
吉永加世子が「シティポップ」に挑戦した涙と歓喜のサマーライブ。来年2月、日本橋公会堂でのコンサート開催も発表!
師匠・吉幾三の「女唄」を継承する吉永加世子が8月29日、東京・港区のライブレストラン「六本木バードランド」にて恒例のライブを開催した。
ギターの藤井弘文がバンドマスターを務めるK.Yバンドの厚みのある演奏をバックに、世界的に再評価されている「真夜中のドア~Stay with me~」や「フライディ・チャイナタウン」といったシティポップに初挑戦。さらに、2027年2月26日に日本橋公会堂でのソロコンサート開催というビッグニュースを笑顔で報告。
アンコールでは、自身が初めて作詞を手掛けた「冷たいKiss」を25年ぶりに披露。亡き恩人を偲び、挑戦と感謝、そして決意あふれる、熱くも温かな一夜となった。

師匠・吉幾三との絆から始まった情熱の幕開け
近年、精力的にライブ活動を展開している吉永加世子。今年2回目となるバードランドでのステージ「吉永加世子サマーライブ2026」は、情熱的な「燃えつきて」で幕を開けた。この楽曲は吉幾三プロデュースによるもので、2020年に彼女にとって実に12年ぶりの新曲としてリリースされた、歌手人生の再点火ともいえる大切な一曲だ。
ここから彼女は2024年のデビュー30周年までを全力で駆け抜け、昨年12月には師匠の隠れた名曲「紅~べに~」を継承して世に放った。


鮮やかな歌声で会場を一気に引き込むと、吉永は晴れやかな表情で観客へ語りかけた。
「恒例となった吉永加世子サマーライブ。今日は張り切りすぎていますが(苦笑)、懐かしい曲や人気歌謡曲もカバーし、シティポップにも挑戦します。ノリノリで楽しんでください!」
客席には、関東圏のみならず、愛知、長野、そして岩手からも熱心なファンが駆けつけ、会場は満席となっていた。
夏の名曲、そして初の「日本橋公会堂コンサート」発表
続いて披露されたのは、髙橋真梨子のヒット曲「はがゆい唇」。大人の切ない恋心を艶やかに表現すると、「今年はあまり夏祭りに出かけることができませんでしたが、今日は歌の世界で夏を満喫したいと思います」と語り、美空ひばりのミリオンセラー「真っ赤な太陽」、そして師匠・吉幾三の「立佞武多(たちねぷた)」を連続で披露した。

五所川原の「立佞武多」といえば、青森三大ねぶたの一画。吉永自身、師匠と共にその特設ステージで声を響かせた経験がある。会場に「ヤッテマレー!ヤッテマレー!」という勇壮な掛け声が響き渡ると、都会のライブレストランは一気に夏祭りの熱狂に包まれた。

興奮冷めやらぬ中、吉永からファンへ嬉しいサプライズが報告された。
「昨日のラジオを聞いてくださった方もいらっしゃると思います。情報解禁になったばかりです!」
期待に満ちた静寂の中、彼女が告げたのは、新たな大きな一歩だった。
「少し先ではありますが、来年2月26日・金曜日。初会場となりますが、日本橋公会堂でコンサートを開催します!」

1994年、“小林加代子”としてデビューして以来、幾多の改名や移籍を経て、現在の「吉永加世子」へと至った彼女。2017年からは師匠の公演に帯同し、地道に、そして着実に磨き上げてきた歌声が、また一つ大きな花を咲かせようとしている。客席からは「おめでとう!」という温かい声援と大きな拍手が降り注いだ。
「ありがとうございます。平日の金曜日開催ですが、皆さん、開けておいてくださいね!」
笑顔で応える彼女の言葉には、言葉以上の重みと、ファンと共に歩んでいきたい決意が感じられた。
都会的な風を吹かせたシティポップ・コーナー
今回のライブの白眉ともいえるのが、中盤に設けられたシティポップのコーナーだ。
藤井弘文(Gt)、田口英穂(Ba)、伊藤広晴(Sax)、ゆうたろう(Dr)、村尾美恵(Vn)、森脇さとる(Key)、長谷川素子(Tp)からなる7人編成のK.Yバンド。実兄であり、ものまねタレントとしても活躍するゆうたろうがドラムスで参加し、管楽器とバイオリンまで加わった立体的なサウンドが吉永を支えていた。


