌いましたね。
牧野 聴いていてもじんわりと感動を与えてくれる、いい歌に仕上がってるなと思いました。
天童 ありがとうございます。三線がすごく遠くで流れているアレンジによって、故郷が遠いという意味を出しているといいますか。今までにないサウンドと、そしてまた都会の雰囲気とカッコ良さとがものすごくミックスしていて、この「残波」は聴いてくださる皆さんの心にきっと入っていくだろうと信じて歌っていこうと思います。
牧野 なるほど! 天童よしみさんの世界の中に。しかも新しい天童さんの世界ということですね。これも新たな挑戦のひとつでもありますよね。
天童 いろいろなメロディー、サウンドにチャレンジしていきたいと思っています。
出だしは静かに、最後は叫ぶように
牧野 「残波」は前作「日の出前」の時と同じ作家の先生方の作品ですから、そういう意味ではレコーディングの時は楽しくできたんでしょうか?
天童 杉本先生も水木先生も私が本当に何十年も前からお世話になっている先生方なので、私のこともよく知ってくださっているし、「あ、ここの音だったら天童はこういうふうに歌うだろうな」とか、そういうのを全部計算してくれています。だから、すごく気持ちよくレコーディングできました。
牧野 天童さんの歌はどれもそうなんですが、カラオケファンの皆さんが歌ってくれる歌ですよね。この歌もね、カラオケで愛唱される歌だろうなと思いますけれども、どんな感じで歌ったらいいか、ワンポイントアドバイスを教えていただけますか?
天童 ワンコーラス目はとにかく声があまり出ていない方がいいんですね。弱めの感じで語っていくような、お話をするように”旅の人に 恋をして”と静かに歌っていくといいと思います。そして、1コーラス目のあとに間奏が入りますが、やや強く2コーラス目に入って行って、そして、最後のハーフのところで完全に大きく持っていくという感じですかね。ざくっくりいうと、そういうふうな歌い方が一番理想的ですね。
牧野 曲の歌い方にドラマを作るみたいな感じでしょうか。
天童 最初は相手の方にお話ししているように”旅の人に恋をして”。で、2年前に手紙が来て元気にしてるって言っているんだけど、いつまでも帰りを待ってるよ。都会の絵具に染まっても、もらったビー玉を夕陽にキラキラするときれいな、この場所に帰っておいでよという叫びですね。
牧野 本当にね、情景が浮かんでくるような歌の世界がね、私も一回聴いただけで情景がうわっと広がりました。
天童 うわぁ、うれしい。ありがとうございます。
亡き父の思いを込めた「梅の木ものがたり」
牧野 カップリング曲の方もお聞きしたいんですが、同じ水木先生、杉本先生の作品で「梅の木ものがたり」。
天童 こちらは杉本先生のメロディーの中ではすごい演歌・歌謡曲の世界なんですけれど、でもすごい柔らかいなんとも言えないかわいらしさ。梅の花のなんとも言えない強さっていうのかな。寒い時に咲くという。そして私の亡くなった父が、もう13回忌になるんですけれど、父が大好きだった花が梅の花なんですね。実は、父が私と母のためにちゃんと2月ごろになったらちゃんと咲けるように、亡くなる前に梅の花の記念樹をね、植えてくれていたんですよ。大阪の家の近くの公園に植えてくれていて、そこへ行くとすごく父のことを思い出すんです。それを水木先生が存じ上げてくださっていて、水木先生もその梅を見に行かれたことがあって、カップリング曲の「梅の木ものがたり」は父の思いを全面に出してくださしました。
牧野 私は聴いた時に、これは天童さんからの、とくに女性の方への人生歌だろうなと思いました。頑張れよ、という。
天童 そうですね。メッセージです。
牧野 そこにお父さんが大好きだったその梅の木が加わっています。
天童 やっぱり梅の花っていうのはすごく咲くと綺麗ですけど、その咲くまでにものすごい冷たい雪や風を受けます。それで、春が近づくとぱっと咲いてしまうというか、この勢いがね、私はやっぱり好きですね。
牧野 寒さに耐えて、そして寒さの中で花咲かせる。その力強さですよね。
天童 はい。それを人間に置き換えて、父がよく、梅の木の話をしてくれました。思い出すと胸が熱くなりました。
牧野 最新シングルは両A面と言ってもいいくらいの、天童さんから届けたい新しい年のメッセージソングだと思います。
天童 皆さんも今は、本当に大変な毎日でしょうけれども、私の新曲「残波」、そして「梅の木ものがたり」。この2曲を聴いていただいて少しでも気持ちをパーっと明るく、そして前に前に進めるように願っています。
牧野 天童さんからも今年、またいろいろなことにチャレンジするという決意の言葉もいただきました。心から天童さんのご活躍をお祈りしたいと思います。今日はお忙しい中ありがとうございました。
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2021年1月20日発売
あなたの宝物は何ですか?
天童よしみ「残波」
【通常版】
【DVD付】
視聴もできる! デジタル配信
天童よしみ「残波」
音楽配信サービスで配信中
Profile
天童よしみ(てんどう・よしみ)
9月26日生まれ。大阪府八尾市で育ち、1971年、「ちびっこのど自慢」に出場して優勝。その実力が認められ、フジTV系の「いなかっぺ大将」挿入歌「大ちゃん数え唄」をレコーディング。また読売テレビ「全日本歌謡選手権」で10週勝ち抜き、最年少で7代目チャンピオンとなる。1972年、「風が吹く」でデビュー。1985年の「道頓堀人情」でブレークし、1993年、「酒きずな」で「NHK紅白歌合戦」に初出場を果たす。1997年にリリースした「珍島物語」が大ヒットし、その後の活躍は衆目の一致するところ。近年の活動も積極的で、2018年8月にはアルバム『VOICE』の発売を記念して、品川ステラホールでコンサートを開催し、全国の映画館にも映像を生配信。演歌業界初のライブビューイングを行う。2019年1月には平成最後の人生応援歌として「一番星」を発売。新元号「令和」となった2019年6月は、笑福亭鶴瓶が”泣けて泣けてしょうがないねん”と評価した、自身初のラブソング「大阪恋時雨」をリリース。2020年は3月には天童節炸裂の「日の出前」を発売。またYouTube公式チャンネル「天童よしみのなめたらアカンちゃんねる」開設、インスタグラムにも挑戦するなど、さらに活動の幅を広げつつ、アニメソングとしては「大ちゃん数え唄」以来、NHK Eテレのアニメ番組「オトッペ」の新エンディング曲「オトッペおんど」(6月発売)を歌う。2021年1月、新曲「残波」をリリースし、4月にはアルバム『Buddy(バディー)~素晴らしき相棒 』をリリース予定。