早瀬ひとみ

早瀬ひとみがバースデーライブを開催。圧倒的な表現力と「百万本のバラ」の贈り物

長きにわたるキャリアが醸し出す、圧倒的なボーカル力。そして、客席とまるで家族のように言葉を交わすチャーミングな人柄――。演歌・歌謡曲からシャンソンまでを自在に操る実力派シンガー・早瀬ひとみが6月3日、東京・世田谷区下北沢の「カラオケLIVEステージ まほろば」にてバースデーライブを開催。歌い手とファンが互いの人生を寄り添い合うような、愛と音楽に溢れた一夜を満喫した。

早瀬ひとみ

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この日は台風6号の影響により、昼頃まで激しい雨が打ち付けていたが、午後には小康状態となり、夕方には青空も広がった。早瀬がメインステージに立つ19時半には、恋と音楽を楽しむのにこの上ない、しっとりとした大人の雰囲気が下北沢の街を包み込んでいた。

ライブは二部構成で行われ、第1部では柳ジュン、櫻井まり、三浦けいこ、鶴田J、高島レイラといった華やかなゲストたちがステージを彩り、主役の登場に向けて会場の熱気を温めた。

そして第2部。タイトなロングドレスに身を包んだ早瀬ひとみが登場すると、オープニングを飾ったのは「黄昏のビギン」。水原弘が歌い、のちにちあきなおみがカバーしたことで日本のスタンダードナンバーとなった名曲だ。舞踊を踊る男女の恋模様が描かれたこの曲を、早瀬は深みのある低音と、指先まで神経の行き届いた所作で、まるで一本の短編映画のようにドラマチックに演じながら歌った。

早瀬ひとみ

「皆様、こんばんは。嵐を呼ぶ女、早瀬ひとみでございます」

歌唱中の凄みのあるオーラから一転、MCではユーモアたっぷりの軽口で観客の心を掴む。そして、ステージと客席との距離の近さに「すっごく近いわ。恥ずかしいくらい」と照れて見せるチャーミングな一面もまた、ファンを惹きつけてやまない彼女の魅力だろう。

早瀬ひとみ

1980年に「北の岬」でデビューし、昨年12月には故郷である岩手県大船渡市で45周年記念コンサートを成功させた早瀬。MCでは、自身の“本当のルーツ”についてユーモアを交えて振り返った。

「祖父母に育てられたので、小さい頃から演歌・歌謡曲、懐メロばかり聴いていました。3歳の時、岩手県の公会堂で畠山みどりさんの『出世街道』を、ニッスイのソーセージをマイク代わりにして歌ったら、大人たちがピンクの豚の貯金箱に10円を入れてくれたんです。それが私の歌手デビューです(笑)」

さらに、「同期には山川豊さん、近藤真彦くん、沖田浩之くん、竹本孝之くん、ひかる一平くんと、やたら男性が多い年にデビューいたしました。あれから45年……計算はなさらないでください(笑)」と語り、会場の空気を和らげる。

早瀬ひとみ

早瀬ひとみ早瀬ひとみ

オリジナル曲とカバー曲を織り交ぜた「早瀬ひとみワールド」は全開だった。オリジナル曲から「京都一人」「ちょっと待って大阪」でこぶしの効いた艶やかな歌声を響かせたかと思えば、「ラストダンスは私に」「ろくでなし」といったシャンソンの名曲では、見事なリズム感と大人の色香で客席を魅了した。

「演歌・歌謡曲をずっと歌ってまいりましたが、年齢を重ねるごとに『何をどう歌えばいいんだろう』と悩む時期もありました。そんな時、シャンソンを歌ってみようと思い立ち、少しずつライブに取り入れるようになったんです」

その言葉通り、ジャンルを軽やかに越境し、楽曲の主人公へと完全に憑依する「語り部」としての彼女のボーカル力は、丸45年という途方もない時間をかけて磨き上げられた本物の輝きを放っていた。

早瀬ひとみ

早瀬ひとみ

ライブ中盤には、第1部のトリを務めた柳ジュンがバースデーケーキを持って登場するサプライズも。目を丸くして喜ぶ早瀬の姿に、会場中から祝福の拍手が送られた。

そしてライブは終盤へ。デビュー45周年を記念してリリースされた最新曲が披露される。まずはカップリング曲の「踊りあかそう」、続いて表題曲の「愚恋歌(ぐれんか)」だ。作詩・高畠じゅん子、作曲・徳久広司によるこの作品は、ついつい強がって生きてしまう女性の奥底にある脆さや、自分を責めてしまう不器用な“かわいらしさ”を見事に描いている。早瀬の情念を内に秘めた説得力のある歌声が、観客の胸の奥深くまで突き刺さった。

早瀬ひとみ

「声が出る間は、歌っててもいいですか?」

早瀬のこの真っ直ぐな問いかけに、大きな拍手が湧き起こる。本編のラストに選ばれたのは、加藤登紀子の日本語訳詞で知られる「百万本のバラ」だった。

「今日は、皆様と私自身のために、私から100万本のバラをプレゼントしてライブを終了したいと思います」

早瀬ひとみ

女優に恋をした貧しい画家が、家財を売り払って街中のバラを贈ったというジョージア(旧グルジア)の悲恋の歌。画家の想いは女優に届くことはなかったが、この日、早瀬が全身全霊で歌い上げた「百万本のバラ」は、間違いなく目の前にいるファン一人ひとりの心へ、鮮やかに届いていた。

早瀬ひとみ

アンコールには、「やっぱりこの曲ですよね」と、もう一度「愚恋歌」を披露。早瀬ひとみという類稀なるボーカリストの“これまで”と“これから”を祝福する、極上のバースデーナイトだった。

 


2025年1月1日発売
早瀬ひとみ「愚連歌」
早瀬ひとみ

「愚恋歌」
作詩/高畠じゅん子 作曲/徳久広司 編曲/矢田部正
c/w「踊りあかそう」
作詩/高畠じゅん子 作曲/徳久広司 編曲/矢田部正
日本コロムビア COCA-18236 ¥1,500(税込)

【Amazon】愚恋歌 – 早瀬ひとみ