一曲目は松原みきの「真夜中のドア ~Stay with me~」(1979年)。近年、世界的な再評価により億単位の再生数を記録しているこの名曲を、吉永は都会的できらびやかなグルーヴに乗せて歌い上げる。
続いて、山下達郎が作詞しアン・ルイスが歌った「恋のブギ・ウギ・トレイン」(1979年)、さらに杏里の「悲しみがとまらない」(1983年)、八神純子の「パープルタウン 〜You Oughta Know By Now〜」(1980年)、佐野元春の「SOMEDAY」(1981年)と、1980年代の名曲を怒涛のメドレーのようにつないでいく。


この日、準備されたシティポップはいずれも吉永自身が大好きな楽曲だが、ライブでの披露はすべて初披露。確かな歌唱力があるからこそ成立する大人のポップスに、観客は酔いしれた。そして最後は、泰葉のデビュー曲であり、シティポップ再評価の起爆剤ともなった「フライディ・チャイナタウン」(1981年)でこのコーナーを鮮やかに締めくくった。

手話で届けた「木蘭の涙」と、明かされた涙の理由
後半、鮮やかなオレンジのパンツスタイルに着替えて再登場した吉永は、かつて“奈々世里奈”として活動していた2005年にリリースした「合鍵」を披露。同曲は、しばたはつみの改名後の再デビュー曲でもあり、吉永の歌手人生とも重なった。


「『合鍵』は、吉永加世子になる一つ前、“奈々世里奈”という、とっても可愛らしい名前の時代がありまして(苦笑)、その時の歌です。この『合鍵』で出会ったファンの方が、今日、横浜から来てくださっています。お祭りで『合鍵』を歌った際に、焼きそばを焼いていた方です。『応援します』ってCDをご購入いただいて、それ以来応援をいただいていまして、今日はお母さまと一緒にお越しいただいています」
大切に温めてきた出会いに感謝を込めつつ、“合鍵”を捨てられない女性の切ない未練を切々と歌い上げた吉永。「サマーライブ」というマスターキーによって、ライブ後半がスタートした。

続いて披露されたのは、手話のメッセージを添えた「木蘭の涙」だった。
「『木蘭の花』はカバーで歌われている方も結構多いし、私も過去にライブで歌わせていただいたことがあるんですが、手話をしながら歌うのは初めてです」
空に向かって咲く木蘭、去っていった大切な人の姿を重ねる。吉永は歌唱の最中、溢れ出る涙を抑えることができなかった。

「いつまでも いつまでも 側にいると 言ってた あなたは嘘つきだね」(「木蘭の涙」歌詞より)
「今日のね、この8月29日のサマーライブをとってもとっても楽しみにしていた方が、つい先日亡くなられてしまいました。まだ四十九日も経っていないんですけどね。今日は、写真を持って来てくださっています。ありがとうございます。そして、私がライブをするきっかけをつくってくださった武井さんという、(吉幾三)先生のコンサートの時にトランペットを吹いていた方がいたんですけども、その方もね、昨年、亡くなられまして……。ライブをするたびに、武井さんのことが思い出されるんですけど、今日は久しぶりにね、武井さんの家族の方もお越しいただいています」

涙を拭い、「うちの家族はみんな泣き虫なんです」と照れくさそうに笑いながらも、「皆さんに応援していただき、温かい心をいただいて歌わせていただける私は、本当に幸せです」と、噛みしめるように語った。
吉幾三の優しさに包まれて――「紅~べに~」で本編を完走
気を取り直して笑顔を見せると、後半戦へと加速する。「師匠の懐かしい名曲です」と紹介した「横浜(ハマ)ものがたり」、そしてダウン・タウン・ブギウギ・バンドの歌謡ブルースロック「身も心も」を「女性が歌うのは珍しいかも」と骨太に聴かせると、神野美伽の「酔守唄(こもりうた)」を圧巻の声量で歌い上げた。

本編の最後は、最新曲「紅~べに~」。
女が紅をつける時 昔惚れた人を想うの
女が紅を落とす時 そんなお人を恨む
(「紅~べに~」より)
吉幾三が描く、愛と憎しみが交錯する女性の情念。年齢を重ね、多くの経験を積んだ今の吉永加世子だからこそ表現できるドラマティックな世界観が描き出された。


ただ、いつもは客席の後方から見守り、時にはレコーディングを抜け出し、サプライズで顔を見せていた吉幾三。しかし、この日のライブに吉の姿はなかった
「今日も先生はお見えになる予定だったんですが……」と寂しさをみせつつも、恩師の前で歌う緊張感から解放されたのか、「先生がいないので安心です(笑)」と、冗談めかした吉永。だが、「この前、先生とお会いしたら、そろそろ次の曲のことを考えないとな」と、新曲の心配をしてくれる師匠の優しさを明かしていた。
恩人へ捧げる25年ぶりの「冷たいKiss」

