西川ひとみが2年ぶりにホテル椿山荘東京でディナーショー。浪曲の初披露から長渕剛の「とんぼ」熱唱まで。歌うことの喜びを噛みしめる。
歌うことの喜び。DNAでもある浪曲に挑戦
西川ひとみが10月3日、東京・文京区のホテル椿山荘東京で「西川ひとみディナーショー2021」を開催。多才なゲストとともに楽しい時間を共有しながら、力強い歌声を聴かせた。
同ホテルでの西川のディナーショーは恒例行事として年1回行われていたが、昨年はコロナ禍で中止を余儀なくされていた。
「去年はできなかったです。でも、今年は開催することができました。だけど、ギリギリまでどうだろ、どうだろって心配していました」
開催直前の9月30日をもって、新型コロナウイルスの感染拡大を防止する緊急事態宣言が解除されて最初の日曜日。西川も観客もホッとした中での宴となったが、まだまだ感染防止のための制約も多く、アルコールの提供も禁止されるなどしたが、「ちょっとぐらい、いいじゃないですかね」と観客を笑わせつつ、「歌うことの喜びを、今日お越しの皆さんにいただきました」と感謝した。
そんな西川のショーは歌謡浪曲「王将一代小春しぐれ」の披露から始まった。西川は四天王と呼ばれた昭和の浪曲師・松平円十郎の一人娘として熊本県八代市で生まれ、3歳の頃には寺の境内で「岸壁の母」を歌った記憶があるほど、歌に関しては父の影響を受けていた。だが、幼くして父親が他界し、母娘で育ってきた。
浪曲を披露するのは初めてだという。歌謡浪曲「王将一代小春しぐれ」では、節と啖呵で演じながらうなった。
「今日は浪曲に初挑戦させていただきました。いかがでしたか? 父親が生きていたら喜んでくれたと思います」
熊本県出身だが、福島県出身のマネージャーの影響から東北弁が混ざってしまったという西川は、先日も岩手県出身の千昌夫から「西川くん、あんたずいぶん訛ってるんじゃないのって、いちばん言われたくない人に言われました」と笑わせると、千のヒット曲「星影のワルツ」、そして長山洋子の「じょんがら女節」を熱唱。本家の「じょんがら女節」は長山が津軽三味線を立ち弾きしながら歌うが、西川はスコップ三味線でかっこよく決めた。
ディナーショーは西川のオリジナル曲へと引き継がれ、「母恋たより」「父娘うた」、そして2019年の作品「海峡冬つばめ」を披露すると、楽団「岡宏&クリアトーンズ・オーケストラ」に交ざり、「浪花節だよ人生は」を歌い上げた。
ここからショーはゲストコーナーとなる。坂本みつおが「ふたりで生きる」を歌い、一塁あや乃が「夜明けのバス」など、畠山すえこが「ありがとう」など、三里ゆうじが「北前おとこ船」などそれぞれ3曲ずつ聴かせた。
岡千秋もステージへ。後半は「玄界灘に春が来る」から
後半は最新曲「玄界灘に春が来る」から明けた。作詞・円香乃、作曲・岡千秋。1994年にデビューした西川と、岡千秋とのタッグは同曲が初めてだった。修行期間を経て、“西村妃都美”という芸名でデビューした西川は、途中、母の介護のため歌手活動を休止。2005年に再デビューを果たし、2年後に現在の“西川ひとみ”と改名した。そして2017年、徳間ジャパンコミュニケーションズへ移籍し、「望郷おんな花」、「海峡女つばめ」とリリースし、徳間移籍第3弾として発表したのが、2020年の「玄界灘に春が来る」だった。
激しい女心をスケール感たっぷりに表現する、情熱的な王道演歌だが、同曲では岡もステージに上がり、岡ならではの独自の歌声も披露した。
西川は徳間ジャパン移籍以前にリリースした「恩返し」と、以前、歌って評判がよかったという、松山千春の「大空と大池の中で」を歌唱すると、「蒲田風情」「寄り添い花」を歌いながら客席をラウンドした。感染防止対策により、握手などはできないが、西川はこの一時を楽しんでいた。
ラストはメドレーで締められた。長渕剛の「とんぼ」~都はるみの「好きになった人」、そして「とんぼ」へ。「私は長渕剛さんが好きなんです。本当に大好きなんです。長渕さんの歌の中でも、この歌が大好きです。頑張って、頑張って、東京に憧れるという歌です。『とんぼ』。聴いてください」
演歌歌手がコブシを回しながら歌う「とんぼ」。マイクパフォーマンスもかっこよく熱唱すると、アンコールでは「玄界灘に春が来る」のカップリング曲「お祭り小町」で会場を明るく盛り上げ、西川の定番曲「祭り列島ひとり旅」でさらに熱気を高めた。
いつもなら大勢の観客がステージに上がり、法被を羽織った西川の歌声に合わせて踊るのだが、リバウンド防止の観点から観客は客席から応えた。出演者全員がステージに再登場する中、西川は観客に「またお会いしましょう」と呼びかけた。