アンコールでは特別な一曲を携えて、吉永はステージに戻ってきた。それは作詞・kayoko 、作曲・武井正信による「冷たいKiss」だった。
「初めてライブ活動をスタートしたきっかけとなったのは、武井正信さんが率いる12人編成のバンド AUCTION(オークション)のボーカルとして参加したことです。全国の学校コンサートや、定期的なライブ開催を行なっていました。その頃、私は20代。ライブの楽しさ、温かさ、音楽の素晴らしさ……を知りました。学校コンサートが増え、ライブ活動も定期的に行なって行く中、武井さんから、曲作りを提案され、詩を書くことが好きだった私は、是非、作ってみたい!と。イメージ、曲調……諸々を2人で話し合いながら、作った最初の曲がこの『冷たいKiss』でした。ノリ・パンチ・インパクトを重視して作りました」
作曲の武井さんは、吉幾三作品などの編曲も多く手掛け、オープニングの「燃えつきて」も彼の編曲によるものだ。吉永にライブの原点を教えてくれた恩人は、2025年5月、病気療養中のところ他界してしまった。「木蘭の花」で涙した“武井さん”とは、武井正信氏のことだった。
「25年ぶりぐらいに歌いますので、誰も聞いたことがないと思います」
そう紹介して披露された「冷たいKiss」。武井氏のご家族や仲間が見守るテーブルには、遺影が飾られていた。


武井氏から受けた恩に報いたい。報恩の歌声が六本木の夜空へ高く、熱く響き渡ると、ラストは吉永が師匠の女唄を継承する原点となった「サヨナラTokyo」、そしてデビュー30周年記念曲の「夜汽車」で締められた。「夜汽車」では客席へ降り、 “夜汽車ポーズ”をファンとひとつになって楽しんだ。

演歌・歌謡曲の魂をシティポップやブルースという新たな器に注ぎ込み、自らの音楽性を広げ続ける吉永加世子。恩師たちへの感謝を忘れず、常に「今」を全力で歌う彼女の瞳は、年末のライブ、そして来年2月に開催される日本橋公会堂という大きなステージを見据えていた。
【社会貢献への想い】
吉永はこの日、バイオリンの村尾の紹介で知った、子どもの治療に付き添う家族のための滞在施設「ドナルド・マクドナルド・ハウス」の理念に共感し、今年から、自身が手掛ける農園「かよ珍ファーム」で収穫した野菜をハウスに送ったり、ライブでの募金活動や、ライブ収益の一部を寄付するなどの活動を始めている。
「ドナルド・マクドナルド・ハウスは、お子さんが長期入院したり、遠くの病院に転院しなければならなくなったご家族のための施設です。私自身も、甥が幼い頃に1ヶ月ほど入院した経験があります。姉も仕事をしているので、私と姉が交互に病院に通っていましたが、こうした施設があれば本当に安心できますし、何かあればすぐに病院に駆けつけられます。家族をケアするという視点が素晴らしいと思い、この活動に賛同しました」
この日、会場で提供された吉永加世子オリジナルドリンクの代金の50%がライブレストランから寄付されたほか、会場では募金活動が行われた。
セットリスト
M1. 燃えつきて
M2. はがゆい唇
M3. 真っ赤な太陽
M4. 立佞武多
M5. 北新地
~シティポップ・コーナー~
M6. 真夜中のドア ~Stay with me~
M7. 恋のブギ・ウギ・トレイン
M8. 悲しみがとまらない
M9. パープルタウン 〜You Oughta Know By Now〜
M10. SOMEDAY
M11. フライディ・チャイナタウン
~後半~
M12. 合鍵
M13. 木蘭の涙
M14. 横浜(ハマ)ものがたり
M15. 身も心も
M16. 酔守唄
M17. 紅~べに~
~アンコール~
M18. 冷たいKiss
M19. サヨナラTokyo
M20. 夜汽車
▼吉永加世子サマーライブ2026ダイジェストはこちら(笑えるエピソード付き)
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2025年11月12日発売
吉永加世子「紅~べに~」

「紅~べに~」
作詞・作曲/吉幾三 編曲/竹内弘一
c/w「恋から愛へ」
作詞・作曲/吉幾三 編曲/若草恵
c/w「北新地」
作詞・作曲/吉幾三 編曲/野村豊
題字/吉幾三
徳間ジャパンコミュニケーションズ TKCA-91661 1,500(税込)











